世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ニュージーランドの日本語アドバイザーの仕事(オークランド/2003)

ニュージーランド教育省<オークランド>
江頭由美

ニュージーランドは日本とほぼ同じ経度に広がる南半球の国です。人口はつい最近400万人の大台にのりました。私はニュージーランド最大の都市(人口約120万)のオークランドに国際交流基金の派遣専門家として2002年12月末から派遣されています。首都ウェリントンにも同じ派遣専門家として江原由輝子専門家が仕事をしています。

私たち派遣専門家を受け入れている団体はACENZ (Association of Colleges of Education ウエッブサイト:http://www.acenz.ac.nz/)という教育大学の連合組織で、この団体は本部をウェリントンにもち、教育大学の連合組織としての仕事に加え、外国との教育関係交換プログラムの管轄、教育省とに契約にもとづいて外国語教育の支援も行っています。現在、ドイツ、スペイン、中国、日本からそれぞれの言語の専門家を受け入れるとともに、ニュージーランド人のフランス語教育専門家もここに所属しています。これらの専門家はナショナル・アドバイザーと呼ばれ、ニュージーランドの各地域での初等中等教育での外国語教育を支援する、各教育大学に所属するリージョナル・ファシリテーターたちと協力しながら仕事をしています。(昨年まではその人たちも同じACENZ所属でしたが、今年度から制度が変わりました)。

オークランドLangSemで講義をする江頭専門家の写真
オークランドLangSemで講義をする江頭専門家

私の担当地域はニュージーランドの北島のタウプ湖以北です。オークランド地区が大変人口の集中している場所なので、日本語教育実施中の学校数から担当地区を分けた結果、在オークランドの私の担当範囲は北島の北半分、江原専門家は、北島の南半分と南島全体をカバーするということになりました。

ニュージーランドのアドバイザーの仕事は多岐にわたります。仕事を大きく3つに分ければ次のようになります。

  1. 1.学校訪問、地域の教員ミーティングへの参加、教員研修会など日本語や日本文化にかかわる行事の運営や協力(他にスピーチコンテスト、オークランド総領事館や地域の日本関係諸団体主催の催しなど)
  2. 2.日本語教育や外国語教育にかかわる問題点の認識とその解決へのとりくみ
    (個別的な問題であることもあれば、江原専門家の取り上げた国家試験問題のような構造的、全体的な問題である場合もあります)
  3. 3.情報共有に向けた環境作り(教材開発や教師会ウエッブサイトへの支援、教員・アドバイザー・関係諸団体のネットワーク作り)

1、2についてはウェリントンの江原専門家のレポートをご覧になってください。私は3を中心にお話したいと思います。

ニュージーランドは先住民のマオリ、入植した白人、さまざまな地域から受け入れてきた移民からなる多文化の国でもあります。日本語を勉強している学生もさまざまですが、私の住むオークランドでは最近,特に中国系、韓国系をはじめとするアジア系の移民が大変増えています。また、南オークランドはマオリや太平洋諸島からの人々が多く集まって住んでいます。ですから、「オークランド」と一口に言っても、多様性を持つ地域で、その上、それぞれの場所、学校で、それぞれの事情があります。さらに、オークランドを出ると、またそれぞれの地域の特徴があります。

昨年末、全国日本語教師会がウエッブサイトを立ち上げました。http://www.japanese.ac.nz/ ジャニス・メイドメント会長(ホーウイック高校教諭)をはじめとする情熱に燃えた日本語の先生達を、前任の藤光専門家(現フィリピン派遣専門家)、ウェリントンの江原専門家が側面から支えて実現しました。

このウエッブサイトには、学生や教員へのさまざまなお知らせ、学生の作品、ニュージーランド国家試験のための教師作成の模擬試験問題、英語のコンピュ―タ上での日本語読み書きの仕方(これは海外ではとても重要なことです)などの情報が置かれています。また、教師だけがパスワードを使ってアクセスするセクションもあります。このウエッブサイトがスタートしたことで、ニュージーランドのどこにいようと、皆が、このような有益な情報を共有できるようになりました。

しかしながら、ウエッブサイト維持、発展には同じぐらいの情熱やエネルギーが必要です。私もアドバイザーとして、日本語教育に役立つ情報を紹介したり、ウェッブにのせる日本語原稿の校正をしたり、現地の先生方によびかけていっしょに教材をつくったり、という仕事をしています。

この新しいウエッブサイトの存在をまだ知らない人、アクセスしていない人、アクセスの仕方を知らない人もたくさんいます。学校訪問の折などに、このようなサイトの存在を伝え、いろいろな情報があることを見せたり、教室活動への応用を提案したり、そこの学校の先生や学生さんたちに参加を呼びかけたりしています。

ある田舎町を訪れたとき、そこの学校で、しかも通信教育というきびしい学習環境の中で(ニュージーランドでは、ある教科が、クラスを運営するために十分な数の学生が集まらない場合、その教科を勉強したい学生は通信教育で勉強する)日本語を大変意欲的に学習中の優秀な学生の話を聞きました。その先生にお願いし、その学生を励まして日本語のフォト・エッセイを書いてもらい、すでにウェッブ上にあるウェリントンやオークランドの学生達の作品に加えて掲載することになりました。
彼はマオリの学生で将来は法律を勉強したいという夢を持っています。彼は日本の歌手やテニスの選手のこともよく知っていて楽しそうに話をしてくれました。田舎の学生、それも通信教育でがんばっている学生の作品は同じような環境にある学生や先生の励みになるに相違ありません。アドバイザーとして大きな喜びを感じたできごとでした。

また、現在ニュージーランドでは、この国のカリキュラムにぴったり合った日本語の教科書がありません。現在11年生向けの一冊の教科書(竹田和江カイパラ高校教諭)が教師会からの出版に向けて校正の最終段階にあり、私はアドバイザーとして、その著者や教師会と協力してその校正、出版、配布などにともなう仕事の手伝いをしています。さらに、現在、国際交流基金のフェローシップで日本の国際交流基金に派遣されているジェニー・ショートシニア・カレッジ・オブ・ニュージーランド教諭を中心に、ひとつの教材開発プロジェクトもすすめられています。渡日前からここでできる作業をおこない国際交流基金の関係者と連絡をとりながら最善の教材ができるように努めてきました。現在もそのプロセスは続いています。この教材は、まず国際交流基金でつくられた『教科書を作ろう』という教材を翻訳し、それにさらにプラスアルファ以上のものを付け加えて、ニュージーランドだけでなく、英語を媒介として日本語を学ぶ学習者のいる地域に、ニュージーランドから貢献する教科書にしたいという夢も込められています。

例をウエッブサイトや教材開発への協力にとって、情報共有に向けての側面を説明しました。アドバイザーの仕事の1番目にあげた学校訪問などで見えてくることを皆に伝えたり、それをウェッブへの掲載や教材出版につなげたりします。

最初にあげたアドバイザーの仕事の3つの分野は、1.個々の活動、2.問題認識と解決に向けたとりくみ、3.ネットワーク作りとも言い換えられ、それぞれ密接に関連し、相補う関係にあると思います。

「オークランド言語セミナー」後のパーティにての写真
「オークランド言語セミナー」後のパーティにて

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 ニュージーランド教育省教員養成校協議会(ACENZ)はニュージーランド教育省の委託を受け初等中等教育の外国語教育支援サービスを提供している。スペイン、ドイツ、中国、日本の四カ国からの専門家と現地のフランス語専門家がナショナル・アドバイザーとして所属、学校訪問や各言語教員の研修会を実施している。日本語はウェリントン本部と北部事務所のあるオークランドにそれぞれ国際交流基金からの派遣専門家が一名ずつ赴任中。ACENZとは組織を別にするが(2003年から)、各教育大学にはそれぞれの地域での初等中等教育レベルの外国語教育を支援する専門家(ファシリテーター)がおり、連携して仕事をする場合もある。
ロ.派遣先機関名称 ニュージーランド教育省教員養成校協議会
Association of Colleges of Education in New Zealand(ACENZ)
ハ.所在地 ACENZ Central :
PO BOX 10-298, Level 15 Equinox House, 111 The Terrace, Wellington, New Zealand
ACENZ North :
C/-ACE Private Bag 92-601 Auckland, New Zealand
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:2名

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