世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語学科開設4年目、岐路に立つ

王立プノンペン大学外国語学部日本語学科
上野栄三

 王立プノンペン大学日本語学科は、2008 年9月に新入生が入学し、1年生から4年生まで4学年の学生がそろった。そして、2009年7月には初めての卒業生が巣立っていく。現在、4年生は卒業論文の作成に追われ、皆、必死の形相である。卒論が終わると、就職。無事に希望の仕事が見つかるか、学生も人生の岐路に差しかかるが、学科も岐路に差しかかっている。

 今回は2008年度日本語学科が経験したいくつかの授業、活動を紹介する。

体験授業:「観光ガイド」に挑戦!

 今年1月21日、4年生ビジネス専攻クラス全員に、実際に日本語観光ガイドとなって、プノンペン市内の観光地を案内するという体験授業をさせた。案内する観光地は、国立博物館、王宮、ワット・プノン、そして、トゥールースレーン博物館である。学生たちには、あらかじめ、ガイドをする観光ポイントを分担させておいた。観光客には、日本語学科の教師とボランティアの日本の方に扮してもらった。

 ほとんどの学生にとって、観光ガイドは初めての体験である。自分が担当する観光ポイントの調査、暗記、説明だけでアップアップで、「観光客」からの突然の質問には、大苦戦を強いられていた。それでも、優しい「観光客たち」は紳士淑女の態度で学生の説明を聞いてくれた。

 彼らは今年7月卒業する。卒業後、日本語ガイドになる人もいるかもしれない。今回の体験が将来役に立つことを願っている。

日本語教育セミナー・ワークショップ

王宮にての写真
(王宮にて)
間違えないでうまく説明できたかな?

 昨年11月8日に2回目のセミナーを開催した。バンコク日本文化センターの集中研修に参加した2名のカンボジア人講師が担当した。バンコクで学習したことを、個人のもので留めてしまったのでは、波及効果がない。これをかみ砕いて、多くのカンボジア人の教師に伝達することで、効果が二倍、三倍にもなる。そのためのセミナーである。

 今回は「総合的日本語- 授業を変える2,3のヒント」というタイトルで実施された。興味を引いたのは、言語スキルの組み合わせの新しい発想である。普通は「話す-聞く」「書く- 読む」「聞く-読む」「話すー書く」などの組み合わせが思い当たるが、ここでは「聞いて書く」「読んで話す」という組み合わせが提示された。参加者、目からウロコのアイデアだ。

 また、ある言葉を別の言葉で学生に考えてもらうという授業案も注目された。例えば、「表に住所と名前を書き、うらに文を書いて送る紙、ふつう、横10センチ、縦15センチです」とある学生に「話をさせて」、その意味をほかの学生が「聞いて答える」というやり取りである。「はあ、はあ、そうか...」と納得顔。

大成功! 日本語スピーチコンテスト

テー・チャントラー講師の写真
テー・チャントラー講師(カンボジア日本人材開発センター(CJCC))の講義

 今回で12回目を迎えたスピーチコンテスト。今や、プノンペンの一大イベントに成長した。開場前から大勢の客が押し寄せ、大盛況。出場者は全国から集まった精鋭14名、家族や友人の声援を受け、熱弁を振るった。

 今回は「日メコン交流年2009」という記念すべき大会であった。優勝者と準優勝者は、6週間の日本研修旅行に行くことができる。3位の学生も2週間の日本研修旅行に行ける。

 カンボジアのスピーチコンテストの大きな特徴は、ある特定の機関や組織が行なうのではなく、カンボジアで日本語を教えている日本語教師(カンボジア人も日本人も)が集まって、実行委員会を組織し、まさに教師と学生が「手作り」でやっている点だ。また、予算もカンボジア駐在の日本企業、NGO、個人からの寄付金でまかなっている。派手さはないが、素朴で、味わい深いイベントである。

これからの日本語学科

プノンペン大学学生、ワン・マレン君の熱弁の写真
プノンペン大学学生、ワン・マレン君の熱弁

 2009 年7月に初めての卒業生が巣立っていく。教育に進むもの、ビジネスに進むもの、みな人生の岐路に立つ。学科としては、何人かの学生には日本語教育界に進むことを望んでいる。もちろん、日本に留学するチャンスがあれば、果敢に挑戦してほしい。日本語教員となって、全国各地に散らばっていき、かの地で日本語教育の若い芽を育ててほしい。

 ビジネスの世界に羽ばたく学生には、大いに気を吐き、カンボジアビジネスの牽引力になってもらいたい。そして、「さすがはプノンペン大の学生だ!」と、日本人ビジネスマンをうならせてほしい。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
王立プノンペン大学は、カンボジアの国立高等教育機関の中で最大の総合大学である。日本語学科は2003年にカンボジア教育省の承認を得て設置され、2005年10月に開講した日本語・日本語教育を主専攻とする4年制の学士課程で、カンボジア全国から学生を集めている。2005年11月には、カンボジア日本語教師会の事務局が当日本語学科に設置され、会報の発行、セミナー・ワークショップ等の主催、他機関の教師への情報提供や教師間の交流促進にも努めている。
ロ.派遣先機関名称 王立プノンペン大学
Royal University of Phnom Penh
ハ.所在地 Department of Japanese, Institute of Foreign Languages, Royal University of Phnom Penh,
Russian Federation Boulevard, Phnom Penh, P.O.Box416, Cambodia
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
外国語学部日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   専攻:
2005年から
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2005年から
(ロ)コース種別
主専攻学科
(ハ)現地教授スタッフ
常勤講師11名(うち日本人7名)、非常勤講師日本人2名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生50名 2年生73名 3年生53名 4年生45名
(2) 学習の主な動機 日本語教師志望、就職や将来の留学のため
(3) 卒業後の主な進路 まだ卒業生がなし
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
カリキュラム上は能力試験2級程度
(5) 日本への留学人数 長期4名、短期2名

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