世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 地方から全国へ発信 -東ジャワ-

スラバヤ国立大学/東ジャワ地域派遣
山門健二

漢字カップ開催

第1回漢字カップ 参加者の写真
第1回漢字カップ 参加者

 東ジャワ地域は、インドネシアの中でも特に日本語学習が盛んな地域の一つであるが、それを反映して様々なイベントや勉強会などが開かれるようになってきている。今回は10月6日に日本インドネシア文化センターにおいて開催された第1回漢字カップの様子を伝えたい。以下は、大会が終了時の報告者の挨拶である。

 「皆さん、問題は難しかったですか。でも、いつも学校でやる漢字の勉強とちがって、きょうはとても楽しそうでしたね。

 私は日本語の教師として、いろいろな国の人たちに日本語や漢字を教えてきましたが、生活の中で漢字を使っていないインドネシアの人にとって、漢字を覚えたり書いたりすることは、とても大変なことだと思っています。

 特に最初の頃は大変ですね。漢字が覚えられなくて、日本語の勉強が嫌いになる人もいます。大学では、今ちょうど1年生が漢字を勉強し始める頃ですね。2年生も難しい漢字が増えて困っている頃だと思います。1年生や2年生が皆さんに言うかもしれません。『漢字は難しい。漢字は嫌いだ。どうして漢字があるんだろう』って。

 そこで、皆さんにお願いがあります。ここにいる皆さんは漢字の面白さや楽しさ、それから大切さもよく知っていますね。ですから、ぜひ後輩たちに教えてほしいのです。『漢字は本当はおもしろいんだよ。漢字を知っていれば、言葉をたくさん覚えることもできるよ。それから、漢字カップっていうおもしろいイベントにも参加できるよ』って。そうすれば、きっと後輩たちも漢字に興味を持って、もっと楽しく日本語の勉強を続けることができると思います。

 このイベントは毎年開かれると思いますので、後輩たちと一緒にまた参加してくださいね。また、来年の漢字カップで会えることを楽しみにしています。」

 この大会は、スラバヤ総領事館、日本インドネシア文化交流センター(NICEセンター)、そして東部ジャワ日本言語文化研究会(ASBBJ)の共催で開催されたものである。

 当日は、ジョグジャカルタ市のガジャマダ大学をはじめとする招待チームを含めた20チームが予選に参加し、そのうちの8チームが決勝リーグに残り、競い合った。1チームは3人構成である。予選は、日本語能力試験の3級までの範囲の漢字を使った筆記試験で行われ、チーム3人の合計点で争われた。決勝リーグは、200人程度の観衆が見守る中、クイズ形式の問題で熱戦が繰り広げられた。

 問題の作成は、東部ジャワ日本言語文化研究会が作成したもので、早押し読み問題、ホワイトボードを使った書き問題、パネル式の選択問題、漢字についての常識問題、四字熟語など多岐にわたっており、観客をも飽きさせない内容となっていた。例えば次のような問題である。

  • この漢字は何と読みますか。 小雨 (カードを見せる)
  • この言葉は漢字を使ってどう書きますか。 くふう (紙に書かせる)
  • □に漢字を入れて四字熟語を完成してください。□苦□苦(紙に書かせる)
  • 漢字しりとりです。最初の漢字は「大学」です。大学→学生→ (1分でホワイト ボードにできるだけたくさん書かせる)
  • 漢字を書く順番のことを漢字2字で何と言いますか。(早く答える)
  • 音読みが「コウ」の漢字を1分でできるだけたくさん書いてください。(ボード)
  • 「てへん」を使った漢字を1分でできるだけたくさん書いてください。(ボード)
  • この漢字の総画数はいくつですか。 (早く答える)

第1回漢字カップ カップ授与の写真
第1回漢字カップ カップ授与

 熱戦が続く中、優勝チームは、スラバヤのドクターストモ大学Aチーム、準優勝はガジャマダ大学チームとなった。表彰式では優勝・準優勝チームには野村領事より、総領事杯が手渡された。この大会を開くに当たっては、スラバヤ在住の日本人日本語教師が総出で協力を行った。

 2003年度は、6月29日に第2回漢字カップを行うことが決定済みである。国際交流基金ジャカルタ日本文化センターの後援も決まり、さらに大きな大会になる予定である。特に、初級レベルと中級レベルとを分けて行うこと、ジャカルタ市とバンドン市からも招待チームが加わることになり、いよいよこの熱気が地方から全国へと広がる様相を見せ始めている。

機関誌の発行

 スラバヤ市内のいくつかの日本語教育機関で機関誌が生まれている。日本インドネシア文化交流センター(NICEセンター)の「あじさい」、東部ジャワ日本言語文化研究会(ASBBJ)の「ふれあい」、スラバヤ国立大学心の友クラブの「心の友ポス」などである。いずれも日本の文化や生活習慣の紹介、日本人へのインタビュー等内容に工夫が見られ、日本語学習者にとっては日本についての情報が得られるだけでなく、日本語の勉強にも役立つような構成になっている。東ジャワ地域の日本語教育の活性化の一つとして今後も注目していきたい。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
スラバヤ国立大学は、東ジャワ州において最初に日本語コースを設置した。日本語教師の養成を目的とし、日本語日本文化の学習に留まらず、教授法や具体的な授業の進め方を学び、2ヶ月間の教育実習でそれを実践する。東部ジャワ地域の中等教育レベルの日本語教師の殆どが当大学の卒業生。さらに大学レベルにおいても多くの卒業生が日本語教育に携わっており、この地域の日本語教育の普及と発展に大きな役割を果たしてきた。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。また、地域派遣専門家として、域内の日本語教育の底上げ、教師支援を行う。
ロ.派遣先機関名称 スラバヤ国立大学
National University of Surabaya
ハ.所在地 Lidah Wetan, Surabaya, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
言語芸術学部外国語外国文学科日本語プログラム
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1981年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1981年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤13名(うち邦人0名、留学中の者2名)、非常勤6名(うち邦人4名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年:92名、2年:50名、3年:48名、4年:38名
(2) 学習の主な動機 1)テレビからの情報(アニメやドラマ)で日本への興味
2) 日系企業就職
3) 奨学金や留学
(3) 卒業後の主な進路 大学・高等学校の日本語教師、総領事館、日系企業等
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級に合格できる学生は少ない
(5) 日本への留学人数 複数あり

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