世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 中等教育機関における日本語教育の現状と支援活動<インドネシア・中部ジャワ及びジョグジャカルタ特別州>

中部ジャワ州地域派遣
久野 元

 2001年度、中部ジャワ州およびジョグジャカルタ特別州(以下、中部ジャワ)では中等教育機関(高校)における日本語教育界に大きな変化があった。それは2001年6月、中部ジャワ高校日本語教師会が発足したことである。教師会発足と同時期に初めて青年日本語教師(以下、青年教師)が当地域に派遣されたのは期せずしてのことではあるが大変意義深いことだと言えよう。

 教師会の会員は2002年4月現在20名おり、日本語教育を行なっている高校は23校ある。しかしこれが全てではなく、もっと多くの教師や学校が存在するものと思われるため調査を行なっている。この調査は日本語教育状況を把握するのみでなく、学校や教師間のネットワーク作りにも重要なことであるが、なかなか思うように進んでいない。その原因は情報源の少なさにある。現在の情報源は教師会会員からのものと役所にある資料である。役所の資料は最新のものではないためあまり役に立っていない。会員からの口コミ情報の方がずっと確実であり、これによって非常にゆっくり調査が進んでいるというのが現状である。

 中部ジャワ高校日本語教師会は他地域に比べるとまだ小さいがその活動は次第に盛んになってきている。教師会は3ヶ月に1度中部ジャワ全域から教師が集まる大会議と、毎月それぞれの地区の教師が集まる小会議に分かれる。どちらでも情報交換や勉強会が行なわれることになっている。前回の大会議では日本語ワープロソフト使用法の指導と、導入からドリルまでの指導方法についてワークショップが会議のあとで行なわれた。また2001年4月には教師会主催による高校生日本語弁論大会が開催された。大会ではスピーチの他にも学校対抗でディクテーション、日本語の知識を競い合うクイズなども行なわれた。アトラクションでは筆者の配属校の生徒による盆踊り(炭坑節)が披露され、盛会となった。

 これらの活動内容は企画・運営は教師会の役員を中心にインドネシア人教師主導で行われている。青年教師は求められれば助言や意見を述べたり、勉強会で講師をしたりしているのみである。国際交流基金は「日本語教育の現地化・自立化」を目標としているが、中部ジャワの場合は大変好ましい形で活動を行なっていると言えよう。

 しかし残念ながら小会議は今のところジョグジャカルタ地区でしか行なわれていない。今後は小会議で各地のリーダーとして役割を果たせそうな教師を促し、毎月行なえるよう支援していきたいと考えている。

 インドネシアの教育省は指導要項の中で「使える日本語」を習得させるよう謳っている。これを受けて国際交流基金は教育省所轄の語学教員研修センターと共催で高校教員研修を行ない、コミュニケーション能力開発を目的とする教授ができるようになるよう指導をしている。研修では教授法の講義や日本語演習や模擬授業などが行われる。青年教師は日本語演習と模擬授業の講師を務めている。しかしながら研修回数が少ないこと、研修対象外となる教師もいることから、全ての教師が研修を受けられるわけではない。研修を受けた教員は学んだことを実際の授業に活かそうと努力しており、研修の効果はあがっていると思われる。しかし研修を受けたことのない教師は文法説明や訳読のみの授業をしており、コミュニケーション能力開発重視の指導は行なわれていない。

 今後、研修経験者に対してはその教師の勤務する学校を訪問した際、研修のフォローアップをしていく一方、研修未経験者を集めて特別な勉強会を開き、指導を行ないたいと思っている。

 インドネシアの教師は給与・福利厚生などの待遇が悪く、大学生にはあまり人気のない職業である。そんな状況のもとでも、教師達は向上心を持ち真摯な態度で指導にあたっている。配属校での授業・教師指導、中部ジャワ内の学校巡回訪問時の授業・教師指導、教師会支援、教材開発など多岐にわたる青年教師の業務も、このような熱意に満ちた人々なしでは進めることができない。その中で仕事ができることに大きな喜びを感じている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
現在、中部ジャワ州の青年教師は、配属校の私立ボプクリ第1、第2普通高校の3年生語学系日本語クラスで、インドネシア人日本語教師への技術移転を主眼に、日本語教育に関する指導を行っている。また、日本語勉強会を兼ねた高校日本語教師会(MGMP)の活動に協力することで、ネットワークの構築、教師のレベルアップを支援している。また、月に平均3回程度の学校訪問を行い、助言・指導すると同時に、生徒にネイティブと話す機会を与え、日本語学習に対する動機を高める。その他、高校用日本語教材の作成を行っている。
ロ.派遣先 中部ジャワ州
ハ.国際交流基金派遣者数 青年教師:1名

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