世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 羊の国の日本語教育

ニュージーランド教育省
友岡純子

ニュージーランドの外国語教育の要であるILANZ

ニュージーランド外国語教育の要、ILANZのオフィスの写真
ニュージーランド外国語教育の要、ILANZのオフィス

 ニュージーランドは人間より羊の数のほうがはるかに多い、とよく言われます。人口は400万人ほどですが、この国は徹底した行政改革でも知られています。政府の行政組織は基本的な政策のみにかかわり、政策実施に付随するさまざまな仕事は契約している下請けの団体が行います。私もニュージーランド教育省に派遣されていますが、実際は教育省傘下のいわば独立法人であるインターナショナル・ランゲッジズ・アオテアロア・ニュージーランド(以下ILANZ=アイランズとする)に属し、日本語のナショナル・アドバイザーとして活動しています。ILANZはニュージーランド・カリキュラム(NZC)に基づいて、外国語教育の推進を図る団体です。

 ILANZには日本語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語の5人の言語別ナショナル・アドバイザーが所属しています。それぞれが教師の研修会を開いたり、教師の質問や問い合わせに答えたり、学校訪問をしたり、さまざまなイベントを企画したりと独自に活動していますが、ILANZの一員として国全体の外国語教育の教材やシラバスの開発にかかわったりもします。上記5人のナショナル・アドバイザーの他にマネージャー、事務担当、交流事業(エクスチェンジ・プログラム)担当2名の総勢9名の少人数ではありますが、ILANZはニュージーランドの外国語教育の要となっています。http://www.ilanz.ac.nz/

 ILANZには、私達ナショナル・アドバイザーのほかに、地方で現場に密着した活動をしている地域アドバイザーと呼ばれる人たちがいます。彼らは地域レベルで学校訪問や教師研修をしているので、ILANZのナショナル・アドバイザーと協力して仕事をしています。しかし、ニュージーランドの外国語教育を支えているのは、何といっても学校の現場で教えている先生たちであることは言うまでもありません。

ニュージーランドの外国語教育

 英語教育一辺倒の日本の外国語教育と異なり、ニュージーランドの外国語教育は多種多様です。2007年に発表された新カリキュラムでは、外国語が八つの学習領域の一つとして明確に設定されて、7年生・8年生(日本の小学校高学年相当)から外国語学習をするように推奨されています。しかし、外国語は必修ではありません。また、どの言語を教えるのかは学校が決定します。小学校の中には1学期はフランス語、2学期は日本語などと、学期ごとに変えて教える学校もあります。選択肢がたくさんある中で、日本語を選んでもらうためには何より「日本語の勉強は楽しい」と生徒たちが思ってくれなければなりません。そこで、日本語の先生たちは授業を楽しくするための工夫を重ねます。歌やゲームやクイズはもちろん、さまざまなアクティビティーを考え出します。しかも、ただ面白ければいいというのではなく日本語の力もつけなければなりません。授業時間も週に30分だけという学校もある中、いかに楽しくそして効果的に日本語を学習させることができるかということは、先生たちの研修会の永遠のテーマですが、初等教育で日本語を教えている先生は日本語を専門に学習した経験のない人たちがほとんどというのが現状です。

 ニュージーランドでは、高校の先生といっても複数の教科を教えている人が多く、ニュージーランドの外国語教育と同様、学生のバックグラウンドも多種多様です。漢字の得意な中国系の学生、文法に強い韓国系の学生、歌や踊りの得意なマオリの学生、実際の表現を活用したスキット作りなどが得意なヨーロッパ系の学生、一概に一般化はできませんが、多種多様な学生に対応する柔軟な指導法が必要とされています。

日本語のナショナル・アドバイザーとして

地方の高校でのジャパニーズ・デイの飾りつけの写真
地方の高校でのジャパニーズ・デイの飾りつけ

 ナショナル・アドバイザーは、普段の授業の他に学生たちが企画運営する「ジャパニーズ・デイ」といったイベントに招かれたりします。だるまからランドセルまで展示して、日本に関することは何でもありの企画に時には驚かされますが、彼らの自主性や熱意が伝わってきてうれしくなります。

 私はナショナル・アドバイザーとして、自分の知識や経験を生かしてニュージーランドの日本語教育に貢献できるよう努めると同時に、日本の均質な教育環境からは得られない、柔軟で多様な日本語教育のあり方を学んでいます。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ニュージーランド・アオテアロア外国語教育(ILANZ=アイランズ)は、NZ教育省から業務委託を受け、外国との教育関係交換プログラムの運営、初等中等教育機関の外国語教師の支援等を行っている。ここには現在、ナショナルアドバイザーと呼ばれるドイツ語、スペイン語、フランス語、中国語、日本語教育の専門家が各1名所属している。ナショナルアドバイザーは教育省の言語教育アドバイザーや地域ファシリテーターと協働するともに、NZの初等中等教育機関を訪問したり、研修会を開いたりして、教師への支援を続けている。
ロ.派遣先機関名称
ILANZ (International Languages Aotearoa New Zealand)
ハ.所在地 Level 5, 150 Cuba Street, Wellington
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家 1名

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