世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) RUPP日本語学科の現在

王立プノンペン大学
杉山純子

1.日本語学科2011

頑張る若手教師達の写真
頑張る若手教師達

 王立プノンペン大学外国語学部日本語学科(RUPP)では多様な学生が日本語を学んでいます。年齢もまちまちです。午前中は日本語学科で学び、午後は他の大学や専門コースでITや経営学などを学ぶダブルスクールの学生も多いようです。もちろん、働いている人もいます。結婚してお子さんのいる人もいます。みんな日本が大好きです。

 日本語学科には日本人教師もいますが、中心となっているのは学科を卒業した若い教師達です。日本留学経験のある教師もいて、みんなかなりの日本通です。授業の準備もしっかり行い、意欲的に学生を指導しています。週に1回夕方に教師勉強会を開いていますが、全員自己研鑚の気持ちが強く、良い教師になろうと一生懸命努力しているので、将来が楽しみです。

2.多彩な開講科目

 1年生から3年生までは日本語科目が主ですが、4年生になると、学生達は教育専攻とビジネス専攻に分かれ、それぞれの専門分野を学びます。例えば、教育専攻には応用言語学、教授法、教材研究、日本学研究、教育実習などの科目があり、ビジネス専攻には観光日本語、通訳、実務翻訳、日本経済などの科目があります。また、両専攻の共通科目として、アカデミック・ジャパニーズ、情報技術と日本語、日本文学も履修が義務付けられています。

 ここでは2011年2月に開講された面白い科目を二つご紹介します。ひとつは日本文学です。これまでに宮沢賢治の『注文の多い料理店』『セロ弾きのゴーシュ』『銀河鉄道の夜』を読みました。学生達は賢治ワールドに引き込まれていったようです。「動物がしゃべるの?」というかわいらしい質問も出ました。「こんなにオノマトペが多いのははじめて!」という驚きの声も上がりました。賢治の作品の根底には「他の人の幸いのために生きる」という考え方があります。カンボジアも敬虔な仏教国ですから、学生達も賢治の考え方がある程度理解できるようです。

 もうひとつの科目は日本学研究です。初の試みですが、クラス授業と学外日本人講師の特別講義という二本立てで進めています。10回の特別講義には様々な分野で活躍されている在留邦人をお招きしました。特別講義は講師に専門分野に関する講義をしていただき、そのあと学生達がグループ・ディスカッションと発表を行うという形にしました。テーマは、たとえば、「日本はなぜカンボジアを支援するのか」「遺跡修復がつなぐカンボジアと日本」「東日本大震災、被災地を訪ねて」「企業と人材」「通訳の心得」など興味深いものばかりです。特別講義は学生達にも「知識が増えた」「自然な日本語が聞けた」「深く考えることができた」と好評です。

3.卒業論文指導

 4年生が最も力を注がなければならないのが日本語で書く卒業論文です。今年は、信頼できる参考文献、独自性、考察の根拠という3点を特に重視して学生を指導しています。しかし、教師だけでは手が足りず、数名の学生にライティング・チューターの役割を与え、他の学生の原稿をチェックしてもらっています。週末と休日は大学施設が使えないので、その代りに、みんなが大きなテーブルのあるカフェに集合してワイワイにぎやかに卒論について話し合うというちょっと楽しい卒論指導日もありました。

4.拠点としての役割

 RUPPはカンボジアの日本語教育の拠点として様々な活動を行っています。まず、カンボジア日本語教師会セミナーを年に4回開催し、会報も発行しています。また、カンボジア日本語スピーチ・コンテストの運営事務局ともなっており、RUPPの先生方が中心になって、準備を進めています。さらに、2011年5月から6月にかけて、さくら日本語・日本文化普及キャラバンを実施しました。キャラバンは、他機関の教師や学生の協力も得て、各地の高校を訪問し、日本語や日本文化を紹介するという活動です。このキャラバンについては以下のサイトをご参照ください。
http://cambodiajapankyaraban.blogspot.com/

5.専門家の役割

 専門家の役割は学生指導だけではありません。教師勉強会、カンボジア日本語教師会セミナーの実施、アンコールワット日本語教師会セミナーの講師、日本語・日本文化普及キャラバンへの企画アドバイスと参加、スピーチ・コンテスト実行委員会開催、来訪者対応など、多岐に渡っています。おかげで、忙しい毎日を送っていますが、周囲のカンボジア人や日本人の温かいサポートが支えとなっています。

6.日本に寄せる思い

日本へのメッセージの写真
日本へのメッセージ

 当日本語学科にとっても東日本大震災のニュースは大きな衝撃でした。学生達は居ても立っても居られないという様子で、祈りを込めて千羽鶴を作ったり、義援金を集めたり、大使館へ記帳に行ったりしました。「私達も日本のために祈っている。そして、日本の人々を心から応援している」ということを日本に伝えたいという気持ちでいっぱいなのです。彼らの気持ちがどこかで受け止めてもらえるといいなと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Royal University of Phnom Penh
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
王立プノンペン大学は、カンボジアの国立高等教育機関の中で最大の総合大学である。日本語学科は2003年にカンボジア教育省の承認を得て設置され、2005年10月に開講した日本語・日本語教育を主専攻とする4年制の学士課程で、カンボジア全国から学生を集めている。2005年11月には、カンボジア日本語教師会の事務局が当日本語学科に設置され、会報の発行、セミナー・ワークショップ等の主催、他機関の教師への情報提供を行っている。さらに、さくらネットワークの拠点機関にもなりカンボジアでの日本語教育普及に努めている。
所在地 Department of Japanese, Institute of Foreign Languages, Royal University of Phnom Penh,
Russian Federation Boulevard, Phnom Penh, P.O.Box416, Cambodia
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
外国語学部日本語学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2005年
国際交流基金からの派遣開始年 2005年
コース種別
日本語専攻
現地教授スタッフ
常勤11名(うち邦人4名) 非常勤1名(邦人)
 
学生の履修状況
履修者の内訳   1年生67名 2年生61名 
3年生37名 4年生61名
学習の主な動機 ・将来の仕事のため
・留学のため
・日本語教師志望
卒業後の主な進路 日系企業・NGO就職、通訳・ガイド、日本語教師
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N3-N2
日本への留学人数 長期4名 短期1名

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