世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 「ブルネイでの日本語教育」

ブルネイ教育省
新田洋子

日本語が勉強したい

 と思う人はブルネイには大勢います。しかし、日本語教育を行っている機関は、ごく限られています。大学生の場合、ブルネイ大学の講座で日本語を履修することができますが、他の選択科目との関係で希望者が必ずしも履修できるとは限らないのが現状です。広く一般社会人が受講することのできる教育機関は、ブルネイ大学の夜間一般講座と、ブルネイ教育省生涯教育課(以下「生涯教育課」)日本語講座の二つのみです。中等教育段階の学生の場合は、課外活動の一つとして日本語クラブがある学校もあります。
 ブルネイでは、どうして日本語講座の人気が高いのでしょうか。それは、漫画やアニメ、そして日本の音楽が若い人たちの間で大変好まれているからです。若者だけではなく、日本語や日本文化に興味を持つ人たちは多く、一般講座では、幅広い年齢層の人たちが日本語を学習しています。しかし、日本語を学習しても、それが仕事に必要だとか、将来役立てようとか、実利的な目的はあまりありません。ブルネイでは日本企業の数も少ないですし、観光客の数も多くはなく、学習した日本語を実際に使う機会は稀です。

日本語を教えてみたい

授業風景の写真
授業風景

 生涯教育課には専任の講師は居らず、全ての講座を外部からの講師が教えています。日本語講座には筆者の他に今年は4名の講師がいます。大学で日本語を履修後、教えてみたいと若いブルネイ人講師が加わりました。今は筆者と一緒にクラスに入り教えていますが、将来はこういう若い人たちが中心となって、ブルネイの日本語教育を担っていくことでしょう。ですがそれまでにはまだ時間が掛かります。生涯教育課への国際交流基金からの日本語教育専門家派遣は20年になりますが、今年で派遣は終了することが決まっています。生涯教育課では、独自に専任の日本語講師を雇用する計画ですが、まだ具体的な目処がたっていないのが気掛かりです。

生涯教育課での業務

 生涯教育課での筆者の主な業務は、受講者に直接授業をすることです。現在は日本語1から4まで四つのレベルがあります。一番上のレベルでも、まだ初級日本語の段階です。一般社会人講座では、学校での勉強や、仕事を終えてクラスに来る受講者がほとんどなので、本業のほうが忙しいときには、クラスを休んでしまいます。そこで、復習を多くしたり、一回の授業の内容もあまり多くせず、休んでも受講者が継続していけるよう配慮しています。そのためどうしても進度はゆっくりになりますが、日本語3の受講者が能力試験の4級に合格することを目標にしています。ブルネイでは国内で能力試験が実施されていないため、隣国まで行って受験しなければなりませんが、毎年受験希望者があり、補習授業をして受験に備えています。
 生涯教育課講座で使用している教科書は『みんなの日本語』ですが、同講座で教える新人講師たちのために現在、教案と教材を作成中です。講座の受講生向けに分かりやすく教えられるようにと考えています。
 その他、弁論大会をはじめとして、日本語に関することは筆者の担当になります。時折外部の人が日本や日本語に関して質問に訪れることもあります。

生涯教育課以外での業務

日本語クラブ書道コンテストの写真
日本語クラブ 書道コンテスト

 生涯教育課のほかに中等教育学校の課外活動の一環として実施されている、日本語クラブでも教えています。日本語の学習だけではなく、日本文化の紹介も授業に取り入れ、その一つとして書道の練習もしています。筆を持つのは初めてという学生がほとんどですが、すぐに慣れて上手な字を書くようになりました。先日、在ブルネイ日本大使館の協力を得て、日本語クラブで書道のコンテストをすることができました。
 筆者が教えている中等教育学校のほかにも、最近は日本語クラブが生まれています。ブルネイ大学の卒業生や、生涯教育課の受講生が日本語クラブを開いている学校が数校あります。ブルネイの人たちの日本語に対する強い興味に支えられ、少しずつではあるけれどブルネイの日本語教育は広がりを見せている気がします。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ブルネイで日本語教育が行われている機関は非常に少ない。その中で社会人が日本語を勉強できる機関はブルネイ教育省生涯教育課の日本語講座とブルネイ大学ランゲージセンター内の一般向け日本語講座の二つしかない。教育省の講座は社会教育事業の一環として一般社会人のために開講され、授業料が安く、誰でも気軽に日本語学習ができる場となっている。主な業務は同講座受講者に直接授業をすることであるが、日本語を教え始めたばかりの現地日本語講師の指導もしている。また、この他に、公立学校の一つで課外活動として始まった日本語クラブの授業も担当している。
ロ.派遣先機関名称 ブルネイ教育省技術教育局
Department of Technical Education, Ministry or Education
ハ.所在地 BlokJ、Simpang 347, Jalan Pasar Baru, Gadong, Negara Brunei Dalussalam, BE1310
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
生涯教育課日本語講座
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1986年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1987年
(ロ)コース種別
日本語1,2,3,4
(ハ)現地教授スタッフ
講師4名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   日本語1:166名、2:55名、3:34名、4:22名
(2) 学習の主な動機 趣味、日本と日本語への興味
(3) 卒業後の主な進路
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験4級程度。それ以上の受講者も有り。
(5) 日本への留学人数 なし

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