世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 中等教育機関への日本語教育支援 ―インドネシア、北スラウェシ州―(2005)

北スラウェシ州地域
吉田 好美

高校生日本語弁論大会の写真
高校生日本語弁論大会

 青い空、白い雲、美しい海―――私が住んでいるマナドは、インドネシアの東端スラウェシ島の北部にあり、ダイビングのメッカとして有名なところです。多くのダイバーが美しい海に魅了されて世界各国から訪れます。またインドネシアは国民の大多数がイスラム教徒なのですが、北スラウェシは例外的にキリスト教徒が多く、町のあちこちに教会がみられ、他のインドネシア地域とは違った雰囲気が味わえます。また中華系の血を引くとも言われているマナドの人々は色が白く、また、インドネシアでは美男美女が最も多い土地だとも言われています。

 首都ジャカルタから遠く離れているにもかかわらず、北スラウェシは古くから日本語教育がさかんな土地です。特に中等教育機関(普通高校・宗教高校・専門高校)での教育はさかんで、現在州内約50校で日本語が教えられています。インドネシアでは日本語は第2外国語として教えられており、普通高校と宗教高校では主に3年生の語学系クラスで週9コマ、専門高校では正課授業として週3コマ程度の授業が行われています。

 ではここで、ジュニア専門家(以下、JJLE)の業務について、ご紹介しましょう。

(1)配属校業務

 配属校は2校あり、普通高校と専門高校1校ずつです。配属校ではインドネシア人日本語教師と隔週で授業を担当し、お互いの授業を見学しあいます。授業後のディスカッションではよかった点や改善点などを挙げ、授業の進め方や、効果的な練習方法、楽しい活動方法について話しあい、よりよい授業ができるようになるよう指導をしていきます。また生徒たちには、ネイティブスピーカーの授業を受けることにより、日本語学習へのモチベーションを高めてもらいたいと考えています。

 1年を通じて配属になるため、先生方や生徒たちの成長を見ることができます。また先生方からは、インドネシアの文化や習慣なども教えてもらえるため、インドネシアで生活したり、業務を進めていったりする上でのヒントにもなることがあり、私自身大変勉強になります。

(2)学校訪問

 配属校勤務がない日は、日本語教育を行っている地域の学校を訪問します。ここでも配属校業務と同じように、授業見学のあとディスカッションを行い、授業をよりよいものにしていくためのアドバイスを行います。また先生方からは日々の授業についての相談を受けたりします。学校訪問では先生方一人ひとりとゆっくり話ができるので、学校のことや先生自身が抱えている問題を知るのには貴重なチャンスだといえます。また訪問先で生徒たちと交流する時間も設けてもらいます。ひとりでも多くの生徒たちに日本や日本語学習に興味を持ってもらえるように、日本語を使って会話したり、日本の文化紹介をしたりします。

 学校訪問では、マナド以外の地域にいくことが多いので、マナドとは違った風景を楽しめます。またそれぞれの土地の特産物も非常に興味深いため、ちょっとした旅行気分を味わえます。どこへ行っても生徒たちはきらきらした瞳でJJLEを出迎えてくれ、真剣に話を聞いてくれます。学校訪問で生徒たちに触れ合うたびに「また明日からもがんばろう」と生きるパワーが沸いてきます。

(3)日本語教師会

高校日本語教師会の写真
高校日本語教師会

 毎月1回、日本語教師会が行われています。教師会は勉強会も兼ねており、内容は、先生方による模擬授業と日本語スピーチ、そしてJJLEによる日本語演習です。模擬授業は毎回担当を決めて行われ、授業後はディスカッションしながら、どうしたらいい授業ができるようになるかを考えます。日本語スピーチも毎回担当を決め、自由なテーマで発表します。スピーチのあとには、先生方がその日のテーマについて日本語で質疑応答をします、JJLEはスピーチの中に出てきた文法の間違いや難しかった表現について説明したりします。

 教師会には北スラウェシ各地域から先生方が集まり、情報交換の場にもなっています。先生方は皆、和気藹々としつつも、いつも真剣に教師会活動に取り組んでいます。

(4)地域別教材開発会議の支援

 現在インドネシアでは2004年普通高校および宗教高校日本語カリキュラムに準拠した教材開発プロジェクトが、教育省とジャカルタ日本文化センターの共催で進められています。これはジャカルタだけでなく、JJLEが配属されている各地域でも分担を決め、教材開発委員の先生方が執筆を行います。JJLEも教材開発委員の一員として先生方の支援を行っています。

 先生方からは少しでもいい教科書を作ろうと、積極的にアイデアが出され、活発に意見交換がされます。その雰囲気はいつも真剣そのものです。JJLEも先生方も新しい教科書ができるのを心から楽しみにしています。

(5)その他の業務

 配属地域において日本語教育機関調査を行ったり、高校日本語教員研修へ講師として出講したりします。

 北スラウェシでは、先生方の日本語力及び日本語教授力がまだまだ低いこと、地域の先生方を指導できるリーダーも不足していることなどが、問題点として挙げられています。今後も引き続き、日本語力及び日本語教授力の底上げ及びリーダー育成への支援をしていくことがJJLEの課題となっております。

 以上のように、JJLEの業務は多岐にわたっており、一人ではなかなか大変だと思うこともありますが、ジャカルタ日本文化センターや他地域のJJLEに相談にのってもらったり、アドバイスを受けたりしながら日々業務を進めております。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
北スラウェシ州に初めてジュニア専門家(当初、名称は青年日本語教師)が派遣されたのは1997年。ジャカルタセンターから打ち出されている業務方針に従って、以下の業務を行う。(1)配属校(国立マナド第7普通高校と国立マナド第5専門高校)において日本語教育に関する指導を行う。(2)高校日本語教師会に対して支援を行う。(3)地域の学校を訪問し、日本語教育に関する助言、指導を行う。(4)高校用日本語教材作成に協力し、地域別教材作成会議への支援を行う。(5)日本語教育機関調査(6)高校日本語教師研修に講師としての参加、指導を行う。
ロ.派遣先機関名称 北スラウェシ州中等教育機関
ハ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名

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