世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 西オーストラリアに日本語教育

西オーストラリア教育省
村野 節子

日本語教育事情

西オーストラリア(以下「WA」と略す)の日本語教育は他の州と同じように約97%が初中等教育機関で行われています。昨年までは外国語教育はLOTELanguages Other Than English)と呼ばれていましたが、今年からはLanguagesと呼ばれるようになりました。WAでは3年から10年(小学校3年から中学3年)までが必修科目であり、ほとんどの生徒は日本語、イタリア語、フランス語、ドイツ語、インドネシア語、アボリジニ語、中国語のうち1言語の選択が義務付けられています。学校によっては小学校1年生から日本語を教えているところもあります。日本語はイタリア語、インドネシア語についで学習者が多い外国語です。230校余りの公私立の小中高校で約4万人の生徒が日本語を学んでいます。

WAは日本の7倍の面積を持つオーストラリア最大の州です。日本語教師のいない地方の生徒のためにSIDESchool of Isolated and Distance Education)と呼ばれる遠隔地教育センターの教師が独自の教材を開発し、電話とコンピュータを使って通信教育を行っています。このシステムで約430人の生徒が日本語を学んでいます。SIDEの教師は、1学期に1回は車で7、8時間かかる遠隔地の学校を訪問して田舎の生徒とゲームをしたり、浴衣を着たり、お好み焼きや焼きそばを作ったりしますので、日本語を学ぶ生徒は1学期に1日だけ日本的なものに触れることができます。

日本語アドバイザーの業務

ニュースレターの発行

各学期毎に日本語を教えている初中等学校にニュースレターを発送します。内容は教材紹介、セミナー、ワークショップ、イベントなどの案内、アクティビティ紹介、日本語関連のウエッブサイトの紹介などです。このニュースレターは直接会えない先生方が情報共有できる数少ない場でもあります。ですからニュースレターには、できるだけ多くの情報を載せるようにしています。このニュースレターは編集から発送まですべてアドバイザーがしています。果たしてどのくらいの先生がきちんと読んでくれるのかと思いながら240通余りのニュースレターを封筒に入れたりしますが、「毎回ニュースレターを楽しみにしています。」というメールを受け取ると次回も何か面白い、役立つものを書かなければという気になります。時間のあるときに日本語関連のウェブサイトに目を通すようにしていますが、なかなかゆっくり座っていることができないのが現状です。

メーリング・グループの立ち上げ

年4回のニュースレター発行だけでは、重要な情報が載せられないことが多く、また一方通行の情報提供になってしまうことを感じ、今年の5月から日本語教師のメーリング・グループを始めました。まだまだ、助走段階なので、参加者も少なく、情報が行き交うまでは行っていません。教師間のネットワークの和を広げていくために最初はアドバイザーとして意識的に情報を流して行こうと思っています。

学校訪問

先生方からの要請、もしくはアドバイザーから連絡して学校訪問をします。
初等中等校を問わず学校訪問をしますが、今年は高校を中心に生徒の会話のレベルを上げることを目的とした訪問を重点的にしています。

セミナー

10年生のクラスで授業の写真
10年生のクラスで授業

毎年5月に国際交流基金シドニー日本文化センターとの共催で教師自身の日本語のブラッシュアップを目的として、兵庫文化交流センターでセミナーを開きます。昨年同様に、今年も多くの先生に参加してもらえるよう同じ内容のものを2日間開きました。WAではこのセミナーが唯一の大規模なものです。教師間の日本語能力にかなり差があるので、1日のセミナーと言えども、コースデザインはかなり難しいです。

日本語教育促進のためのイベント企画運営

かなコンペティション入賞作品の写真
かなコンペティション入賞作品

毎年1回9月にひらがな・カタカナコンテストを開きます。アドバイザーが中心になり有志の先生方と委員会を作り、カルタ、しりとりブロック、絵カードなどの部門ごとにコンテストを行っています。この催しは生徒に文字に興味を持たせるよい機会になっています。また、このイベントは、日本語だけでなく、共同作業の大切さや絵を描くことといった総合的な能力育成に役立っているのではないかと思います。

外国語映画祭の企画運営

毎年8月に教育省が行うNational Language Weekに合わせて主要言語(今年はイタリア語、日本語、フランス語、ドイツ語、中国語)の映画を上映します。今年は日本語アドバイザーが企画運営をすべて行っています。この外国語上映はNational Language Week で大きな位置を占めています。

質問、問い合わせの対応

JAPANと名のつくことに関しては、すべてアドバイザーに電話、メールが回されます。最近は交換留学先を探したいという先生からの問い合わせが多くなっています。先生方が自主的に、積極的に動いていることを感じます。

その他

領事館からの要請でスピーチコンテストの審査員、JETプログラムの選定委員なども務めます。また、各種研修の書類審査も行います。

今後の課題

WAでは、外国語必修である3年生から9年生までの日本語のシラバスがなく、何をどう教えるかは各教師に任されています。従って、生徒の日本語能力も学校、教師によって大きく違っています。学校にすべての外国語が設置されているわけではないので、日本語を選択せざるを得ない生徒が多いことも事実です。強制的な語学選択なので、基本的な日本語も身につかないで終わる生徒も多々います。外国語が他の主要科目より低く見られがちであることも外国語学習を難しくしている一因かもしれません。

WAは都市が集中している東部の他州から孤立しているために多くの情報が入ってきにくく、日本語や日本語教育に関して刺激が少ないと言えます。ですから自主的に何かを始めようという動きがなかなか出てきません。教師間の意識を活性化させる必要性を感じています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
専門家の所属するカリキュラム・スタンダード部は州内の公立初等中等教育機関のカリキュラムに関わる政策を実施する部署である。現在西オーストラリア州ではアボリジニ語、インドネシア語、中国語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、日本語、スペイン語が選択対象である。教育省ではどの学校でどの言語が選択できるかを把握してホームページ上で公開している。国際交流基金からの専門家は1998年から継続して派遣されている。
ロ.派遣先機関名称 西オーストラリア教育省
Department of Education and Training of Western Australia
ハ.所在地 151 Royal Street, East Perth, WA 6004 Australia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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