世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 中等教育レベルでの日本語教育支援 -インドネシア、北スラウェシ州の場合-(2003)

北スラウェシ州地域派遣
吹原 豊

派遣地域での業務の概要

北スラウェシ州での日本語教育の現場写真

 私はジャカルタから直行便でも3時間以上かかるマナドという地方都市を拠点にして、日本語教育支援業務に従事している。マナドはスラウェシ島最北部に位置する北スラウェシ州の州都であり、クローブやナツメグなどの香辛料の産地として、またインドネシアでは例外的にキリスト教徒が多い地域としても知られている。

 フィールドは高校での日本語教育である。実際に高校で教鞭をとるほか、離島部を含む州内全域におよぶ学校訪問、高校日本語教師会での指導、州内の高校日本語教師が受講する研修会への出講などを行っている。

地域の日本語教育の特徴

 派遣地域の特徴としては以下のようなものがあげられる。

1)州内全体に日本語開設校が広がっていること

 北スラウェシ州では、州内2市4県(うち2県はマナドからフィリピン方面に連なる離島部)すべてに日本語開設校が存在する。その数は約50校である。

 日本の実業高校に相当する専門高校での日本語開設も増加しており、観光関係の専攻に加えて、秘書業務や船舶業務専攻などでも新たに日本語クラス開設の動きがある。

2)高校日本語教師の背景

 州内の高校日本語教師のほぼ全員がマナド国立大学日本語プログラムの卒業生である。同大学が以前教育大学であったため、中等教育の教員の大半はその卒業生で占められている。学生時代に質の高い日本語教育を受けているとはいえず、よくできる教師でも日本語能力試験3級程度の実力である。幸い、ここ数年国際交流基金日本語国際センターでの研修機会を得て渡日する教師が多く、徐々にではあるがレベルアップが進んでいる。

3)教師間ネットワークの形成が比較的進んでいること

 北スラウェシ州の日本語教育の特徴として、高校日本語教師会の活動が盛んであることがあげられる。州全体の高校日本語教師を対象としたもののほか、専門高校の教師だけを対象とした会合も定期的に開催されている。教師会は青年日本語教師からの情報提供や教師間の情報交換の場であるとともに、日本語や教授法について学ぶ場でもある。現在のところ、各教師が順番に担当する模擬授業とその内容についての討議が活動の中心であり、その他に日本語によるスピーチや日本語のききとり練習なども行われている。また、日本文化に対する関心も高いことから、時折日本の歌や盆踊りなどの文化紹介も行っている。

 毎年行われている高校生日本語大会(弁論大会地方大会を含む)も、高校日本語教師会によって運営されており、当地の日本語教育ネットワークの要としての役割を担っている。

最近の動向と今後の課題

 州内の専門高校教員を対象とする教師会が2002年7月に立ち上げられた。10名に満たない会員数ではあるが、小所帯の強みを生かしたきめの細かい活動を目指して会員各自が意欲的に取り組んでいる。

 また、今年度から離島部を含む遠隔地の高校日本語教師などを対象とした通信教育プログラムが開始された。国際交流基金ジャカルタ日本文化センターとインドネシア国家教育省語学教員研修センターの共催によるものである。コースにはスクーリングも組み込まれており、私もインドネシア人日本語教師2名とともに講師役を務めている。

 今後の課題としては、教師の日本語および教授力の底上げ、教師の指導を担うインストラクターの養成、日本語能力試験のマナドでの開催などがあげられるが、いずれも現地の日本語教師と協力しながら地道に取り組んでいくことが必要であろう。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
北スラウェシ州に初めて青年日本語教師が派遣されたのは1997年。現在、州内約50の高校で、インドネシア人日本語教師が日本語を教えている。青年教師は、配属校のマナド第9国立高校、私立エベン・ハエザル・マナド高校の3年生語学系日本語クラスで、インドネシア人日本語教師への技術移転を主眼に、日本語教育に関する指導を行っている。また、日本語勉強会を兼ねた高校日本語教師会(MGMP)の活動を支援し、地域の教師間のネットワークの構築を支援している。また、州内全市全県への学校訪問を行い、日本語教育全般に関する助言・指導を行うと同時に、生徒にネイティブスピーカーと話す機会を与え、日本語の学習動機を高めている。
ロ.派遣先機関名称 北スラウェシ州
ハ.国際交流基金派遣者数 青年教師:1名

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