世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 『まるごと』講座10月開講!

カンボジア日本人材開発センター
吉川 景子

1.カンボジアの日本語学習者

カンボジアでは、就職を目的とした学習者が多く、近年の日系企業のカンボジア進出に伴い、日本語学習者数も着実に増えてきています。しかし、企業が求める日本語人材は高い日本語運用能力あるいは実務能力を有している人材であり、まだまだギャップがあるのが現状です。また、少しずつですが、日本文化やポップカルチャーに興味を持って、日本語を勉強し始める学習者も見られるようになりました。

2.2014年度10月JF講座開講に向けて

「まるごと1入門コース」の授業風景の写真
「まるごと1入門コース」の授業風景

カンボジア日本人材開発センター(以下、CJCC)では2004年度より様々な日本語コースを開講してきましたが、2014年度10月より、国際交流基金(以下、JF)の日本語講座として新たに『まるごと 日本のことばと文化』を使用した日本語コースを正式開講することになりました(『まるごと』を使ったコースは前から開講していますが、10月からJF講座として正式に開講)。現在はコース移行中で、「まるごと1入門コース」、「まるごと2初級1コース」、「まるごと4初中級コース」を開講しています。

CJCCの学生による「よさこいソーラン」(絆フェスティバル)の写真
CJCCの学生による「よさこいソーラン」
(絆フェスティバル)

新しいコースを教えるため、CJCCでは講師全員で毎週「まるごと勉強会」を行っています。毎回担当者を決めて、模擬授業を行っているのですが、その中でカンボジア人講師からの質問、日本人講師からの質問などを通してお互いの理解を深める発見があります。例えば、日本人講師からカンボジア人講師に「カンボジア人の学習者には四季のイメージはあるの?」、「クメール語にはこの文法の概念はあるの?」、「カンボジア人だったらこういうとき、日本人と同じように感じるの?」というような質問が出ます。また、教科書の例文、イラスト、写真を通した日本事情や日本文化について、カンボジア人講師から日本人講師に質問が出ます。最近では「まつたけ」のイラストから、「これはきのこ?どうして秋にきのこが話題になるの?」という質問があり、日本人講師からの説明を聞いて、値段の高さに驚いていました。

教え方の勉強会だけでなく、クメール語の語彙リストを作成したり、新たな教材を整備したり、宿題やテストを作成したりなど、先生たちは大忙しです。カンボジアではまだまだクメール語で作成された教材が少なく、学習者たちは英語を介して言葉の意味を調べる必要があります。また、ウェブサイトでいろいろなリソースが公開されていても、インターネットに自由にアクセスできる学習者は限られています。そのため、先生たちはカンボジア人学習者のための『まるごと』の教科書に合わせた副教材を作成しようと計画中です。

3.日本語・日本文化関連のイベント実施

CJCCでは大使館や王立プノンペン大学日本語学科などの諸機関と協力しながら、日本語教育や日本文化関連のイベントを数多く実施しています。日本語教育分野では日本語能力試験やカンボジア日本語スピーチコンテストを実施しています。また、毎年2月には絆フェスティバルというイベントを行っていて、スタッフ総出で日本語、日本文化のイベントを企画、実施し、カンボジアの中で“日本”を発信する場として中心的な役割を担っています。このような機会を通して、日本に関心のあるカンボジアの人たちに日本ファンになってもらい、日本語学習者の裾野が広がっていってほしいと思います。

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