世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ニュージーランドの日本語アドバイザーの仕事(ウェリントン/2004)

ニュージーランド教育省(ウェリントン)
大久保めぐみ

ニュージーランドには国際交流基金から日本語アドバイザーがオークランドとウェリントンに一人ずつ派遣されています。現在日本語教育を行っている小・中・高校はニュージーランド全体で600校ほどで、日本語学習生徒数は約44,000人です。ウェリントンのアドバイザーはその半数の約300校、地域的には北島のタウポ湖以南と全南島を担当しています。ニュージーランドでは各地域に日本語教師会があり、地域ごとの結束は強く、情報や教育方法、教材交換などで支援しあっています。

日本語アドバイザーの業務は担当地域同様広範囲ですが、主要なものとして1.現地の日本語教師の日本語能力の維持と向上、2.学校訪問、3.日本語教育関係の情報提供と問い合わせへの返答があげられます。

一泊研修セミナーで教材研究する日本語教師の写真
一泊研修セミナーで教材研究する日本語教師

南島リーストン地区にあるエリスミア・カレッジの10年生の写真
南島リーストン地区にある エリスミア・カレッジの10年生

1.については各地でのセミナーや勉強会の企画と開催があります。学期期間中はクラスでの指導やその他の学校行事で忙殺されてしまう教師に、自分の日本語運用能力を向上させたり新しい教え方の紹介をする機会を提供するのはアドバイザーの重要な業務です。熱心な教師は放課後に地域の勉強会や泊りがけの研修会に参加しています。これは参加者のネットワーク形成に最適の場となります。
2.については教師の実際の教育現場を見学し、ときには生徒と一緒にクラス活動に参加するもので、アドバイザーにとっては学び得るものが一番大きいです。学校訪問は日本語教師を支援するだけでなく、その学校全体に日本語教育の価値を理解・認識してもらうという意味もあります。特に地方の学校を訪問し、熱心なしかも明るい雰囲気で教育が行われているのを見出すのはうれしいことです。

3. ウェリントンのオフィスにいる時間のほとんどは各種の連絡で過ごします。教師向けのニュージーランド内外でのセミナー、高校生向けの日本での研修会開催、教材に関する問い合わせへの回答、学校訪問の日程調整のやりとりなどです。自分の担当するセミナーの準備や国際交流基金本部への現地業務活動報告もあります。

2004年度がはじまった2月からウェリントンで「ノンネイティブの日本語教師のための会話クラス」を月一回ずつ開催しています。クラスで使う日本語以外に日本語で会話をする機会がほとんどない、という声にこたえたもので、アクセント・イントネーション指導とテーマをきめて会話練習をしています。他の地域でも同様の会話クラスを開催していく予定です。

毎年12月に日本語能力試験が全世界で同時施行されますが、2003年のニュージーランドの受験者数は472人でした。国際的に通用するこの資格がまだ十分に普及・理解されていないのが実情で、アドバイザーは特に高校2,3年生に4級・3級の受験を各学校の教師をとおして奨励しています。時期的にも内容的にも高校卒業試験と一緒に準備でき、若い有資格者の増加がニュージーランドの日本語教育向上につながると考えるからです。

ある学校の生徒からEメールで質問が寄せられました。日本語のクラスで北海道について2分間の紹介スピーチをすることになったが、自分の知識では2分間もたせることができない、何か参考資料をおしえてください、という内容でした。訪問したその学校の日本語教師が「アドバイザーに聞いてごらん」とメールアドレスをその生徒に渡したのです。教師と生徒の両方からの信頼が伝わり、報われた思いでした。

ほとんどの国民が英語を母語とし、しかも地理的に他の国から遠く離れているニュージーランドでは、日本語教育だけでなく外国語教育の価値が十分に認識されにくいという大きな問題があります。アドバイザーは今後も各地の日本語教師との連携を深め、日本語教育の促進と内容の向上に努力していきたいと考えます。

ニュージーランドの日本語教育についてのさらに詳しい情報は、以下のウェブサイトをご参考ください。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 ニュージーランド教育省教員養成校協議会(ACENZ)はニュージーランド教育省の委託を受け初等中等教育の外国語教育支援サービスを提供している。スペイン、ドイツ、中国、日本の四カ国からの専門家と現地のフランス語専門家がナショナル・アドバイザーとして所属、学校訪問や各言語教員の研修会を実施している。日本語はウェリントン本部と北部事務所のあるオークランドにそれぞれ国際交流基金からの派遣専門家が一名ずつ赴任中。ACENZとは組織を別にするが、各教育大学にはそれぞれの地域での初等中等教育レベルの外国語教育を支援する専門家(ファシリテーター)がおり、連携して仕事をする場合もある。
ロ.派遣先機関名称 ニュージーランド教育省教員養成校協議会
Association of Colleges of Education in New Zealand(ACENZ)
ハ.所在地 ACENZ Central :
PO BOX 10-298, Level 15 Equinox House, 111 The Terrace, Wellington, New Zealand
ACENZ North :
C/-ACE Private Bag 92-601 Auckland, New Zealand
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:2名

ページトップへ戻る