世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) スマトラ地区における日本語教育ネットワークについて

北スマトラ大学派遣日本語教育専門家
松本剛次

みなさん、こんにちは! インドネシアはメダンにある北スマトラ大学に派遣されている松本剛次と申します。こちらでは、通常の大学での授業に加え、北スマトラ地区、西スマトラ地区(スマトラ島は日本よりちょっと大きいくらいの島で、北スマトラが「関東」西スマトラが「関西」みたいなイメージでお考えください。それぞれメダン・パダンという都市が中心になっています)での高等教育支援と中等教育支援を担当しています(中等教育支援は北スマトラのみ)。今回は特に「日本語教育ネットワーク作り」という観点から、地域支援の話を中心に私の活動を紹介したいと思います。 

1.日本語教育学会スマトラ支部

スマトラ島での日本語教育の現場写真1
スマトラ島での日本語教育の現場写真2

 スマトラ地区にはすでに「インドネシア日本語教育学会スマトラ支部」という日本語教師の集まりができています。しかし、形はあっても実際にはなかなか機能しないので、それを動かしていくこと(私が動かすのではなく、あくまで現地教師自身の手で動かしてもらうこと)が必要です。先日(2004年5月8日)にはその学会主催で「日本語教育一日セミナー」が開催されました。北スマトラはメダンで開催されたのですが、西スマトラからも多くの先生に来ていただきました。現地の大学の日本語の先生や私の発表に加え、中等教育機関の代表や在メダン総領事館の方からの発表もあり、また質疑応答では民間日本語学校の先生たちからの積極的な発言も多く、縦横に渡るスマトラにおける日本語教育の広がりを確認させる内容のものとなりました。次回は西スマトラ地区での開催を予定しています。このようなセミナーやワークショップが現地の先生たち自身の手で定期的に開催されていくことになればまずは成功といえるでしょう。

 また、この日本語教育学会スマトラ支部では会員の方々を対象にしたニュースレターの発行というものを今年度から開始しました。ネットワークを通しての情報交換というのがその目的です。さらにはこの学会からの依頼で私が講師役を担当するという形で「会話を中心とした日本事情クラス」や「日本語能力試験2級対策クラス」というものも、今のところ北スマトラ地区の先生たちが対象ですが、定期的に実施しています。西スマトラ地区へは3ヶ月に一回のペースで私が出張し、これも学会主催という形で勉強会を開催しています。

2.高校日本語教師会(MGMP)

 インドネシアには高校日本語教師会(MGMPと呼ばれています)の全国組織があり、主要な地方都市にはその支部がおかれています。インドネシアに来ている青年日本語教師の方々はそのネットワークを利用し活動を行っています。北スマトラにも数年前までは青年教師の方が来ていたのですが、他地域派遣に変わり、現在では専門家である私が兼任して引き継いでいるという形です。

 スマトラではメダンとパダンでこのMGMPが結成されており、高校の日本語の先生たちのネットワークとして機能しています。特にメダンのMGMPは毎月定期的に勉強会を開催しており、そこでは先生方がお互いにアドバイスをしあう、という活動がほぼ自主的な形で行われています。パダンのMGMPの活動はまだそこまでは至ってはいない感じですが、熱心な先生方も多く、これからが期待できます。私としてはメダンのMGMPの活動は引き続き見守りながら、パダンのMGMPの活動については活動がより活発化するようにジャカルタセンターと連絡を取り合いながら現地での研修などを企画していくことが今後の課題と考えています。

3.その他

 その他、メダン地区では民間の日本語学校の先生方を中心としたPPBJMという集まりが結成されており、月一回のペースで勉強会を開催しています。また、西スマトラにあるブキティンギという町でも独自の日本語の先生たちのネットワークが形成されているそうです。メダンのPPBJMでは私も毎回講師役を依頼され、現地の先生方への日本語の指導と日本語教授法の指導を行っています。

4.今後の課題

 このように、スマトラでは日本語教育学会スマトラ支部を一番大きなネットワークとしながらも、地域別、教育機関別にまたさまざまな小さなネットワークが形成されて、それぞれ活発に活動を行っています。今後の課題としては、まず、それぞれのネットワークのネットワーク内、あるいはネットワーク間の結びつきをさらに強めていくことが挙げられるでしょう。また、これはこの次のレベルでの課題でしょうか、将来的にはこの日本語教師のネットワークに日本人会などの日本人のネットワークや学生会などの日本語学習者のネットワークもうまく絡めていきたいと考えています。

 しかし、繰り返しになりますが、このようなネットワーク作りの中心はあくまで現地にいる日本語の先生たちです。私はサポーターとして、側面からアドバイスや支援ができるだけです。こちら側からの押し付けにならず、自主的に自律的にこれらのネットワークが育っていくにはどうしたらいいか、それを日々考えているところです。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
北スマトラ大学は、日本文学・日本語学科を有するスマトラ島内唯一の国立大学で、同学科は日本語教育学会スマトラ支部の事務局を担当し、日本語能力試験の実施機関に指定されている。専門家は同大学において日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。また、地域派遣専門家として教師支援を中心とした域内(西スマトラ地区を含む)の日本語教育支援を行う。具体的には域内の日本語教育ネットワーク形成・強化への支援、勉強会・セミナーでの講師役、セミナー開催の企画・実施への協力、高校日本語教師会およびメダン日本語学校教師会への支援などの業務がある。
ロ.派遣先機関名称 北スマトラ大学
North Sumatera University
ハ.所在地 Jl. Universitas No.19, Kampus USU Medan 20155, Sumatera Utara
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
文学部日本文学科・日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   4年制学位プログラム(日本文学科)は2000年開講
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1988年
(ロ)コース種別
日本文学科、 エクステンションコース、日本語学科(3年制)
(ハ)現地教授スタッフ
常勤7名、非常勤5名、アシスタント2名、ボランティア(在留邦人)1名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   日本文学科:182名 日本語学科:274名
(2) 学習の主な動機 学士の取得、日本文化・日本語の研究、日系企業に就職、日本への興味・関心
(3) 卒業後の主な進路 日系企業への就職、高校、大学の日本語教師、日本語ガイド
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本文学科:中級後半
日本語学科:中級前半終了程度
(5) 日本への留学人数 過去5名

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