世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ジャカルタ日本文化センターの日本語教育支援(2005)

ジャカルタ日本文化センターの日本語教育支援

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター
古川嘉子、山下美紀、渡辺由美

インドネシア各地のジュニア専門家、専門家との写真
インドネシア各地のジュニア専門家、専門家と

 ジャカルタ日本文化センター(センター)には、3人の日本語教育専門家と2人のインドネシア人専任任講師が勤務し、インドネシアの日本語教育支援業務に携わっている。センターの主な業務は、インドネシアの中等教育支援とジャカルタを中心とする首都圏地区(ジャボタベック地区)支援に分かれる。

センターの中等教育支援

 インドネシアの日本語学習者の3分の2は高校生。これは日本語が高校の第二外国語のひとつになっているためだが、このように大規模な対象に対して、インドネシアの公教育の枠組みの中でどうやって支援をすれば効果的かを考えていく必要がある。センターでは、関係機関、関係者、教師との連携を図りながら、次の4つを中等教育支援業務の柱としている。

カリキュラム開発への協力

 日本語の学習内容は他科目と同様、教育省が決めるカリキュラムによって定められる。カリキュラムは10年に1回程度改訂され、普通高校(宗教高校)でも、専門高校でも、2004年から新カリキュラムが導入されている。カリキュラム改訂は、全国の高校の学習目的、内容、方法を決める重要な作業であるが、センターは、国家教育省の依頼を受け、日本語カリキュラムの改訂作業に協力した。

シラバス・教材開発プロジェクトの実施

 センターでは、国家教育省との協同プロジェクトとして、専門高校、普通高校用の日本語教材の開発を行ってきた。2005年3月には、専門高校の日本語教材『インドネシアへようこそ』が完成。普通高校の教材は2005年に11年生用教材の試用版が完成し、1年間の試用を行う。同時に12年生用教材を、センターの専門家と専任講師、インドネシアの各地域にいるジュニア専門家、そして現場の高校教師の協働作業で作成していく。

教授法研修としての教師研修

インドネシアの普通高校用教材作成会議の写真
インドネシアの普通高校用教材作成会議

 インドネシアの教師は、教師の教授法に対する知識と経験が不足している場合が多い。教師研修(基礎研修)の目的は、そのような教師に、日本語カリキュラムに取り入れられている「コミュニケーションを目標とした授業」の流れを知り、授業計画を立て、実践できるようになってもらうことである。通常、1回2週間、年に2~3回程度実施される。研修も教育省との共催プログラムで、研修には、センターの専門家以外に、教育省の指導講師、インドネシア人インストラクター、ジュニア専門家などが出講する。さらに、将来他の教師を指導するリーダーを養成するための継続研修も2005年に行った。

日本語力向上のための通信教育

 高校教師のバックグラウンドは様々で、技術研修生として日本へ行ったことがある、少し日本語を勉強したことがあるという理由で日本語を教えている教師も少なくない。高校の日本語教師として、理想的には初級を教えられる程度の日本語力を持ってほしいが、現実にはそれ以下の教師もいる。インドネシアの首都圏以外の地域にいるそのような教師を支援することを目的として、センターでは、通信による日本語コースの試行を2002年度から始め、2004年度は教育省 (通信教育センター)の正式の教師研修プログラムとしてスタートを切った。現在のところ、運営面などで様々な問題も見られるが、2005年度に行われる継続的な内容のコースに対して、センターでは教材を作成し、支援を行う。(古川)

地域支援業務

 ジャカルタ日本文化センターでは、ジャボデタベック地区(ジャカルタと近郊4市=以下JBK)の高等教育、主に大学教員向けに、さまざまな形での支援をおこなっている。現在この地区の教師の最も大きな悩みは「中級は何(教材)を、どのように教えれば良いか」である。「中級」といっても広範で、教材も教授法も多様だが、まずJBK地区の教師が自信をもって教鞭をとるためには、日本語知識の拡充が必須である。そこで、今年度から新しく立ち上げたのが「中級日本語研修」である。日本語能力試験3級程度以上の教師を対象に、日本語力のブラッシュアップを目指す研修である。週1回2時間の研修には、20数名の教師が集い、和気藹々と学習に励む。初中級の文型・表現の復習、長文読解理解と併せて教授法(短文作成の方法、読解タスクの進め方など)のヒントも提示していく。

 特定の機関に直接支援するものではない側面支援だからこそ、参加する一人一人の教師にとって、「今日持ち帰ったものが明日から自分の機関ですぐ役立つ」と感じられる研修を提供したいと考える。(渡辺)

日本語学習者に対する直接支援

 ジャボタベック地域には多くの民間日本語学校や大学等の日本語コースがあり、また日系企業も多いことから、インドネシアの他地域に比べ日本語を勉強する環境に恵まれている。しかし、中級以上の日本語を学べる機関は限られている。ジャカルタ日本語センターでは、中・上級者を対象に一般日本語講座を開講している。クラスは中級1クラス、上級2クラスで学生数は約80名、一回90分の授業が週2日ある。学習者は大学生、会社員、主婦、高校や民間日本語学校の日本語教師などである。各クラスの授業では受身的な勉強のしかたではなく、これまでに学んだことを積極的に使う場として授業に参加するように指導している。そのため講座では「理解・発信・交流」をモットーに、グループ発表やクラスでの意見交換などを取り入れている。どのクラスも雰囲気がよく、学生は皆仲良く熱心に勉強しており、グループ作業のときも日本語で話し、冗談が飛び交うような場面も見られるほどだ。上のクラスへの進級希望者も多い。(山下)

ジャボタベック地域におけるジュニア専門家の活動

ジャカルタ日本文化センター(ジャカルタおよび周辺地域)
森本 由佳子

 インドネシア派遣ジュニア専門家の活動は多岐にわたっています。ここジャボタベック地域でも、配属校勤務、学校訪問、教師会支援などのさまざまな業務をとおして現地教師の支援を行っています。

配属校勤務、学校訪問

配属校の様子の写真
配属校の様子

 ジュニア専門家(以下JJLE)は、1つまたは2つの高校に配属され、週1回ずつ1年間勤務します。マンパワーとしてではなく、教師支援が目的で配属されているため、必ずカウンターパートである現地教師と一緒にクラスに入り、1週間交代で授業見学と授業実施をします。

 2004年度、筆者は宗教高校に配属されました。これまで普通高校にしか配属されたことがないので宗教高校はどんなところだろうと思っていましたが、女性の先生や女生徒が全員ジルバブ(頭に巻くスカーフ)を着用しているほかには普通高校と違うところは特にありませんでした。各教科のカリキュラムも普通高校と同じです。

 筆者の授業担当時には、現地教師が参考にして取り入れられるような授業をするよう心がけています。逆に、現地教師の授業を見学することによっていろいろなアイディアをもらうことも多々あります。授業の前後には毎回ディスカッションの時間を設け、授業計画を立てたり、より良い授業になるよう話し合ったりしています。

 配属校勤務や教師会活動などがないときは、地域の学校を訪問して授業を見学し、授業についてディスカッションしたりアドバイスしたりしています。

教師会支援

(1)普通/宗教高校日本語教師会

現地教師の授業の写真
現地教師の授業

 インドネシア各州には教育省に認可された教科別の教師会があり、日本語の盛んな州には日本語教師会があります。ジャボタベック地域でも教師会活動を毎月1回開催し、情報交換、模擬授業、日本語の勉強などを行っています。模擬授業では毎回活発に意見交換がされています。JJLEは講師やアドバイザーとして教師会活動を支援しています。2004年度も前年度に引き続き教師会主催「高校生日本文化祭」が開催され、弁論大会、書道大会、カラオケ大会が実施されました。

(2)専門高校日本語教師会

 専門高校のほうにも日本語教師会があり、毎月1回活動しています。内容はおもに情報交換と模擬授業です。2003年度は教師会主催「高校生日本語ロールプレイ大会」が行われましたが、2004度はロールプレイのほかにクイズ大会、カラオケ大会を含む「日本文化祭」が開かれ、先生たちはその準備に大忙しでした。しかし一つの行事をやり遂げたことで、会としての結束は強まったようです。

ジャカルタ日本文化センタープログラムへの協力

(1)教員研修

 ジャカルタセンターと教育省の共催で1年に2~3回、2週間の基礎研修が行われています。毎回開催地域は変わります。これとは別に、2004年度は基礎研修の一段階上の継続研修が行われ、基礎研修で良い成績をおさめ地域のリーダーになることが期待される教師が全国から集まりました。ジャボタベックJJLEも講師として出講しました。研修者は皆積極的に授業に参加し、筆者にとっても勉強になる点が多い研修でした。

(2)教材作成プロジェクト

 普通/宗教高校の新カリキュラムへの移行をうけ、2003年度から「新シラバス・教材作成プロジェクト」が5年計画で始まりました。新カリキュラムでは高校2年生から2年間日本語を学ぶことになります。このプロジェクトでは、JJLEが派遣されている6地域で各地域5名程度が地域委員となっています。JJLEも地域委員の一人として先生方とともに地域会議を開き、高校2年生用の教材を作成しました。また、年に2回、6地域の委員がジャカルタに集まって、地域会議の結果を検討する全体会議も開きました。この教材は2005年度1年間教材作成委員の学校で試用していく予定です。

 専門高校のほうも、2004年度は教材作成プロジェクトの最終段階でした。このプロジェクトではジャボタベック地域の専門高校の教師が教材作成委員となり、ジャボタベックJJLEもその一員として、先生方やセンター派遣専門家と一緒に教材を完成させました。

ジャカルタ日本文化センターでの仕事

 ジャボタベックJJLEは、上記の地域業務以外にも、高校生弁論大会全国大会などのジャカルタセンター主催行事や、ジャカルタセンター発行ニューズレター「EGAO」の作成に協力しています。

 2004年度は教師会のほかにもいろいろなプロジェクトがあり、先生方と密に接する機会が多くありました。そこで築かれた信頼関係を大切に、今後も地域支援活動に取り組んでいきたいと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
国際交流基金ジャカルタ日本文化センターは、インドネシア各地に派遣されている専門家、ジュニア専門家、及びインドネシアの各機関と連携をとりながら、インドネシアの日本語教育支援をおこなっている。中等教育においては、国家教育省と協力し、カリキュラム・シラバスの開発、教材開発、教師研修会を実施している。高等教育、民間の日本語教育に対しては、教師研修やセミナーを実施する他、定期的に主要大学を訪問し、カリキュラム変更や教材分析のサポート他、コンサルティングを行っている。また、中・上級者向け一般日本語講座を運営している。 四半期に一度、ニューズレター『EGAO』を発行している。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 Lantai 2-3, Summitmas I, Jl.Jend.Sudirman Kav. 61-62, Jakarta 12190, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家3名、ジュニア専門家1名

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