世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ブルネイの日本語教育事情

在ブルネイ日本国大使館
斎藤正雄

教育省日本語センターの前で筆者の写真
教育省日本語センターの前で筆者

 みなさん、こんにちは。ブルネイにおります斎藤正雄です。1999年4月、当地に参りましたので、ちょうど3年たちました。今日は、ブルネイと私の職場を御紹介しようと思います。

 「ブルネイ」という国名はなじみが薄いと思いますが、みなさんはブルネイってどこにあるかご存知ですか。次の話は、私が日本に一時帰国していた時のことです。ある方に「今、私はブルネイで働いているんですよ。」って言ったら、「ブルネイ、そうですか。たしか中近東の国ですよね。遠いところご苦労様ですね。」なんて言われてがっかりしたことがあります。しかし、最近はAPECや2001年ブルネイ観光年で日本のみならず世界にもその名が知られるようになってきました。

 ご存知のように、ブルネイは産油国であり、「お金持ち」の国として知られています。私もこの国に3年近く住んでみて、その豊かさを実感しました。でも、その「豊かさ」というのは大きな家に住んで、おいしい物を食べ、大きな車を乗り回しということではなく、恵まれた大自然の中で、税金や医療の心配もなく、あくせくせずに食べていけるという豊かさでした。

 こうした一見何の憂いもないように見えるブルネイ社会ですが、もし石油が枯渇したらその将来はどうなるのかという不安を誰もが抱いています。石油以後に備えなければという気持ちは、その国政においてブルネイをアセアン地域の金融、物流のセンターとしよう。さらに観光客を誘致し観光振興を、という方向に向かっているようです。

 こうした思いは日本語教育の分野にも影響を与えています。昨2001年4月よりサルタン・サイフル・リージャル・テクニカル・カレッジにおいて「観光日本語クラス」が正規の科目として開始されました。これまでブルネイで日本語が正規の教育科目に加えられたことはありませんでしたので、これは画期的なことでした。私もカレッジよりお招きを受け授業を担当しました。「観光日本語」という科目は初めての経験で、苦労も多かったのですが、学ぶところも多々ありました。

 さて、話が前後しますが、ブルネイで日本語が始まったのはブルネイ独立(1984年)の直後、1986年のことで、教育保健省の社会教育事業の一環として日本語講座が開設されました。この講座は現在の「ブルネイ教育省生涯教育課日本語コース」の前身にあたります。このコースの学習者は20歳から35歳までの若い世代が全体の約80%を占めています。両親に送り迎えまでしてもらって通学する若い方。仕事の帰りに受講されている20~30代の方。昔勉強したかったのにできなかったのでという40代の主婦の方など、日本語があらゆる世代に渡って関心をもたれている様子がわかります。

教育省日本語センターでの授業風景の写真
教育省日本語センターでの授業風景

 カレッジの観光日本語クラス以外では、2001年8月にはブルネイ大学ランゲージセンターに日本語講座が開設されました。このブルネイ大学はもともと「師範学校」であり、現在でもそうした性格を強く持っていますので、将来この講座からブルネイの日本語教育の将来を担ってくださる方が出てくれることを期待しています。

 こうして徐々にですが、ボルネオ島の一角に位置する小さな国ブルネイにおいても一般成人クラス、教養型のクラス、実用目的のクラスが整備されつつあります。

 クラス外の活動としては1987年以来「日本語弁論大会」が開催されています。ブルネイの場合、国が小さい上に日本人の数も少ないので、日頃学んだ日本語を使ってみるという機会は大変限られています。そのため学習者は日頃の腕試しをされているようです。また、私達教師や日本語教育関係者の親睦の場となっています。

 教材についてですが、残念ながらブルネイ独自の教材はまだ開発されていません。しかし、今後観光日本語の需要も見込まれ、ブルネイの実情に即した教材の開発が望まれています。私もこれまでに書き溜めたハンドアウトをまとめてみたいと思っています。

 最後になりますが、日本語教育やブルネイ研究・日本研究の関係者はここ数年毎年セミナーやシンポジウムを開催しており、その成果を「報告書」としてまとめています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 1987年にブルネイ教育省にて日本語講座が開講して以来、受講登録者数は2600名に上る。本講座には、一般社会人、ブルネイ政府関係者、大学生等様々な学習者が在籍。2002年6月より派遣専門家の所属先が現在の在ブルネイ日本国大使館からブルネイ教育省に移管され、ブルネイ全国を視野にいれたアドバイザー的な活動も行うことになった。専門家は、当該講座で日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う他、専門家が教育省技術教育局内に立ち上げた日本語センターにて、日本語学習者、教師に対してコンサルティング業務を行う。また、日本語講座を開講している学校に出講も予定している。
ロ.派遣先機関名称 在ブルネイ日本国大使館
Brunei, Embassy of Japan
ハ.所在地 House No.33 Lot 37355,Simpang 122,Kampong Kiulap, Gadong B.S.B. Brunei
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ブルネイ教育省技術教育局生涯教育課主催日本語講座
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1987年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1987年
(ロ)コース種別
夜間の一般成人日本語コース
(ハ)現地教授スタッフ
非常勤2名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   初級1:10~60
初級2:21
中級:18
上級:24
(2) 学習の主な動機 趣味、日本語・日本文化への関心
(3) 卒業後の主な進路
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
第4年次を修了時点で日本語能力試験の3級から2級程度
(5) 日本への留学人数

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