世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ニュージーランドの日本語アドバイザー(2007)

ニュージーランド教育省
ILANZ(アイランズ)ニュージーランド・アオテアロア外国語教育)
茅本百合子

 ニュージーランドには、現在1名の日本語教育専門家が、日本語ナショナルアドバイザーとして国際交流基金より派遣されています。2005年末まで2名の日本語アドバイザーがいましたが、2006年、2007年と一人でアドバイザー業務を行っています。

 アドバイザーの受入機関はニュージーランド教育省から業務を受諾したInternational Languages Aotearoa New Zealand (ILANZ)という機関で、「アイランズ」と呼ばれています。教育省と連絡を密に取るため、首都のウェリントンにあります。ここには他言語のアドバイザー(フランス語・スペイン語・ドイツ語・中国語)も所属しています。私たちアドバイザーは、学校教育の中での外国語教育と外国語教師の支援に努めています。

 日本語アドバイザーの業務は、主なものとして以下のものがあげられます。
1. 全国の小・中・高等学校訪問
2. 研修会の企画・開催
3. ニュージーランド全国語学教師会等主催の研修会への参加
4. 他言語のアドバイザーや、教育省関係者との会議
5. 日本大使館や総領事館、日本関係諸団体との協力
6. 日本語・日本関係の情報提供と問い合わせへの返答
7. 日本語能力試験の促進

 学校訪問時に、アドバイザーは教師の実際の教育現場を見学し、生徒と一緒にクラス活動に参加します。ニュージーランドでは400校以上の中学、高校で日本語を教えています。フランス語の次に多く教えられている外国語です。任期中にすべての学校を訪問できないとしても、できるだけ多くの先生たちの現場に行って、支援を続けたいと思っています。学校訪問は日本語教師を支援するだけでなく、その学校全体に日本語教育の価値を理解・認識してもらうという意味もあります。日本語教師はたいてい学校に一人しかいません。中には授業数が少ないので、パートタイムで教えている先生もいらっしゃいます。名刺を用意しておき、校長や教頭先生たちとお話しをするときに配るだけでなく、他の主要な先生がたにも渡し、日本語教育をアピールします。

中学生がはじめて書いた習字の写真
中学生がはじめて書いた習字

 また、アドバイザーは、弁論大会や、ロールプレイ大会の審査員にもなります。このような大会は地元の先生たちが集まって開催するものです。自分の学校の生徒が出場していると先生は審査員になれませんので、アドバイザーに審査員を要請するのですが、アドバイザーにうちの生徒たちを見せたい、という思いも伝わってきます。書道クラスも人気の一つです。慣れない筆さばきですが、子供たちは文字の魅力に取り付かれます。

 ニュージーランドでは各地域に日本語教師会があり、年に1,2回、会合をしています。また、各地域の国立大学所属のファシリテーターが勉強会を主催するので、アドバイザーはそれらの会合に出席します。もちろん、アドバイザーもセミナーなどを主催します。集まった教師は、発表を聞いたり、ワークショップをしたり、自作の教材を交換したりします。このような会合は参加者同士が知り合い、新しい知識を得、またその知識を分かち合うのに最適の場となります。

 しかし、一方で、遠隔地の学校でたった一人で日本語を教えている先生たちもいらっしゃいます。定期的な会合も車で2、3時間以上かけて行かねばならず、夕方の会合などなかなか出席できません。そういう先生方をアドバイザーは訪ねて行って、さまざまな情報交換をします。

日本語能力試験の勉強会の写真
日本語能力試験の勉強会

 2006年のニュージーランドの日本語能力試験受験者数は500人でした。日本語能力を測定する唯一の公的試験である日本語能力試験は、ニュージーランドではまだ十分に普及・理解されていないのが実情です。ニュージーランドは日本語教育が学校教育の中で盛んで、約2万人の高校生が日本語を学習していますが、能力試験を受けるのは12年生と13年生のごく一部です。日本語能力試験は、出来るかぎり多くの学習者に受験してもらいたいと思います。アドバイザーは高校生だけでなく大学生や日本語教師にも受験を勧めています。

 ニュージーランドは日本語教師の層が厚く、年配の先生が退職されたかと思うと、若い先生が教職課程を終え、教壇に立ちます。アドバイザーは、今後もすべての日本語教師との連携を深め、日本語教育の促進と内容の向上に努力していくことが大切だと思います。

 ニュージーランドの日本語教育についてのさらに詳しい情報は、以下のウェブサイトをご参考ください。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ニュージーランド・アオテアロア外国語教育(ILANZ=アイランズ)は、NZ教育省から業務委託を受け、外国との教育関係交換プログラムの運営、初等中等教育機関の外国語教師の支援等を行っている。ここには現在、ナショナルアドバイザーと呼ばれるドイツ語、スペイン語、フランス語、中国語、日本語教育の専門家が各1名所属している。ナショナルアドバイザーは教育省の言語教育アドバイザーや地域ファシリテーターと協働するともに、NZの初等中等教育機関を訪問したり、研修会を開いたりして、教師への支援を続けている。
ロ.派遣先機関名称
ILANZ (International Languages Aotearoa New Zealand)
ハ.所在地 Level 5, 150 Cuba Street, Wellington
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家 1名

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