世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 中等教育レベルでの日本語教育支援 -インドネシア、北スラウェシ州の場合-(2002)

北スラウェシ州地域派遣
吹原 豊

多岐にわたる業務内容

地方の高校での授業風景の写真
地方の高校での授業風景

 インドネシアでは多くの高校で、日本語が第2外国語として教えられている。広大な国土の中でも特に日本語教育が盛んな地域が7州あり、2001年度はそのうちの6地域(ジャカルタ首都圏、西ジャワ州、中部ジャワ州、東ジャワ州、バリ州、北スラウェシ州)に「青年日本語教師」(以下、青年教師)が派遣されている。

 インドネシアの場合、青年教師は高校担当の地域派遣日本語教育専門家といえるような役割を担っている。その業務内容は多岐にわたり、派遣地域での主なものだけでも配属校勤務、州内全域におよぶ学校訪問、高校日本語教師会での指導、高校日本語教員研修への出講などがある。また、その他に普通高校や日本の実業高校にあたる専門高校のカリキュラムに準拠した教材の作成や各地域の指導者を養成するためのインストラクター研修への出講など全国レベルの支援活動にも関わっている。

派遣地域の紹介

 私の現在の居住地は首都ジャカルタから遠く離れたマナドという町である。インドネシアの骨格を形作っている大スンダ列島の東端にあたるスラウェシ島のほぼ最北端に位置する北スラウェシ州の州都である。特産物である香辛料の他、海が美しく、ダイビングのメッカとしても知られている。

 北スラウェシ州は、国民の大多数がイスラム教徒であるインドネシアの中で例外的にキリスト教徒が多数派を占めている地域でもある。そのため、マナド市内はもとより州内のいたるところに教会が建てられており、インドネシアの他の地域とは違った雰囲気が感じられる。

地域の日本語教育環境

 北スラウェシ州には古くから日本語学科を持つ大学(旧教育大学)があり、その大学の卒業生たちが中学・高校で教鞭をとっているため、現在州内40校以上の中等教育機関で日本語の授業が行われている。生徒たちの学習動機は様々だが、先進国日本へのあこがれや日本での労働に対する関心、ゲームソフトや漫画、アニメーションによる影響が大きいようである。

 マナド市内の学校にも一部みられるが、それ以外の郡部にある学校には電話線が通っていなかったり、教室の電気がつかなかったりすることがよくある。そのうえ大切な教具である黒板が古くなってひび割れているとか、チョークの粉がこびりついて真っ白になっていることすらある。教室内の温度は日常的に30度を超え、職員室にすら扇風機がないのが普通である。ひとたびスコールが降ると、雨音の激しさと室内の暗さは相当なものになるが、そうした環境下でも普段とかわらないペースで悠然と授業が進められている。

地域での活動

 北スラウェシ州の日本語教育の特徴として、高校日本語教師会の活動が盛んであることがあげられる。州全体の高校日本語教師を対象とした会合が月1回、マナド市内の高校日本語教師を対象としたものが月1回行われている。教師会は青年教師からの情報提供や教師間の情報交換の場であるとともに、日本語や教授法について学ぶ場でもある。現在のところ、各教師が順番に担当する模擬授業とその内容についての討議が活動の中心であり、その他に日本語によるスピーチや日本語クイズなども行われている。また、日本文化に対する関心も高いことから、勉強会の合間には日本の歌や盆踊りの紹介なども行っている。

今後に向けて

 現在、マナド市郊外にある郡部の高校教員や専門高校教員の間でも教師会設立の準備が進んでおり、州内の日本語教師を結ぶ大小様々なネットワークが形成されつつある。

 地域性を生かした教師(および関係/協力者)間ネットワークの形成と勉強会の活性化および内容の充実が今後の北スラウェシ州での日本語教育の自立化につながるものと期待しつつ、側面支援にいそしむ日々が続いている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 北スラウェシ州に初めて青年日本語教師が派遣されたのは1997年。現在、州内42校の高校で、インドネシア人日本語教師が日本語を教えている。青年教師は、配属校のマナド第8国立高校、カウディタン第1国立高校の3年生語学系日本語クラスで、インドネシア人日本語教師への技術移転を主眼に、日本語教育に関する指導を行っている。また、日本語勉強会を兼ねた高校日本語教師会(MGMP)の活動を支援し、地域の教師間のネットワークの構築を支援している。また、月に平均5回程度の学校訪問を行い、日本語教育全般に関する助言・指導を行うと同時に、生徒にネイティブスピーカーと話す機会を与え、日本語の学習動機を高めている。
ロ.派遣先機関名称 北スラウェシ州
ハ.国際交流基金派遣者数 青年教師:1名

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