世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) インドネシア教育大学―“バンドン会議”の町から

西ジャワ州派遣 インドネシア教育大学
森西志保子

 みなさんはバンドンという地名を聞いて何を連想されますか。「そういえば昔、”バンドン会議”っていうの、習ったような気がするけど・・・」人によっていろんな反応があると思いますが、バンドンは、1955年、“バンドン会議”(第一回のアジア・アフリカ会議)が開催されたことで知られています。五十周年にあたる今年4月には、百を超える国の首脳がこの地に集い、記念行事が盛大に行われました。

 バンドンはまた、Kota Bunga(花の町)とも呼ばれています。高地に位置することから、気候が涼しく、多くの教育機関が集まっています。現在、日本語専攻学科を持つ大学は七つありますが、私はそのうちのひとつ、インドネシア教育大学に派遣されています。今回は、このインドネシア教育大学のことについてお話ししたいと思います。

インドネシア教育大学

特色

 インドネシア教育大学は、インドネシアの旧教育系国立大学の多くが総合大学に移行する中、唯一名称に教育という文字を残している大学です。日本語学科(学部/修士課程)も文学や語学専攻ではなく、日本語教育が専攻です。1965年の講座創立以来、中等教育、高等教育を問わず、インドネシア各地に多くの日本語教師を送り出してきました。

建物

 学部学科のある建物は、その形から通称ペンタゴンと呼ばれています。ペンタゴンと聞くと、どこかの国の現代的な建物を思い浮かべるかもしれませんが、かの建物とは似ても似つきません。外見もさることながら、内部は床や階段のタイルが剥げ落ち、教室は天井の電気がすべて外され、また雨季には雨漏りがするという状態です。

 もっとも、学生はそうした学習環境にもめげず、真剣に日本語を勉強しています。

学生

インドネシア教育大学の学生・・ペンタゴンでの写真
インドネシア教育大学の学生・・ペンタゴンにて

 インドネシア教育大学の学生は、一見地味でおとなしい印象ですが、実はそうではない、というのが、この二年間学生と接してきた私の実感です。たとえば、学生は、作文やスピーチという自己開示型の活動が非常に好きです。先日も、四年生のクラスでディベィトをしましたが、一時間半という長い時間、インドネシア語を一切使わず日本語だけで白熱した議論を展開しました。ちなみに、この時は、学生のスピーチの中に出てきた疑問をテーマとして取り上げました。「学歴は結婚の条件として必要か」言い換えれば、「結婚するとき、相手の学歴を問うかどうか」というものです。ディベィトを通して、就職や進学といった身近な問題から、階層や貧富の差といった社会問題まで、さまざまな「インドネシアの今」が浮かび上がりました。みなさんは、どんな結果を予想されますか。

 もちろん、個人差もあり、また批判や要求をはっきり口に出すという文化ではありませんが、私は、彼らの現実を真っ直ぐに捉えようとする姿勢とその背景を批判的に考えることができる力に感動しました。みなさんにもご一緒に聞いていただきたかったほどです。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
当該日本語講座は1965年に創設された。インドネシアの高等教育機関の中では、バンドン市近郊にあるパジャジャラン大学(UNPAD) の日本語講座に次ぐ伝統のある大学である。高校の日本語教師養成を当講座の目標に掲げていることでも分かるように、西ジャワ州の高校の日本語教師の大半が当講座の出身者である。また、スラバヤ国立大学、マナド国立大学など、高等教育機関にも多くの人材を輩出しており、インドネシアにおける日本語教育の中心的・指導的存在の一つといえる。2001年度には、インドネシア初の日本語教育専攻修士課程が大学院に開設された。現在、在籍者の三分の二を現職の教師が占めている。
ロ.派遣先機関名称 インドネシア教育大学(Indonesia University of Education)
Universitas Pendidikan Indonesia (略称UPI)
ハ.所在地 Jl.Dr.Setiabudhi No.229 Bandung 40154 Jawa Barat Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 現在 1名 (派遣開始以来、報告者で11人目である)
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
言語芸術教育学部外国語教育学科日本語教育プログラム
Program Pendidikan Bahasa Jepang
Jursan Pendidikan Bahasa Asing
Fakultas Pendidikan Bahasa dan Seni
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1965年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1979年
(ロ)コース種別
日本語教育専攻(学部) 日本語教育専攻(修士課程)
(ハ)現地教授スタッフ
常勤16名 (内留学中 1名) 、非常勤 1名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳  
学生総数  289 (学部)
39 (修士課程)
(2) 学習の主な動機 「先進国日本」というイメージから、日本語を学び、将来に活かしたいと考えている者が多い。教師を志望する学生も少なくないが、職業として成立しにくい状況である。
(3) 卒業後の主な進路 一般企業の日本語教師
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
在学中に2級に合格する者も数名いるが(昨年度5名)、平均すると2級と3級の間。
(5) 日本への留学人数 2005年度 4名(うち日研生2名)

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