世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 派遣専門家の教育活動の2つの大きな柱 -学生に対する日本語教育と日本語教師に対する指導・サポート-

ガジャマダ大学/中部ジャワ州地域派遣
津留紀子

1. ジョグジャカルタ特別州・中部ジャワ州において期待される専門家の活動

サラティガ(Salatiga)地区日本語教師一日研修(グループ研修)の写真
サラティガ(Salatiga)地区
日本語教師一日研修(グループ研修)

 インドネシアの専門家は、所属先の大学で学生たちを教える講師としての顔と、配属大学を含む地域の高等教育機関の日本語教師の指導・サポートをする、アドバイザリー・ティチャーとしての顔の二つを持っています。

 日本語を学ぶ大学生たちを教えることは、ネイティブの特性を生かした質の高い中上級レベルの授業を提供する、コミュニケーションの必然性を与え、最新の日本事情を伝えることによって学生たちの学習意欲を高める、などの役割として期待されています。もう一つの大きな役割は、教授法を勉強しようとしている若手の先生方、さらに教授能力を高めたい改善したいと望んでいる先生方に対して、そのニーズにあったサポートをすることです。インドネシアでは、先生の日本語教授能力のレベル、さらには日本語能力のレベルもさまざまですので、おのずと勉強したい内容、レベルも多様です。そのような先生方が今必要としていることを拾い上げ、あるいは判断してあげて、細やかにサポートすることが求められていると私は考えています。

2. 将来教師になるかもしれない学生たちに新しい授業のイメージを体験してもらいたい

 日本語の能力はもちろん、日本語学習を通して精神的にも成長していく学生たちの姿を見守っていくことはこの仕事の大きな喜びです。
私が今、学生に対する授業でとくに心がけていることは、

  1. 1.潜在的に豊かな能力をもつガジャマダ大学の学生の能力を最大限に伸ばせるように、質の高い授業を提供する
  2. 2.将来日本語教師になる可能性が高いガジャマダ大学の学生たちに教え方のモデルになるような授業を体験させる

ということです。若い先生たちと接していく中で、先生たちは彼らが学生のとき受けてきた授業のしかたをモデルとして真似をしながら教え方を考えていることに気がつきました。つまり、いい授業を受けてきた学生たちは、将来それを受け継いでそれを土台に教え方を勉強していくわけです。ですから、多様ないい内容の授業を見せていくことは私の大切な役目だと考えます。

3. カウンターパートとの、お互いの長所を生かした共同授業

日本食パーティの写真
日本食パーティ

 アドバイザリー・ティチャーとしての業務はいくつかありますが、その仕事の核になっていると言えるのが、カウンターパートの養成です。

 私の場合は、中級文法、いわゆる「表現文型」を扱う科目で、一人のインドネシア人の先生と一緒に授業に入って、導入と応用の部分の役割分担をして授業を行っています。まず、授業の前にカウンターパートの先生は次の授業分の予習をしてきて、私と一緒に意味や教え方の勉強をします。授業では、それを基にして彼女は導入をし、私はサポート役に回ります。私は、学生が宿題で書いてきた部分作文の例文を添削し、授業ではそれを基に説明が足りなかったところや多くの学生が間違っていたところなどのフィードバックをします。授業後は短い反省会をします。このようにして、彼女が単独で授業ができるようになるように技術移転をしています。

 カウンターパートの先生は、初めは、私のカウンターパートとして勉強したいという気持ちをとくに持っていたわけではありませんでした。しかし、やっていくうちにだんだん予習や勉強に力が入ってきて、私のアドバイスに熱心に耳を傾けてくれ、今では私がこうしてくださいと言わなくても進んで先のことを考えてやってくれるようなりました。私は彼女が近い将来ガジャマダ大学の中だけでなく、近隣の大学の先生たちにも教えていけるようなリーダーになってくれるのではないかと期待しています。

4. プロフェッショナル・デベロップメントを目指す先生方へのサポート

 私はガジャマダ大学で一部の先生の教案指導、授業見学などをするほか、地域内の大学を訪問し、授業を見学したり、一緒に授業に参加したりしてたくさんの先生方に接します。そのような中から、希望の先生方については個別に授業指導をしたり、勉強会をしたり、グループ研修をしたりしています。最近は個別、あるいは小グループに対して、その先生たちのニーズに合わせて指導・サポートを行うという形が徐々に多くなっています。小さいグループによる研修や勉強会のいいところは、ニーズに合った指導ができること、また先生方にとっても気心の知れた仲間と緊張しないで模擬授業をしたり意見を交わしたりできることだと思います。

 最近私が教師サポートの仕事で気がついたことは、勉強したいという意欲に先生の年齢は関係ないということです。確かに、人間歳をとってくると習得速度は遅くなるかもしれませんが、その意欲の高さは必ずしも年齢とは関係ないということを何人かの先生たちが私に教えてくださいました。

 少人数であっても「勉強したいです、やりましょう」という先生がおられれば、これからもできるだけその意欲に応えられるように細やかな支援活動をしていきたいと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 ガジャマダ大学は、中部ジャワ地域においてS1(4年制)の日本語専攻プログラムを持つ唯一の大学として、当地域の日本語教育の中心的な役割を担っている。インドネシア日本語教育学会中部ジャワ支部の事務局も同学科におかれて、専門家が中心となって研究会を開催する。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地若手講師の育成の他、地域派遣専門家として周辺大学、各地域の勉強会の開催、コンサルティング業務を行う。
ロ.派遣先機関名称 国立ガジャマダ大学
Gadjah Mada University
ハ.所在地 Bulaksumur Yogyakarta, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
文学部 日本語日本文学プログラム
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1987年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1989年
(ロ)コース種別
専攻―S1(4年制)コース、D3(3年制)コース
(ハ)現地教授スタッフ
常勤6名(うち邦人0名。1名留学中)
非常勤7名(うち邦人2名。1名留学中)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   各学年約25名程度
(2) 学習の主な動機 留学、日系企業就職、日本文化への興味、日本語教育機関への就職、日本研究
(3) 卒業後の主な進路 日本語に関連のある企業、一般の企業、日本語教師など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度、
1級に合格する者2、3名
(5) 日本への留学人数 長期、短期各2、3名

ページトップへ戻る