世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) バリ州の高校日本語教育

バリ州地域派遣
白頭宏美

バリ州の青年日本語教師に期待される役割

配属校での写真1
配属校での写真2
配属校

 バリ州では現在、89校の普通高校、2校の宗教高校、19校の専門高校で日本語が教えられています。バリは小さい島のように見えますが、普通高校は全体で約150校ありますので、その約半分で日本語が教えられていることになります。高校で教えいている日本語教師は95名です。

 青年日本語教師の役割は、これらの高校で教えている日本語の先生方のサポートです。

 バリ州高校日本語教師の特色は、

  • バリ州の教育大学に日本語学科がないので、高校日本語教師のほとんどは他に専門を持ち、教師になってから日本語を勉強して高校生に日本語を教えている。
  • 日本語は語学学校で数ヶ月~1年間、あるいは独学という先生も少なくないので、日本語レベルは低い教師が多い。
  • 他に専門があり日本語も教え始めた、あるいは、日本語ができるから非常勤で高校に雇われているという教師が多いので、やはり合わなくて日本語教師はやめるというものも多く、入れ替わりが激しい。
  • 過去の各種研修、これまでの青年日本語教師との関わりの成果があらわれ、地域のリーダー的存在の教師が複数育ってきている。

 このような状況の日本語の先生方の支援として、以下の業務を行っています。

配属校業務

 2003年度は、普通高校1校、専門高校1校が配属校となりました。どちらも週に1度ずつの勤務で、勤務日には配属校の現地教師と隔週で授業を担当し、お互いに授業見学をすることによって、授業改善を試みます。

 普通高校では、現在改訂中の新シラバス試用を試みました。そのため、地域でもベテランの教師の高校に入り、一緒に試用しながらシラバスの改訂点について話し合いました。

 専門高校では、新しく専門高校観光サービス業務用のテキスト試用版ができましたので、その試用をしました。1年かけて実際のクラスに入っての試用ができましたので、現地教師からもいろいろコメントがあり、授業の進め方についてもたくさん話し合うことができました。

教師会支援

 バリ州の高校日本語教師会は歴史が長く、89年からずっと活動しています。2003年度は、毎月開催され、参加教師による模擬授業が繰り広げられました。青年教師は、そのコメントをし、必要なときには授業の進め方について簡単に説明したりしています。また、教師会にはベテランの先生方もいるので、そのような先生方に説明をお願いするときもあります。バリ州の教師会の先生方は皆さん和気あいあいとしていて、新しい先生が参加しやすい雰囲気です。いつも楽しく活動しています。

 2003年度から専門高校の日本語教師会も発足しました。内容はやはり模擬授業で、青年教師はそのコメントと、教えるのに少し難しい文法項目などがある場合にはその解説をしています。

小研修

 2003年度は2回の小研修を行いました。小研修とは、2日~3日間で行う、地域の先生方を集めての授業の進め方・教室活動についての短期研修会で、高校教師会と青年教師が協力して開催しています。講師は青年教師と、それぞれの地域で中心的役割を果たしているベテラン教師と分担して行いました。遠隔地で普段教師会に参加できない地域では、先生方は情報を得る機会が本当に少なく、このような小研修で一緒に教授法について勉強できるのは貴重な機会です。前年度は5回に分けてバリ州全土を巡回しましたが、今年度は遠い地方にのみ的を絞って2回実施しました。

学校訪問

 小研修を行ったあとに、学校訪問を行っています。学校訪問では、現地教師と授業を半分ずつ担当し、お互いに授業見学をします。その際に小研修で扱った内容が実践されているかチェックします。理論と実践はもちろん異なる部分もあるので、実際に教室で先生方がどのような点に困っているか話し合ういいきっかけにもなっています。

 学校訪問は、小研修に参加した先生だけでなく、今年度新規に日本語クラスが開かれた学校や、今年度新しく日本語を教え始めた先生の学校へも訪問しました。

 この他にも以下のような業務を行なっています。

新シラバス教材開発委員会

 2004年度からのカリキュラム改定に伴い、日本語も新しいシラバスができました。そのシラバスに沿って現在テキストを作成中です。このプロジェクトは教育省とジャカルタ日本文化センターの共催プロジェクトで、中央のジャカルタだけでなく、青年教師が配属されている各地域でもチームを組んで作成に加わっています。バリでは6名のベテラン教師が毎月1~2回集まって教材作成について活発に意見を交換しています。

通信教育

 2002年度に北スラウェシ州で試みられた通信教育プログラムが、2003年度からバリでも始まりました。対象は日本語能力試験4級に届かないと思われる先生方です。バリは日本語をきちんと勉強した先生が少ないので、このような先生方も大勢います。2003年度までは教育省語学教員研修所とジャカルタ日本文化センターの共催プログラムでしたが、2004年度は教育省の通信教育センターとの共催プログラムになります。

基礎研修

 語学教員研修所とジャカルタ日本文化センター共催の、普通高校教員研修会が、2003年度はバリでも開催されました。青年教師は一部講師を担当します。

勉強会

 先生方から要望があれば、地域の先生を集めて日本語の勉強会を行います。3級勉強会、2級勉強会などがあります。

今後の課題

 バリの高校日本語教師の皆さんは、とても熱心な方が多く、いろいろなプログラムに意欲的です。年を追うごとにプログラムが多種多様化してきて、青年教師一人の力ではなかなか大変になってきました。そこで地域のリーダー格の日本語の先生方をできるだけ巻き込んで、一緒に作業をすることで段々と現地の先生にいろいろ任せることができるようになってきました。今後も引き続き、指導者育成とネットワーク形成のサポートをしていくことが課題です。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
バリ州における青年日本語教師の派遣開始年は1996年。2003年度の青年教師は、2校の配属校:普通高校3年生語学系日本語クラスと、専門高校観光専門コースの日本語クラスで、インドネシア人日本語教師への技術移転を主眼に、日本語教育に関する指導を行う。また、勉強会を兼ねた高校日本語教師会の活動に対する支援を行い、教師間のネットワーク構築の支援活動を行う。その他に、各地域を巡回する小研修を行い、教室活動に関するワークショップを実施。そのフィードバックとして学校訪問をし、教室活動に関する指導を行う。バリ州には教育大学に日本語課程がなく、高校日本語教師の多くは専門が日本語以外であり、日本語学習を目的とした日本語勉強会も開催している。
ロ.派遣先機関名称 バリ州
ハ.国際交流基金派遣者数 青年教師:1名

ページトップへ戻る