世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) バリ州高校日本語教師指導

バリ州地域派遣
白頭宏美

学校訪問:授業の写真
学校訪問:授業

 インドネシアの青年日本語教師は、高校の日本語教育に携わっている。高校生に日本語を教えると共に、高校日本語教師への指導も重要な役割である。

 現在インドネシアの普通高校では、高校3年次に専攻が理科系、社会系、語学系と分かれ、語学系の生徒は必ず第2外国語〔ドイツ語、フランス語、日本語、アラビア語のうち1つ〕を週9コマ履修する。バリ州では日本語を選択する学校が一番多い。その他にも学校によっては語学系以外の専攻のクラスや1,2年生のクラス、課外活動のような形態(いずれも通常週2コマ)で日本語を学習している。また、普通高校のほかに職業専門高校もあるが、そのうち観光専門コースでも日本語が履修されている。このような普通高校や専門高校で日本語を教えている教師たちに指導を行っている。

 主な業務は以下の通り。

1.配属校勤務:
週に1度勤務し、隔週で授業を担当し、お互いの授業見学を通して現地日本語教師を指導する
2.学校訪問:
配属校勤務日以外の日はバリ州内の他の高校を巡回し、授業見学を通して教室活動の指導をする
3.教師会の支援:
定期的に行われる勉強会や研修会に参加し、講師を務めたり内容について助言をする

 上記は、報告者の受け入れ機関(ジャカルタ日本文化センター)から申し渡される業務内容だが、このほかに、各青年日本語教師は地域の実情を把握し、そこで必要とされている業務を行っている。

バリ州の高校日本語教育の特徴:
  1. (1)日本語プログラムがある高校の数が多い(2003年5月31日現在報告者の調査で94校)。
  2. (2)バリ州の教育大学に日本語課程がないため、ほとんどの高校日本語教師は本来は他教科が専門で、日本語は民間の日本語学校で3ヶ月~1年、あるいは独学で学習した程度。日本語の知識も教授法の知識も高校で日本語を教えるのに不十分な教師が多い。
  3. (3)高校日本語教師会の活動が以前から活発で、勉強会も盛んに行われているが、デンパサール(バリ州都)近辺の積極的な教師に参加が限られ、遠方の教師にはなかなか情報が伝わりにくい。また、教師会会長が一人で運営に携わっており負担が大きい。
  4. (4)普通高校の教師数が多いため、なかなか専門高校の教師指導まで行き届かない。

以上のことを踏まえて、2002/2003年度(7月~6月)は、以下の業務を行った。

4.小研修:
バリ州を5地域に分け、各地域を巡回する2日間の研修会を開催。教室活動についてのワークショップを行った。研修会では各地域のリーダー的存在の教師に講師役を依頼し、教師会会長と講義を分担。その後、研修内容のフォローアップとして学校訪問を行い、実際の授業を見学しあうことで、教授法の指導を行った。学校訪問は一地域を集中して巡回できるため効率よく多くの学校を訪問できた(62校)。
5.初級日本語勉強会:
日本語力が極端に不足している教師を対象に、日本語の初歩の初歩を扱った勉強会を毎月開催した。
6.専門高校教師勉強会:
専門高校で扱う日本語授業に関する勉強会を開催した。

 このほかにも、2002/2003年度は以下の業務も行った。

7.バリ州普通高校日本語教員研修:
インドネシア国家教育省語学教員研修所とジャカルタ日本文化センター共催の2週間の教員研修。ジャカルタ日本文化センターの派遣専門家、地域のインストラクター教師と共に、報告者も講師を務めた。
8.高校生弁論大会バリ州地方大会:
インドネシア国家教育省とジャカルタ日本文化センター共催。バリ州では高校日本語教師会が実施委員会となり、地方大会を開催。2名の入賞者がジャカルタの全国大会に参加。

スピーチコンテストの写真
スピーチコンテスト

 2002/2003年度に報告者が特に目標としたのは、地域のネットワーク構築と、リーダー育成である。これは将来、青年日本語教師がいなくても、現地教師が地域の教師をサポートする体勢を整えていくためである。また、これまでは高校日本語教師会の運営やジャカルタセンターとのやりとりなど、会長一人が担当していたため、その負担を軽減するためにも、他に指導的立場にたてる教師が必要であると感じたためでもある。その足がかりとして、小研修では、毎回各地域のリーダー格の教師に講師役を依頼し、準備から共に行った。講師役教師は以前から各地域で中心的な存在であったが、講師役をすることで教授法についての理解が深まり、また他の教師の問題点を把握し、他教師を自分がサポートしようという雰囲気が生まれた。また、各地域で勉強会を開こうという動きもあり、今後も活動が広がりそうである。

 2003/2004年度は、さらに教育省語学教員研修所とジャカルタセンター共催の通信教育や、2005年度施行予定の新シラバス作成委員の作業などがある。幸い、教師会には勉強熱心な先生が多く、青年日本語教師の業務にも協力的である。今後も、バリ州の地域リーダー教師らと共に活動することによって、バリ州全体の高校日本語教師のレベルアップをはかっていきたい。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 バリ州における青年日本語教師の派遣開始年は1996年。2002年度の青年教師は、2校の配属校の高校3年生語学系日本語クラスで、インドネシア人日本語教師への技術移転を主眼に、日本語教育に関する指導を行う。また、勉強会を兼ねた高校日本語教師会の活動に対する支援を行い、教師間のネットワーク構築の支援活動を行う。その他に、各地域を巡回する小研修を行い、教室活動に関するワークショップを実施。そのフィードバックとして学校訪問をし、教室活動に関する指導を行う。バリ州には教育大学に日本語課程がなく、高校日本語教師の多くは専門が日本語以外であり、初級日本語を対象とした日本語勉強会も開催している。
ロ.派遣先機関名称 バリ州
ハ.国際交流基金派遣者数 青年教師:1名

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