世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) オーストラリアNSW州教育省 日本語コンサルタントの仕事(2005)

オーストラリア
ニュー・サウス・ウエールズ州教育省
江原 有輝子

私がNSW州教育省に着任してから1年がたちました。

NSW州教育省の外国語部には、日本語以外に、中・韓・仏・独・伊・インドネシア・現代ギリシア語のコンサルタントがいます。コミュニティ言語担当者はアラビア語のネイティブスピーカーです。NSW州では多くの言語が教えられており、12年生(日本の高校3年生に相当)が受験するHSC (Higher School Certificate) という高校卒業資格試験(大学入学試験でもある)には、全部で30の外国語があります。

教育省の管理下には「土曜学校」もあり、通常の学校で履修できない外国語科目を教えています。親が日本人であったり、日本の学校に通ったことのある学生は、日本語履修の場合は、「Background speaker」のコースを履修しなければなりませんが、これは土曜学校にしかありません。授業内容は日本の国語に似ていますが、HSCを受験するために、NSW州のシラバスに基づいた勉強をしています。

名古屋シドニーの姉妹都市交流25周年と、愛知万博を記念して行われたヘリコプタービジットの写真
名古屋シドニーの姉妹都市交流25周年と、愛知万博を記念して行われたヘリコプタービジット
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Norhbridge Public Schoolの子供たちの歓迎を受けた

オーストラリアの日本語学習者の大半は初等中等教育の生徒たちです。オーストラリアは各州の独立性が強く、外国語教育のシラバスも州ごとに異なっています。そこで、各州の教育省が教員研修会を開催し、シラバスを教えるための教材を作っています。こうした仕事を、日本から派遣されたコンサルタントと、オーストラリア人のコンサルタントが協力して行なっています。

コンサルタントの主な仕事は、教員研修会の開催・教材の作成・ニュースレターの発行・種々の相談への回答などです。教育省では、しばしば新しいプロジェクトが企画され、特別に雇用された専門家がこれに従事します。現在日本語と中国語では、5年生から8年生の生徒のためのオンライン教材が作成されています。日本語コンサルタントはこのプロジェクトにも情報提供・例文作成、日本語のチェックなどの面で協力します。

外国語では、2003年半ばに「K-10」という新しいシラバスが作成されました。これは、それまで「K-6」という、幼稚園(Kindergarten)から小学校中学年(6年生)までと、「7-10」という小学校高学年から中学校まで(7年生から10年生)の二つのシラバスがあったものを統合し、シラバス間の溝をなくすために作られたものです。この新シラバスは今年度から現場で使用され始め、今年は特にこの新シラバスの評価法に焦点をあてた研修会が、州内の各地で開催されています。

NSW教育省には、「日本語探検センター」があります。1999年に、日本企業の寄付によって、高校の敷地の一角に日本家屋を模した建物が建てられ、そこで州内の小学校から高校までの生徒が一日、日本語だけで様々な活動をします。年々人気が上昇し、2005年度も週に4日学生を受け入れていますが、もう予約がいっぱいです。コンサルタントは、「日本語探検センター」の仕事を手伝うこともあります。

このように、さまざまな仕事をしてきましたが、その中で小さいながら特筆すべきことは、教師のメーリングリストの立ち上げでした。2005年度に入って日本語教師会設立の動きが出てきましたが、それ以前は、NSW州には日本語を教えている学校が700校もあるにも関わらず日本語教師会がなく、教師間のネットワークが脆弱でした。そこで、日本語コンサルタントは、2004年9月にEメールによる日本語教師のメーリングリストを作り、平均して週に数回、Eメールを送ってきました。まだコンサルタントや基金側からの情報提供が中心で、教師からの発信が少ないことが今後の課題ですが、日本語教育や日本文化関係の情報が随時送られて来るのが好評で、2005年5月現在150人の先生方が登録し、毎日増え続けています。先生方からの声で嬉しかったのは「メーリングリストで週に数回Eメールが送られて来ると、ネットワークに属しているという気持ちがします」という感謝のEメールが来たことでした。

毎週メールが送られて来ることにより、まだ会ったことがなくてもコンサルタントに親しみがわくようで、メールでの相談や学校訪問の依頼も次第に増えてきました。

小さいことでも自分が種をまいたものが育って行くのを見るのはうれしいものです。これからも心をこめて世話をして育てて行こうと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ニュー・サウス・ウエールズ州教育訓練省は、州内の初等・中等教育を管轄する州政府省庁である。外国語教育の支援を担当する言語ユニットは、省内のカリキュラムKー12部の中に属し、政策的な助言の提供やカリキュラム支援教材の開発、語学教師に対する研修の実施等を行っている。なお、州の高校修了試験および小中高校のシラバス等の作成は、Board of Studies という、別の組織が担当している。国際交流基金からの専門家は1991年から継続して派遣されており、アドバイザー業務としては、日本語教員研修会の開催、ニューズレターの作成、日本語教育教材の開発、学校訪問の実施等を行っている。
ロ.派遣先機関名称
New South Wales Department of Education and Training
ハ.所在地 3A Smalls Rd. Ryde NSW 2112 Australia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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