世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 多様な支援活動が目白押し-東ジャワ-

スラバヤ大学/東ジャワ地域派遣
山門健二

地域派遣専門家として

 東部ジャワ州の州都スラバヤは、各種産業が栄えるインドネシア第2の都市である。日系企業も多く進出しており、日本人に接する機会が比較的多い場所であると言えるだろう。また最近では、テレビでのドラマやアニメの影響を受けて日本語や日本文化に関心を持ち始めた若者も多い。

 現在、東部ジャワ州には、国際交流基金より日本語教育専門家と青年日本語教師が1名ずつ派遣されており、それぞれが東部ジャワ州全体の高等教育機関と中等教育機関の日本語教育支援業務に当たっている。このうち日本語教育専門家は、所属機関であるスラバヤ国立大学で週3コマの授業を担当し、それ以外の時間を他の大学等、高等教育機関で働く日本語教師の支援業務に費やしている。一つの所属機関だけではなく、より広い範囲での支援をすること、これが1999年から始まった地域派遣専門家というシステムである。

 実際、現地の日本語教師たちは非常に勉強熱心であり、様々な支援を求めてくる。今現在、日本語能力試験1級対策の勉強会が毎週開かれており、5月からは文法に関する勉強会も開かれるようになった。さらに2、3か月に一度は、日本語教育に関する1日セミナーも開かれている。これらの勉強会やセミナーは参加者も多く、東ジャワ地域の日本語教師の交流と情報交換の場としての役割も担いつつある。

日本語教育1日セミナー

1日セミナーでのグループ作業の写真1
1日セミナーでのグループ作業

 3月23日に国際交流基金と東部ジャワ日本言語文化研究会の共催で日本語教育1日セミナーが行われた。テーマは「効果的な授業見学のしかた」であった。講師は報告者と青年日本語教師の2人であったが、模擬授業は、現地大学のインドネシア人日本語教師と在学生の協力を得て実施した。

 ここ東ジャワ州では、大学、高校を問わず、教師相互の授業見学の機会はほとんどないと言ってよい。たとえ機会があったとしても、何となく参加しているだけで、授業後にコメントを求められた場合に、意見や感想を的確に述べることのできる教師はごく限られているのが現状である。また、中には他の教師の授業見学が自分の授業の反省と改善にも役立つことに気付いていない教師もいるようであった。そこで、自分の授業の評価と改善を行う前のステップとして、他の教師の授業見学のしかたと評価方法について考えることをこのセミナーの趣旨とし、講義とワークショップを行った。

 まず、「何のために授業見学をするのか」「いい授業とは何か」について講義を行い、その後「見学のポイント」についての講義と意見交換を行った。そうして、他の教師の授業見学用チェックリストを各自の判断によって作成した。

 次に、現職のインドネシア人教師と実際の学生たちによるデモ授業を見た。これは「授業見学後のコメントの難しさ」の実体験がねらいである。そのため、比較的経験のある教師をデモ授業に起用した。「コメントの難しさ」について意見交換を行った後「コメント時のルール」についての講義を行った。

 午後からは、東部ジャワ日本言語文化研究会の日本語教育実習参加者を使ってのデモ授業を行い、見学の後に「改善点」「よかったところ」等について意見交換を行った。

1日セミナーでのグループ作業の写真2
1日セミナーでのグループ作業

 最後に、ワークショップで出された意見を代表者にまとめて発表してもらい、授業を行った教師にも「コメントによって得たこと」について簡単に述べてもらった。その後、「自分の授業の評価と改善」についての講義を行い、自分の授業のためのチェックリストを各自作成した。

 今回、インドネシア語の通訳を入れずにセミナーを行うことに最初は不安もあったが、その心配をよそに意見交換などほとんど全てが日本語で行われたことは、注目に値すると思われる。また、出席者全員が積極的に意見を述べ、活発なセミナーとなったことをうれしく思う。特に今回のセミナーを通して、お互いにグループを作り、実際に授業見学をやってみようという動きが出てきたことは、大変喜ばしい成果である。そして、お互いに授業見学をやった後のディスカッションで出された未解決の問題を次のセミナーや今後の勉強会のテーマとして取り上げていくことも計画中である。

日本人ボランティア教師の活躍

 今回のセミナーや東ジャワ地域高校文化祭など、大学の教員と高校の教員、あるいは大学生と高校生が場所をともにし、協力し合う機会が増えてきた。これも東ジャワ地域の良い特徴の一つとして根付いていくことを願いたい。

 また、スラバヤ地域では、日本人ボランティア日本語教師たちの活躍がめざましい。どの教師も、所属機関の学生に対する日本語教育はもちろん、様々な業務において期待され、大きな責任と負担を負って活動を続けている。現地駐在の日本人と学生たちとの交流活動等、生の日本語に触れさせる機会を設けるなど、いろいろと工夫をしているのにも感心させられる。彼らの活動に対しても、多方面での支援が可能ではないかと思っている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 スラバヤ国立大学は、東ジャワ州において最初に日本語コースを設置した。日本語教師の養成を目的とし、日本語日本文化の学習に留まらず、教授法や具体的な授業の進め方を学び、2ヶ月間の教育実習でそれを実践する。東部ジャワ地域の中等教育レベルの日本語教師の殆どが当大学の卒業生。さらに大学レベルにおいても多くの卒業生が日本語教育に携わっており、この地域の日本語教育の普及と発展に大きな役割を果たしてきた。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。また、地域派遣専門家として、域内の日本語教育の底上げ、教師支援を行う。
ロ.派遣先機関名称 スラバヤ国立大学
National University of Surabaya
ハ.所在地 Lidah Wetan, Surabaya, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
言語芸術学部外国語外国文学科日本語プログラム
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1981年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1981年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤 12名(うち邦人0名、留学中の者2名)、非常勤7名(うち邦人3名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   各学年約40名程度
(2) 学習の主な動機 (1)テレビからの情報(アニメやドラマ)で日本への興味
(2)日系企業就職
(3)奨学金や留学
(3) 卒業後の主な進路
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
殆どの学生は日本語能力試験の3級には合格可能
(5) 日本への留学人数 複数あり

ページトップへ戻る