世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 西ジャワ州青年日本語教師の業務

西ジャワ州地域派遣
藤島夕紀代

バンドン第15国立高校の写真
バンドン第15国立高校

 インドネシアでは日本語学習者数の約3分の2が中等教育機関で学ぶ高校生です。私の担当する西ジャワ州にも日本語教育実施高校は58校あり、日本語教師は77名います。西ジャワ州の特徴としては、3年生の選択必修科目として学ぶ語学系クラスが多いこと、そして、州都であるバンドン市に教育大学があり、西ジャワ州の日本語教師はほとんどがそこの卒業生であるため、教師のレベルが比較的高いことが挙げられます。

 インドネシアにおける青年日本語教師(以下、青年教師)の業務は多岐にわたっていますが、その中から主要な業務である配属校業務、学校訪問、高校日本語教師会支援、勉強会支援について述べてみようと思います。

配属校業務

 青年教師は配属校のインドネシア人高校日本語教師(以下、現地教師)に対して、授業の進め方を中心に日本語教育に関する指導を行うということが第一の業務となっています。配属校で青年教師は、単なるマンパワーとしてではなく、現地教師のアドヴァイザー(相談役)として、教授法の伝授を重点とした技術を移転することが期待されています。ですから、青年教師が単独で授業を行うことはなく、授業の際には必ず現地教師と一緒に教室に入ります。これは、一方が授業を行う際は、必ずもう一方がその授業を見学するという形をとることによって、お互いに意見交換をしながら、よりよい授業作りのために協力していくことを目指しているものです。また、生徒に対しては、ネイティブ・スピーカーの授業を受ける機会を与えることにより、興味や意欲を高める効果もあります。

 私は今年度、バンドン第15国立高校とバレエンダ第1国立高校に配属になり、両校で週に1回ずつ授業見学と授業実施をしています。どちらの高校の教師も、授業で使う教材を分析し、授業計画を立て、教案を書き、教具等を作成するという準備を、忙しい中、丁寧に時間をかけて行っています。また、年少の私のアドヴァイスを真摯に受け止めてくれる姿勢に、頭が下がる思いでいっぱいです。

学校訪問

授業の様子の写真
授業の様子

 派遣地域の高校を訪問し指導を行うということも、青年教師の主要な業務です。これは、学校訪問を通じて現地教師の抱えている問題に応えるとともに、日本語教育全般に関する助言・指導を行うものです。また、生徒にネイティブ・スピーカーと直接話す機会を与え、日本語学習に対する意欲を向上させる目的もあります。

 学校訪問では、現地教師の授業を見学した後で青年教師自身も授業を行い、教授上の問題点について話し合い、解決の糸口を探っています。また、どの地域のどの学校にどんな教師と生徒がいて、どんな日本語の授業が行われているかについて情報収集することも学校訪問の目的の1つです。

高校日本語教師会(MGMP)支援

 インドネシアには各州の教育省が認めた高校日本語教師会(MGMP)がありますが、この活動を支援することも大切な業務です。西ジャワ州では勉強会を兼ねた会議が2ヶ月に1回の割合で行われており、参加者はグループごとに教材分析、授業計画作成、教案作成、模擬授業などの活動を行っています。青年教師はこの教師会で講師役を務めますが、教授法についての指導の他に、現地教師の日本語力を高めるため、聞き取りや発音などについて講義をすることもあります。

 この教師会には遠くから参加する教師も多く、朝4時ぐらいに出発し、公共交通機関を乗り継いで5時間かけて参加する教師もいます。このように熱心な教師が少しでも多くのことを学べるようにとの思いで支援をしています。

勉強会支援

 勉強会は現地教師の希望により、2001年度から始められたもので、2002年度は追加科目(イントラクラス)や課外活動(エクストラクラス)として日本語を教えている教師向けの勉強会が6回、観光専門高校教師のための勉強会が3回行われました。そのどちらもバンドン市にて市内の教師を対象に実施されましたが、バンドン市以外に在住している地方の教師が、日本語力を高めたり教授法を学習する機会は非常に少ないのが現状です。来年度は他の地域でも勉強会を開き、地域全体のレベルアップにつなげたいと考えています。

今後の課題

 今年度の学校訪問は単発の形だったため、教師への指導が十分であったとは言い切れない面があります。来年度は教授法や授業の準備について講義・演習後(事前指導)、それぞれの高校で参加者が授業を行い(授業実施)、反省や改善する方法を一緒に考える(事後指導)という研修会を実施し、その一環として学校訪問を行いたいと考えています。これにより、現地教師にとっては学んだ理論を即座に実践でき、青年教師にとっては現場に即したより効率的な指導ができるという効果が期待されます。更に、拠点となる地域に近隣の教師が集まって共に学ぶことになるため、教師同士のネットワークの構築に役立つものと考えられます。

 また、今年度、青年教師の配属校は普通高校だけでしたが、来年度からは観光専門高校へも配属になります。観光専門高校では国家教育省とジャカルタ日本語センターが共同で作成した教科書を試用する予定になっていることから、観光専門高校への支援もより重要な位置を占めることになると思われます。

 最後に、青年教師の業務はアドヴァイザー的な業務がほとんどですが、青年教師が助言・指導するばかりでは、現地教師の本当の教授力向上にはつながらないこともあります。現地教師自身が自分の頭で考え、理解し、改善できるよう、その方法を一緒に考えていく活動を今後も心がけていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
青年日本語教師は配属高校のバンドン第15高校、バレエンダ第1高校の3年生語学系日本語クラスで、インドネシア人日本語教師への技術移転を主眼に、日本語教育に関する指導を行う。また、西ジャワ州高校日本語教師会(MGMP)に参加しアドヴァイス等を行う。更に西ジャワ州に散在する日本語教育実施高校を訪問して、教師のレベルアップを支援するため、助言・指導を行うとともに生徒にネイティヴと話す機会を与え、日本語学習に対する動機を高める。
ロ.派遣先機関名称 西ジャワ州
ハ.国際交流基金派遣者数 青年日本語教師1名

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