世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) JATNET タスマニア日本語教師ネットワーク

オーストラリア
タスマニア州教育省
友岡純子

JATNETJapanese Teachers' Network of Tasmania

JATNETの旗の画像
JATNETの旗
JATNETのセミナーで「色」の授業について発表する教師の写真
JATNETのセミナーで「色」の授業について発表する教師

 JATNETのホームページのアドレスをクリックすると、白地に赤く、日の丸ならぬタスマニアの地図が染め抜かれた旗が現れる。タスマニアの形は特産のりんごの形をしている。日の丸とタスマニアを組み合わせたのはJATNETの会長を務めるTonyさんの発案である。この旗の下に、全タスマニアで約70校の日本語教師約75名が互いに協力し合うことを目的にして、教師会が結成されたのは、昨年末である。
 タスマニアはオーストラリアの中で一ばん小さな州で、学校数も教師数も少なくまとまりがいいと言われていたのに、教師会がなかった。正確に言えば、教師会は作られたが、名ばかりで、消滅してしまったと言うのである。規模が小さいから、日本から派遣されたアドバイザーが一人いてあれこれやれば、それで済んでしまうということなのであろう。しかし、タスマニアの日本語教育はタスマニアの先生たちが彼らの熱意と努力で担うべきであるし、またそれを担える教師がたくさんいる。筆者はアドバイザーとして、このネットワークの結成に向けて、音頭とりの役割を果たしたが、主役は会の核となる数名の教師であった。
 昨年末にネットワークの目玉であるホームページを開き、2005年、今年の4月15,16日にJATNETの活動第一歩として、日本語セミナーを開催した。このセミナーで、30名が会員登録をした。会員数はまだ少ないが、活動が軌道に乗れば、もっと多くの会員を集めることができると思われる。今年はセミナーのほかに二つのワークショップ、スピーチコンテスト、習字コンテストが予定されている。更には、お弁当コンテスト、まんがコンテストなどの企画も提案され、2006年からは忙しくなりそうである。
 日本にいる日本語教育関係者からは「それが日本語教育?」と言われそうである。タスマニアの小中学校の日本語教育はいわゆる「語学」ではない。「全人教育を目指す完全総合教育」とでも表現すべきカリキュラムの中で、日本語の授業は「語学」の枠内には収まらない。日本人の発想より、現地の発想、現地のやり方が求められている。その意味では、日本語教育の「現地化」をJATNETが担っていくはずである。

遠隔教育(Distance Education

コンピューターを使って遠くの生徒たちと授業をする教師の写真
コンピューターを使って遠くの生徒たちと授業をする教師

 北海道よりやや小さな島に、45万人余の人たちが住んでいるタスマニア州には、日本の「分校」のような小さな学校がたくさんある。山の中の小さな学校で日本語の教師がいないのに、なぜか、日本語を勉強したいと言う子供が5人ほどいる。こうした場合、日本では「あきらめろ」ということになるのであろうが、タスマニアでは「それでは遠隔教育で」ということになる。DET(Distance Education Tasmania)はこの遠隔教育を担う学校である。何人もの教師が小部屋に設置されたコンピューターの前で授業をしている。ビデオカンファレンスの設備を備え、先生は画面で、遠くの学校の生徒を呼び出して質問したり、ひらがなを書かせたりすることもできる。A校の3人と、B校の5人が一つの「教室」で話し合うこともできる。学期に一度は教師が学校を訪問して、直接生徒に会い授業をするということもする。筆者はこの学校訪問に同行するようにしているがこうした遠隔教育は大変興味深い。
 一度、この遠隔教育の設備を使って、日本の私立学校との間でタスマニアを紹介する授業を試みたことがある。筆者もかかわったのだが、結局日本の学校側の準備不足で、あまり成功したとは言えなかった。しかし、時差が最大で夏には2時間、冬には1時間という日本とタスマニアの地理的関係は、今後日本から直接日本語の授業をするという可能性や、日本の学校とのビデオ・カンファレンス交流も含めて、注目に値することである。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
タスマニア州教育省は、公立初等・中等教育、図書館・教育関係情報サービス、専門学校・職業訓練校、教育査定・証明等の教育業務を運営する州政府機関である。国際交流基金からの専門家は1998年から現在まで継続して派遣されている。アドバイザーは、日本語教師の語学レベルの維持へのサポート、教材・資材に関する助言、勉強会・セミナー・ワークショップ開催による学習機会の提供、Tasmanian Certificate of Educationテスト問題文作成、Newsletterを発行して教師のネットワーク作りなどを行っている。
ロ.派遣先機関名称 オーストラリア・タスマニア州教育省
Department of Education, Tasmania
ハ.所在地 Letitia House, Olinda Grove, Nt. Nelson, Tasmania
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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