世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ナマの日本を届けたい!

国際交流基金シドニー日本文化センター
岸田理恵 信岡麻理 森文枝

 現在、オーストラリアとニュージーランドには合計約30万人の日本語学習者がいますが、その95パーセントは初中等教育課程(日本の小・中・高等学校にあたる)の子どもたちです。シドニー日本文化センター(以下センター)では当地の日本語学習を支援するため様々な業務を行っていますが、中でも最大の柱となっているのが初中等教育機関の日本語教師と子どもたちへの支援です。

 まず日本語教師たちへの支援ですが、その中心となっているのが全豪各地で開催される日本語教師研修会への出講です。現在、オーストラリアでは初中等教育におけるアジア4言語(日本語、中国語、韓国語、インドネシア語)の学習を奨励する政策が推進されており、ここ数年、各州から日本語教師研修の依頼が数多く寄せられています。2010年度は29団体による研修会への出講依頼がありました。全豪各州からの依頼を受け、センターの講師たちは主催者と連絡を取り合いながら現地の特色やニーズに合った研修内容を考えます。参加者(現地の日本語教師)の日本語力向上を目的としたもの、教室における指導の方法に重点を置いたもの、その両方を組み合わせたものなど州や主催機関によって研修目的は様々ですし、参加者たちの希望も一様ではありません。しかし結果として参加者全員にとって有益なものとなるよう、準備段階でいかに充実した内容を盛り込めるかが専門家の腕の見せ所となります。以下はセンターの講師がこれまでに行った研修内容の例です。

  • Art Speaks Japaneseteaching language through art (美術を通して教える日本語)
  • J-moviesusing film in Japanese classes (映画を使った日本語授業)
  • Video making in Japanese classes (日本語教室におけるビデオ制作)
  • Using web resources in Japanese classes (日本語教室におけるインターネット教材の利用)
  • Using IWB in Japanese classes (日本語教室における電子黒板の利用)
  • Recent trends and Japanese youth culture (日本のトレンド・若者文化紹介)
  • Learning language through Anime & Manga (アニメとまんがを使った言語学習)
  • Japanese food culture (日本の食文化)

ニューサウスウェールズ州教育省日本語教師カンファレンスの写真
ニューサウスウェールズ州教育省
日本語教師カンファレンス
「日本の食文化」

 次に日本語を学ぶ子どもたちへの支援についてですが、Art Speaks Japanese Comes Alive!」「Video まつり」(2009年掲載)など学習者対象のコンテストの他に、初中等教育の子どもたちを対象とした「センタービジット」という企画を実施しています。これは子どもたちが楽しく日本語に触れることのできる機会の提供を目的として、日本映画の上映会から始まったものです。学校やクラス単位でセンター訪問を申し込むことができ、メニューの中から希望の日本映画を選んで観ることができます。2009年からは日本語と日本文化への理解を深めるための教室活動も選択肢に加わりました。日本映画のワンシーンを使ったロールプレイ、食品サンプルを利用した食事注文のロールプレイ、浴衣の着付けや盆踊りなど豊富なプログラムを取り揃えています。最近はオーストラリアでも日本のアニメやマンガの人気が高まっており、新たに「日本アニメ・マンガ博士になろう」という活動が設けられました。日本のマンガやアニメの歴史や世界の人気ランキングが学べるこのプログラムは子どもたちのみならず引率の先生方からも好評を博しています。
(詳しくは http://www.jpf.org.au/centrevisit/index.html をご覧下さい)

センタービジットの写真
センタービジット
「日本のアニメとマンガ」

 この他にも、シドニー日本文化センターでは年間を通じてオンラインで学べる教師用日本語コース、一般成人向け日本語講座、ウェブニューズレター「おむすび」の配信、年2回の日本語教師インテンシブセミナー、毎年恒例の弁論大会、オリジナル教材の作成など、オーストラリアとニュージーランドにおける日本語普及活動と学習支援を多面的に行っています。詳しくはこちらをご覧ください。今後も現地の関係者と協力しながらオーストラリア、ニュージーランドの現状に即した日本語教育支援を行っていきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Tha Japan Foundation, Sydney
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
シドニー日本文化センターの日本語教育部門は、全豪及び一部ニュージーランドを対象として、初中等教育を中心とした教師・学習者支援事業を行っている。主な事業は教師研修会の開催、他機関主催研修会への協力、教材開発、日本語講座及び教師用オンライン講座の開講、日本語弁論大会などの学習奨励事業、コンサルティング、情報の提供と収集などである。また、毎月発行のE-magazine「おむすび」やホームページを通じ、日本語及び日本文化の情報・教材の提供を行っている。
所在地 Shop 23 Level 1, Chifley Plaza, 2 Chifley Square, Sydney NSW 2000, Australia
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:2名
国際交流基金からの派遣開始年 1991年

ページトップへ戻る