世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) オークランドアドバイザーの仕事

ニュージーランド教育省<オークランド>
江頭由美

ニュージーランド北部地域の7-8年生のクラスの写真
ニュージーランド北部地域の7-8年生のクラス

ニュージーランドは日本との関係の深い国です。ジェットプログラム(毎年150名ほどの若者が参加)や日本との姉妹都市交流も活発です。英語学習のための一時滞在者や留学生の日本人も多く見かけます。日本人永住者、長期滞在者ワーキングホリデーできている若者たち、ショートステイをしている定年退職後のカップルにもよく出会います。

人口約400万人ニュージーランドで2003年度5,127人の小学生(1年生から6年生)、 27,743人の中学生(7年生から8年生)、21,449人の高校生 (9年生から13年生)が日本語を勉強中です。ただ残念なことに外国語学習はどの段階でも義務ではなく、各学年で何時間かけて何をするというような制約もありません。外国語教育(日本語を含む)は必修科目でないため、柔軟性がある一方で、カリキュラムの中での立場が弱いのも事実です。

政府はここ数年のうちに7-8年生を持つ学校では、必ず外国語が開講されるべく(しかしながら学生にとっては義務ではありません)計画中で、外国語の知識のない先生向きの教材セットをフランス語 ドイツ語 中国語スペイン語 日本語で開発し、重点校を選び財政支援をしたり、各地区に外国語教育の専門家をおいて個別的アドバイスやネットワークの形成、研修会の実施などの支援をしています。日本語アドバイザーとしていっしょに仕事をする機会も多いです。

2004年の3月にはウエリントンの大久保専門家とともに、ニュージーランドの2箇所で、シドニーの国際交流基金からの講師を招いて日本語教員対象の研修会を開催、その際各地区から集まった初等中等教育機関の先生方とともに上述の各地区の外国語教育の専門家にも参加を呼びかけた結果ほとんどが参加してくれました。彼女らの中には日本語初心者の人たちもいましたが、各地区の外国語教育中心人物を日本語の研修会に巻き込むことで、日本語や日本語教育の問題点の共有化を進めることができました。

私は2002年の12月からオークランドに赴任し受け入れ機関のACENZ(Association of Colleges of Education in New Zealand), 担当地域の先生方や外国語関係者、大久保めぐみ専門家、日本大使館、オークランド総領事館、日本関係諸団体などと協力しながら仕事をすすめています。私の担当地域は北島のタウポ湖を境にした上半分です。(担当する学校数を半分した結果の配分です)

私の赴任地オークランドは気候温暖、降水量が多く、緑が濃く豊かでニュージーランド全体の約三分の一が住むこの国最大の都市です。朝晩の交通渋滞には悩まされますが、噴火活動の名残でできた小高い丘が点在し、気分転換の散歩に最適です。大都市であるにしても、そんな丘ではオークランドのスカイタワーといくつかの高層建築とともに牛や羊の草を食む姿が見られ、オークランドならではの愛すべき光景です。オークランドはさまざまな顔をもつ都市です。ニュージーランドに昔から住むマオリ、入植した白人、太平洋諸島からの人々、移民、難民などのバックグラウンドを持つ人々が一緒に住むまちです。同じオークランドでも訪問する地域や学校によってその印象は大きく異なります。私は、オークランド外の、担当地域の各地の学校訪問や研修会の開催もおこなっています。

オークランド南部の高校12-13年生のクラスと先生の写真
オークランド南部の高校
12-13年生のクラスと先生

ニュージーランド全国日本語教師会は2002年7月から2004年7月上旬まで執行部をオークランドに置き、その間、全国教師会長のJanis Maidment教諭を中心に、ウエッブサイトhttp://www.japanese.ac.nzの立ち上げとその運営などに多くの力を注いできました。このウエッブサイト立ち上げには、前任者の藤光由子専門家が大きな原動力となり、私もそれを引き継ぎそのサポート(情報提供、教材提供、日本語チェック、このサイトの存在の紹介、参加のよびかけなど)をしてきました。ウエッブサイトの開設でカリキュラムにあった教科書が少なく、また詳しい教員用の手引きなどがなく、また政府からのサポートが限られている状況の中、ニュージーランドの日本語教員の間の情報交換やリソースの共有がかなりすすみました。

ウエッブサイトは立ち上げ後の維持にも大きなエネルギーを要します。次の執行部は南島のダニーデンの予定ですが、さらなるウエッブサイトを通しての教材や情報の共有をめざし、ひきつづきできることをしていきたいと考えています。

この国でアドバイザーの仕事をしていて、私のかかわった教材がウエッブサイトからいろいろな学校にダウンロードされ、「内容がおもしろかったので学生がとても楽しみながら勉強できた」という声を聞いたり、研修会の参加を重ねて力をつけていく先生の姿を見たり、学校訪問で授業を担当後、「私の学生がこんなに日本語が話せるなんて思ってもみなかったけれども、実際にあなたと話しているのを見てほんとうにうれしかった」という感想を聞いたり、こつこつとすばらしい実践をされている先生方の教材の皆との共有化などの計画をすすめたりする時、この仕事をしていてよかった、と心から思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ニュージーランド教育省教員養成校協議会(ACENZ)はニュージーランド教育省の委託を受け初等中等教育の外国語教育支援サービスを提供している。スペイン、ドイツ、中国、日本の四カ国からの専門家と現地のフランス語専門家がナショナル・アドバイザーとして所属、学校訪問や各言語教員の研修会を実施している。日本語はウェリントン本部と北部事務所のあるオークランドにそれぞれ国際交流基金からの派遣専門家が一名ずつ赴任中。ACENZとは組織を別にするが(2003年から)、各教育大学にはそれぞれの地域での初等中等教育レベルの外国語教育を支援する専門家(ファシリテーター)がおり、連携して仕事をする場合もある。
ロ.派遣先機関名称 ニュージーランド教育省教員養成校協議会
Association of Colleges of Education in New Zealand(ACENZ)
ハ.所在地 ACENZ Central :
PO BOX 10-298, Level 15 Equinox House, 111 The Terrace, Wellington, New Zealand
ACENZ North :
C/-ACE Private Bag 92-601 Auckland, New Zealand
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:2名

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