世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 夢と期待と、カンボジア

カンボジア日本人材開発センター
石田英明

 農業立国であるカンボジア、みなさんには世界遺産アンコール遺跡群でお馴染みでしょう。アプサラ(天女)の微笑みをたたえるカンボジア人は楽天的。素朴で子どものような感覚を失わず、興味を持てば驚くほど熱心に取り組みます。そんなカンボジアもポル・ポトの台頭を含む20年にわたる内戦によって、社会システムや教育、文化、人的資源において壊滅的な打撃を受けました。1998年のクメール・ルージュの投降で国は安定したとはいえ、まだまだ経済状況は厳しいのが現状です。しかし、最近はこの世界的な不況の影響下にあっても、過去10年間の平均成長率は9.4%とASEAN諸国の中で最高であり、現在710ドルにまで伸びた国民一人当たりのGDPは世界同時不況の危機を克服すれば今後も伸びていくことが予想されています。日本語学習者も年々増加し5400名以上になりました。このようなカンボジアでの日本語学習動機は、留学・就職など実利目的が中心です。

カンボジア日本人材開発センター(CJCC)の目的と、日本語教育事業

授業風景の写真1
授業風景(1)

 日本政府のカンボジア支援で力を入れている項目のひとつに「人づくり」があります。CJCCはまさに「カンボジアの市場経済化の実務を担う人材の育成」を目的とした機関で、中でも「人材育成コース」「日本語コース」「交流事業」の3部門が事業の中心となっています。

 日本語コースでは、主に留学志望大学生を対象とした初級から中級までの長期コースや、日本語能力試験対策の短期コースを開講し、また日本滞在予定者に対する単発の日本語研修も実施しています。一方、日本語教育を担う人材の育成・支援として教師養成コースを開講し、今後の日本企業進出に備えてビジネスコースなどの開設も検討しています。さらに日本語コースが行っている翻訳事業では、「二人のイーダ」「だれも知らない小さな国」など児童書と「みんなの日本語初級Ⅰ 翻訳・文法解説書カンボジア語版」がすでに出版されており、現在取り組んでいる「みんなの日本語初級Ⅱ 文法・翻訳書カンボジア語版」も年内に刊行される見込みです。なお、学習者と在カンボジア邦人との交流セッション「チャットーク」や、スタディツアーに訪れた学生との交流も企画し、日本語使用場面の創出や心の交流を試みています。

CJCCにおける日本語教育専門家の役割

 日本語教育専門家(以下、専門家)にはCJCCでの業務とともに、カンボジアにおける日本語教育環境の状況改善という波及効果をも視野に入れた活動が求められています。

 CJCC日本語コースにおいては、これまで専門家がコース企画・運営・シラバス改善を指揮し、講師の一人として授業を担当してきました。しかし、この企画・運営・シラバス改善業務について、カンボジア人の日本語コースマネージャー(以下、CM)自身が実質的に担えるようサポートする役割へとシフトしつつあります。さらに、専門家とCMが協力して、首都プノンペン以外の日本語教師へのサポートをCJCC業務としてどう位置づけ実施するのか、考えを固めていく必要があります。現在、バッタンバン地方での教師研修について具体的に詰めているところです。

 他方、日本語能力試験の実施や、王立プノンペン大学に派遣されている専門家とともにカンボジア日本語教師会やスピーチ・コンテストを支援するのも大切な業務です。

将来に向けて

授業風景の写真2
授業風景(2)

 やはり、カンボジアでは日本語を習得してもなかなか就職に結びつきません。昨今日本企業による投資は確実に伸びてきていますが、日本語を使う職に携わるコース修了者は非常に少ないのが現状です。しかし、現在政府承認を得た21箇所の経済特区のうち日本政府の支援によるシハヌーク港経済特区が2011年に完成予定であり、日本企業進出の期待は高まりつつあります。そのいつか来る「将来」に向け、頑張っている学習者たちとそれを支える教師たちが、ここにいます。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
カンボジア日本人材開発センター(CJCC)は王立プノンペン大学の一機関であり、カンボジアの市場経済化促進のための人材育成を目標とする。JICAはその支援を2004年から実施している。センター事業の中心はビジネス、日本語、相互交流の3コース。日本語教育専門家の業務は1)コースの企画・運営・改善、2)イベント実施、3)翻訳・出版などを現地教師主導で行えるよう支援することであるが、同時に4)現地教師の育成・援助・ネットワーク形成支援も重要な業務である。
ロ.派遣先機関名称
Cambodia-Japan Cooperation Center
ハ.所在地 Blvd. Russia, Khan Tuol Kork, Phnom Penh, Cambodia
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家 1名
ホ.アドバイザー派遣開始年 2004年

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