世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ビクトリア州の日本語アドバイザー

オーストラリア
ビクトリア州教育省
室屋 春光

学校の展示日本語を勉強している子供たちの作ったものの写真
学校の展示
日本語を勉強している子供たちの作ったもの

ビクトリア州の日本語アドバイザーの仕事の一環として、州内の日本語を教えている小学校や中等学校(ビクトリア州ではsecondary college と呼ばれる学校で日本の中1に相当する7年生から高3に相当する12年生までの課程を教えるのが普通です)を訪問する機会がよくあります。時には州都メルボルンから車で何時間もかかるような地方の町の小学校を訪問するということもあり、学校の玄関を入っていくと受付のあたりに子供たちがひらがなを使ってかいたいろいろな作品が展示されているのがまず目に入ります。そんな時には「ああ、オーストラリアのこんな片田舎の子供たちが日本語を勉強しているんだ」という思いでうれしくなると同時に、自分の仕事に対して大いに励まされる気持ちにもなります。

オーストラリアでは小学校の低学年から外国語教育が導入されており、ビクトリアも例外ではありません。教えられている言語も、日本の外国語教育とは異なり多様です。2002年の州立学校の統計によると、ビクトリアの小学校で日本語を教えている学校の数(228校)は、インドネシア語(372校)、イタリア語(307校)についで第3番目となっていて、以下、ドイツ語(111校)、フランス語(100校)、中国語(38校)と続きます。また、中等学校でもインドネシア語(136校)、フランス語(113校)についで日本語は第3位(102校)で、以下、イタリア語(87校)、ドイツ語(74校)、中国語(29校)となっています。これらの小学校・中等学校の日本語教育を支援するのがビクトリア州の日本語アドバイザーの私の仕事で、その内容は多岐にわたります。

さて、実際の仕事の内容ですが、アドバイザーの仕事の大きな柱としては、セミナーや各地域でのネットワークミーティングなどでセッションを担当して先生がたの研修・研鑚に資するという活動があるのは言うまでもありません。特にビクトリア州は、他州に比べて各地域ごとの日本語教師によるネットワーキングが盛んで、ミーティングもよく催されています。私もアドバイザーとしてできるだけそのようなネットワークミーティングに参加して横のつながりを広めたり、研修セッションを実施したりしています。また、学校訪問も日本語教育の現場を観察して参考にしたり現場の先生がたとの密接な関係を維持したりするという意味でアドバイザーとしての業務に欠かせません。

このような実際に先生がたとお会いすることによって可能となる支援に加えて、ICT(日本ではITというようですが、オーストラリアではICT - Information and Communications Technologyということが多いようです)を利用した支援活動にも力を注いでいます。

着任から半年後には「日本語メモ」(http://snurl.com/yw9)というウエブサイトを立ち上げ、少しずつ内容を充実させて、いろいろな教材や日本語教育に関係のある情報を提供してきました。このウエブサイトを立ち上げることにした一番の目的は、オーストラリアのような広大な国という地理的な条件や、授業や校務に忙殺されるという教育の現場の状況を考え、インターネットを利用していつでも誰でもどこからでもアクセスできる支援を提供するという点にあります。このサイトでは、特に「ネットで年中行事」「Resources」「Links」などのページが好評で、それぞれ月に400件から500件のアクセスがあります。また、今年に入ってからは、このウエブサイトに「日本語チャット教室」というページを設置して、ウエブのチャット機能を利用した日本語運用力向上のための研修も行っています。

ビクトリア州の日本語教師をメンバーとする電子メールリスト「日本語ビクトリア」も日本語アドバイザーが管理人となって02年9月に開始して以来、順調にメンバー数が増えて04年5月の時点で約450名を数えるようになりました。このリストは私自身も最新の情報を迅速に提供することに活用していますが、メンバー間での情報交換やQ&Aなどのコミュニケーションに大きな役割を果たしています。

このほかにもアドバイザーにはいろいろな仕事があります。毎日電子メールや電話でオフィスに入ってくる問合せや依頼に応対するコンサルタント業務も、目立ちませんが大切な仕事で、即日対応を原則として対処するようにしています。また、JLTAV(ビクトリア日本語教師協会)、JICC(領事館付属の日本広報文化センター)、MCJLE(メルボルン日本語教育センター)、JSC(日本研究センター)などの関係諸機関と連絡を取り合って、スピーチコンテストや日本語プロモーションのためのイベントなどの行事を運営したりするのも大きな仕事の一つです。

以上のように、私は国際交流基金派遣の日本語アドバイザーとして多角的に仕事に取り組んでいますが、そのモットーは「日本語教育の現場へのよりよい支援」です。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ビクトリア州教育訓練省は、ビクトリア州の公立学校(初等・中等)における教育政策、カリキュラム作成、州共通高校修了試験(この試験は大学入学試験も兼ねている)、各教科に対する支援、教育人事、などについて計画実施する機関である。国際交流基金からは1995年から現在まで継続して専門家が派遣され、日本語アドバイザーとして日本語教育関係諸機関と協力して、教師研修、日本語教育に関する情報の提供、各地域における日本語教師ネットワークの形成・促進、学校訪問、教材作成、日本語教育に関するコンサルティングなどの活動を行っている。
ロ.派遣先機関名称 オーストラリア・ビクトリア州教育訓練省
Department of Education & Training, Victoria
ハ.所在地 Level 3, 33 St. Andrews Place, East Melbourne, VIC 3002, Australia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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