世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 高まる実務日本語人材の需要

カンボジア日本人材開発センター
小川 京子

1. カンボジアの日本語人材

カンボジアでは、日本企業の進出増加に伴い、日本語人材の需要が急激に高まっています。

カンボジアでの日本語能力試験は2006年12月に始まりました。当初総数で665名、1、2級の受験者は97名でしたが、6年後の2012年12月には総数で810名、N1、N2の受験者は合計250名と、総数、レベルとも順調な伸びを見せています。

しかし、実務能力を持った日本語人材の不足は深刻で、日系企業で働く場合の一般常識やビジネスマナー、仕事に対する意識など、日本語以外の知識や能力の不足も指摘されています。

2. CJCCの日本語人材育成

カンボジア大手銀行への企業派遣日本語コースの写真
カンボジア大手銀行への企業派遣日本語コース

そこで、CJCCでは、早朝、昼休み、午後、夜間の4つの時間帯に、週3回から4回、3カ月から半年単位の、初級から中級後半までの一般日本語コース14クラスのほか、日曜日のビジネス日本語、不定期の「ビジネスマナー」やサービス業の増加に応じた「おもてなし」などの特別クラス、さらに、企業のニーズに合わせたテーラーメードの企業派遣日本語コースなどを提供し、総合的な日本語人材の育成強化に取り組んでいます。

一般コースでは、就業や留学を主な目的として、昨年の二倍の約350名が、企業派遣コースでは、現在、125名が日本語を学習しています。自国産業に乏しいカンボジアでは外国企業やNGO が経済の中心で、就職には語学力が必須になるため、外国語学習熱が非常に高く、受講生も英語や中国語など、複数の外国語ができる人が多いのが特徴です。

3. 教師研修

学習人口の増加とともに、必要になってくるのは、実務日本語人材の育成に当たる教師です。

そのため、最も学習者の多い初級を楽しく教えられる教師の養成を目指して、N3程度以上の日本語能力を持つ人を対象に、1年間の教師養成コースを開講しています。このコースでは、授業のほかに120時間のインターンシップを義務づけ、知識に加えて、現場の教師の仕事を体験してもらうことにも重きを置いています。

CJCCの現職カンボジア人講師対象には、毎週、教科書にそった教え方の勉強会を行っているほか、日本人講師が発音練習や読解の個別支援を行ったり、日本人講師の担当する「ビジネス日本語」や「マナー講座」の助手や通訳として授業に参加してもらうなどして、早く各自の日本語能力を伸ばし、中上級の一般日本語だけでなく、日本の企業文化とビジネス日本語まで教えられる教育人材になってもらえるように、現場での自己研鑽を奨励しています。

4. 2014年度JF講座の開講に向けて

『まるごと:日本のことばと文化』日本語コースの写真
『まるごと:日本のことばと文化』日本語コース

CJCCでは、来年度、国際交流基金のJF講座が開講される予定であるため、その準備として、2013年1月から『まるごと:日本のことばと文化』を使用した初級コースを開講しています。このコースの目的は、正式開講の前にCJCCの講師に教科書に慣れてもらうことで、コース受講生に自主的に学習に取り組む姿勢を身につけてもらうこと、発話を増やす教室活動を考え、扱われている文化をまずは講師自身がきちんと理解しておくことを中心に、毎週、授業の進度に合わせて勉強会をしています。幸いなことに、CJCCの講師は全員、国際交流基金の研修などで渡日経験があるので、日本について知っていることは多いのですが、毎回新たな発見があるようです。また、カンボジアにはないバスや地下鉄などを受講生にどのように紹介するか、といった案も出し合います。これは日本人講師にとっても楽しい学びの場で、カンボジア人に教えておくべき趣味の日本語は「お寺参り」とか、プノンペンのおすすめの観光は「お金持ちの家を見に行くこと」とか、一年中猛暑のカンボジアには散歩の習慣がなく、「散歩」と言えば犬の散歩をさす、など、毎回笑いの絶えない互いの文化理解の場となっています。

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