世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) バリ州におけるジュニア専門家の役割

バリ州中等教育機関
増井 優子

デンパサール外国語コンテスト日本語部門の写真
デンパサール外国語コンテスト日本語部門

 インドネシアのジュニア専門家は、高校の日本語教育に携わっています。高校といっても主な業務は高校生に日本語を教えることではなく、インドネシア人日本語教師への技術移転です。バリはインドネシアでは小さな島ですが、日本語が教えられている高校は州に現在120校あり、日本語教師も90名ほどいます。普通高校の語学系クラスでは、2年次から第2外国語(ドイツ語・フランス語・アラビア語・日本語のうち1つ)を履修することになっていますが、日本語を選択する学校・生徒は一番多く、また語学系以外の専攻のクラスでも課外授業のような形態で日本語が教えられています。今年度からは普通高校で新カリキュラムの導入が本格的に始まりました。また、普通高校以外に職業専門高校もありますが、その中で観光業務専攻コースやホテル業務専攻コースで日本語が履修されています。これらの学校で日本語を教えている教師たちのサポートがジュニア専門家の役割です。

 バリ州の高校日本語教師の特色として、以下のことが挙げられます。

  • バリ州の教育大学に日本語学科がないため、教師のほとんどは他教科を専門に持ち、独学で日本語を勉強して高校で教えるようになった。
  • 日本語を専門的に勉強していないため、日本語レベルが低い教師が多い。
  • 日本語を開講したい学校は年々増え続けているが、教師の数が追いつかない。
  • 他教科との掛け持ちや複数校で兼務する非常勤講師が多いため、教師の入れ替わりが激しい。

 このような状況の中、現地教師の支援として、2004年度は以下の業務を行ないました。

バリ州の高校日本語教師の写真
バリ州の高校日本語教師

1.配属校勤務
 2004年度は普通高校1校、専門高校1校に週1回ずつ勤務し、現地の日本語担当教諭と協力しながらより良い授業作りに取り組みました。普通高校では、新シラバスを試用するため、地域でも優秀な教師の学校に入り、毎週話し合いをしながらシラバス改訂や新しいテキストの執筆に役立てていきました。また専門高校では、観光業務専攻コースの新カリキュラムに沿ったテキスト試用版を用いて授業を行ない、新教材の定着を図りました。
2.教師会支援
 バリ州の高校日本語教師会は89年に発足してから活発に活動が続けられてきました。2004年度は毎月開催され、教材作成委員による新シラバスの説明の後、教材や授業の進め方などについて討議や質疑応答が行なわれました。ジュニア専門家はそれについてコメントをしたり、教えるのが複雑な文法項目の解説をしたりしています。また、今年度はバリ州全体の日本語教師会のほかに、北部のブレレン県と、西部のジュンブラナ県でも地方の日本語教師会が発足し、いずれも月1回開かれています。地方のリーダー格の教師が中心となって運営されており、ジュニア専門家もオブザーバーとして参加しています。
3.学校訪問
 教育省語学教員研修所とジャカルタ日本文化センター共催の教員研修を終えた教師のフォローアップとして、学校訪問を行なっています。研修で扱われた内容が実践できているかをチェックし、またジュニア専門家もモデル授業を行なって、教師たちが教室で困難に感じていることや疑問点について話し合っています。また、新任教師や今後リーダーとなり得る教師が勤務する学校も訪れ、教授法指導や授業のアドバイスを行なっています。
4.新カリキュラム準拠教材開発プロジェクト
 カリキュラムの改訂に伴い作成された新シラバスに沿って、現在教材を作成中です。これは教育省とジャカルタ日本文化センターの共催プロジェクトで、中央のジャカルタだけでなく、ジュニア専門家が派遣されている各地域でも優秀な教師を集めて教材作成チームを組み、作成に加わっています。バリ州でも6名のベテラン教師が毎月集まり、教材の担当箇所の執筆について活発に意見交換をしています。
5.勉強会
 教師から要望があれば、ジュニア専門家が出講し、地域ごとに教師を集めて日本語の勉強会を行います。3級勉強会、4級勉強会、日本語能力試験技能別勉強会などを行なっています。
6.通信教育
 教育省通信教育センターとジャカルタ日本文化センターの共催の通信日本語教員研修が、今年度は西ジャワ州とバリ州で行なわれています。バリ州には日本語を専門的に勉強した教師が少ないため、高校で教える4級レベルの内容もきちんと把握できない教師が大勢います。そのような教師の4級到達、また4級復習を目標としたプログラムが実施されています。バリ州から比較的優秀な教師が4名チューターとして選ばれ、受講生の指導をしています。ジュニア専門家は教材やチュートリアルの内容、試験実施などに関してチューターをサポートしています。

 バリ州の先生方は非常に明るく、熱心で様々な活動に積極的です。研修プログラムや教材試用など毎年プログラムが多様化してきているため、ジュニア専門家1人の力では手に負えなくなっています。しかし、教材作成委員や通信教育のチューターを任せることによって、教師たちも少しずつ実力をつけ、リーダーとしての自覚も出てきました。日本語専門の教師が少なく数も不足していることや入れ替わりが激しいという厳しい状況はずっと続いていますが、過去のジュニア専門家(青年日本語教師)の派遣やジャカルタセンター主催の研修等の成果があらわれ、現地化・自立化に向けて少し明るい兆しも見えてきました。今後はリーダー教師を支えられる若手の副リーダー(次の世代のリーダー)の育成と、地方の教師会のさらなるサポートが必要だと感じています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
バリ州におけるジュニア専門家の派遣開始年は1996年。2004年度のジュニア専門家は2校の配属校(普通高校語学系クラス・専門高校観光業務専攻コース)に勤務し、インドネシア人日本語教師への技術移転を主眼に日本語指導に関するアドバイスを行う。また、各地方の学校訪問や教師会、勉強会などを通してバリ州の教師をサポートする。
ロ.派遣先機関名称 国際交流基金ジャカルタ日本文化センター
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 Jakarta, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家: 1名

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