世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) シドニー日本文化センターの仕事

シドニー日本文化センター
佐々木香織

シドニー日本文化センター日本語セクションスタッフの写真
シドニー日本文化センター日本語セクション
スタッフ

 シドニー日本文化センターでは、オーストラリア全体の主に初等中等教育機関での日本語教育支援を進めている。オーストラリア全体といっても、各州の独立性が高く、学校制度やカリキュラムも州ごとに異なる上、各学校も多様で、生徒の背景(言葉・文化)も信じられないくらい様々である。それらの最大公約数的な支援とともに、各回のセミナーごとのきめ細かな支援も期待されている。筆者が関わる主な活動としては、第一に、教材の開発作成、第二に教師研修などの教師支援、第三に情報発信とネットワーク作りである。そして第四に今年から新たな取り組みとして一般社会人対象の講座開設が加わった。
 当センター開設以来十余年の歴史があり、現地職員も現地講師もベテランである。現地化という意味では、非常に進んでいるといえる。したがって、これらの業務の多くは派遣専門家も含めて職員一同の協同作業により行われる。赴任して8ヶ月、これらの活動の一助となるべく努力してはいるものの、主に現地講師2名の助言を得つつ、試行錯誤の日々である。特に学校教育制度自体も日本のそれと大きく違い、教育文化や学習スタイル、教師像にも日豪に違いがあることに気づかされ、着任当初はかなり戸惑うことも多かった。こうした一種のカルチャーショックを乗り越えて、派遣専門家として第三者的な視点からの助言や、支援ができるようになりたいと考えている。

1.教材開発

 当センターではこれまで、様々なレベルを対象に、これまで多くの優れた教材・教具を開発し、各学校に寄贈してきた。(http://activity-resources.jpf-sydney.org/ar/) 現在、2年後の完成を目指して、ニューサウスウェールズ州立美術館と共同で日本の美術を素材にした中等学校(中高生)向けの日本語教材を作成中である。
 また「おむすび」という季刊ニューズレターの「Sensei’s Page」(http://www.jpf.org.au/ls/index.html) は、教室ですぐ使える日本語指導のアイディアや、日本語についての知識を深められるコラムなどを現地講師と派遣専門家の3人で分担して執筆し、毎号掲載している。「すぐに使える」教材は、忙しい現地の日本語教師にとって、手軽で便利な補助教材となっている。これらはウェブサイトから自由にダウンロードできるようにもなっている。

2.教師研修

2005年1月集中研修の様子の写真
2005年1月集中研修の様子

 当センターの最大の教師研修は、年2回開催される全豪、ニュージーランドの日本語教師を対象にした集中研修である。各地から中等教育、初等教育機関に属する日本語教師が当センターに集まる。文字通り「一期一会」のことも多く毎回受講生が変わるため、どのようなレベルの参加者が来ても対応できるよう周到な準備が必要であるが、さらに、すばやく各参加者のレベルを察知して、臨機応変に内容の微調整を行うことも重要である。
 また、当センターの講師は、各州で開催される教師セミナーの応援に呼ばれることも多く、各州のシラバスやそこに集まる教師のニーズを踏まえた講座内容が求められる。その地域ごとに問題意識やニーズも微妙に異なる。これらについても当センターの現地講師や各州派遣のアドバイザーの意見を取り入れながら、各種の教材や資料を準備し、日本語力と日本語教授法の向上を目指したセッションを担当する。研修後、参加者から「とても楽しかった」、「難しかったけど、ためになった」など感想を聞くと、本当にうれしい。
 さらに、今年度からオンライン講座を開始することになった。対象は現在当地の学校で日本語を教えている教師で、系統だって日本語の勉強をしたことがない非日本語母語話者である。この講座ではごく初歩的、基本的な文法や文字、語彙の習得を目指す。(教員養成の制度も州ごとに異なり、特に小学校の日本語教師は外国語の教師としての資格があれば教員になれる州もあるため、日本語に関する知識がほとんどない人もいるため。)

3.情報発信・ネットワーク形成

 前述の「おむすび」を通じて当センターからの情報を発信するほか、各州の日本語教師のメーリングリストに参加して各州の日本語教育に関する新たな動きや行事などの情報収集したり、必要な情報を必要な州へ、あるいは全豪へ提供したりする。電話やメールによる個別の日本語に関する問い合わせにも随時応じている。
 当地では初中等機関での日本語教育が盛んであり、その制度や指導内容は、現地の教育を担当する各州教育省の発表するシラバスやガイドラインによってある程度決められている。したがって、全豪レベルでのネットワーク以上に、各州内のネットワーク形成がより重要な意味を持つ。国土が広く、実際に顔をあわせる機会を作るのは非常に難しいが、「オンライン」だでなく、研修などを通じて顔が見えるネットワーク作りも積極的に支援していきたい。

4.一般向け日本語講座

 これまで当センターで教材開発、教師支援を主な業務としてきたため、一般の日本語学習者への直接支援はほとんど行っていなかった。日本語講座開設については基金本部からも指示があったが、以前から一般社会人対象の講座や日本語能力試験対策講座などを求める声もあった。今年度は試験的に一般社会人向け講座を当センターで開催することになった。対象は中級以上の日本語学習者で、短い新聞記事などを読み、それについてのディスカッションを通じて日本語運用力向上を目指す。まだ企画段階であるが、新しい「市場」開拓につながれば、と期待している。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
シドニー日本文化センターは、国際交流基金機構改革に伴い、シドニー日本語センターと同文化センターの統合により2004年に発足した。オーストラリアにおける日本の文化交流の拠点である。当センター日本語セクションは1991年に開設された日本語センターの業務を引き継ぎ、全豪を視野に入れた日本語教育支援を行う。主な事業内容は、教師研修会の開催、他機関主催研修会への協力、日本語弁論大会など日本語教育関連行事への支援、教材開発および寄贈、日本語教授法などに関する相談業務、情報の提供と収集などである。また、季刊誌「おむすび」を通じて、当センターの企画の広報や、日本の文化情報・日本語教材などを提供している。
ロ.派遣先機関名称
Tha Japan Foundation, Sydney
ハ.所在地 Level 1, Chifley Plaza, 2 Chifley Square, Sydney, NSW Australia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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