世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 広がる「日本語教育ネットワーク」

北スマトラ大学
松本剛次

スマトラ島での日本語教育の現場写真1
スマトラ島での日本語教育の現場写真2

みなさん、こんにちは。インドネシアはスマトラ島メダンにある北スマトラ大学に派遣されている松本剛次と申します。2004年末にスマトラ沖で発生した巨大地震と津波の際には、日本から多くの支援と励ましをいただきました。スマトラに住むものを代表いたしまして、深く感謝いたします。日本語教育関係では、やはり壊滅的な被害を受けたアチェ州はバンダアチェで、高校の日本語の先生が亡くなられたり、校舎が破壊されたりという被害を聞いております。ご冥福をお祈りするとともに、こちらでの日本語教育が、被災地の復興に少しでも貢献できればと考えています。例えば3月に起きた地震ではニアス島が大きな被害を受けましたが、その際には北スマトラ州の日本語の教師が日本からの医師団に通訳として同行しました。このような形で、間接的ではありますが、当地での日本語教育が震災からの復興に貢献できることがあれば、ぜひ協力していきたいと考えております。

 それでは、私の当地での業務についてお話させていただきたいと思います。こちらでは、通常の大学での授業に加え、北スマトラ地区、西スマトラ地区(スマトラ島は日本よりちょっと大きいくらいの島で、北スマトラが「関東」西スマトラが「関西」というようなイメージでお考えください。それぞれメダン・パダンという都市が中心になっています)での高等教育支援と中等教育支援を担当しています。私が当地に派遣されてきてから2年になりますが、その間、特に「日本語教育ネットワーク」の形成に力を入れ、その成果がだいぶ形になってきたと自負しております。2005年1月14日、15日には西スマトラ州では初の開催となる大規模なワークショップが開催され、好評を得ました。以下、国際交流基金ジャカルタセンター発行のニュースレターに掲載された記事を引用する形でその報告をいたします。

 皆さんこんにちは。北スマトラ大学に派遣されている松本剛次です。早いもので私がこちらに来てからもう、1年と8ヶ月が経とうとしています。この間に多くの日本語の先生と知り合いになれることが出来ました。活動の範囲も北スマトラだけではなく西スマトラにも広がっています。これも熱心で明るく楽しいスマトラ地区の先生たちのおかげです。ありがとうございます。

 さて、今日は、去る1月14日、15日にパダンで行われた日本語教育学会スマトラ支部主催の日本語教育セミナー/ワークショップについて報告したいと思います。このセミナー/ワークショップは日本語教育関係では初めて西スマトラで開催されたものです。当初はブキティンギで行う計画でしたが、ブキティンギ市側との窓口をお願いしていたインドネシア日本語学院(INGG)から誠意ある対応が得られず、急遽開催地がパダンに変更になりました。準備期間が短い中、パダンでの開催に協力していただいたブンハッタ大学とパダンLPMPには心から感謝申し上げます。

 肝心の中身ですが、これもこちらの期待以上のいいものが出来たと感じております。参加者も全員で92名とスマトラ地区では今までにない大盛況のものとなりました。北スマトラ、西スマトラからはもちろん、リアウやジャンビーから来てくださった先生もいたとのことです。今回のセミナー/ワークショップの目的の一つに今まで交流の少なかった北スマトラと西スマトラの日本語教師、また、初等教育、中等教育、高等教育や、専門学校、民間日本語学校との間での交流と情報交換、というものがありましたが、それぞれの代表が、現場でどんなことを行っているか、どんなことに困っているかなどをオープンに報告し合い、アドバイスを送り合いました。また、今回は国際交流基金からだけでなく、JICAの日本語の先生たちも参加してくださり、川見シニアボランティア(アンダラス大学)は「歌を使って言葉を覚えよう」というテーマで初級のクラスで出来る楽しい活動を紹介してくださり、森本ジュニア専門員(AKPARメダン)はアンケート調査を元に「観光業界ではどのような日本語が求められているのか、そしてそのためはどのような日本語教育を行う必要があるのか」について、分かりやすく話してくれました。また、田平シニア隊員(文化観光省)は「日本とインドネシアの「謝り方」の違い」についての研究発表をしてくださり、これは内容的にももちろん興味深いものでしたし、さらにこの発表を通して「研究」の方法についても知ることができたという意味で大変有意義なものでした。JICAの先生方にもこの場を借りてお礼を申し上げます。

 でも、今回私が一番感動したのは、このような大規模のセミナー/ワークショップがほとんどこちらの先生たち自身の手で開催することが出来た、という点です。もちろん国際交流基金からの資金の援助もありましたし、私もアドバイスをしたり、日本人参加者との連絡をしたりましたが、基金側が行ったのはそれだけです。今、インドネシアの日本語教育界には「自立(自律)化」というものが求められています。私たち専門家も、そのための支援をしています。「スマトラ地区の自立(自律)はもうすぐそこまで来ているんじゃないかなあ」と、今回のセミナー/ワークショップを通して強く感じました。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
北スマトラ大学は、日本文学・日本語学科を有するスマトラ島内唯一の国立大学で、同学科は日本語教育学会スマトラ支部の事務局を担当し、日本語能力試験の実施機関に指定されている。専門家は同大学において日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。また、地域派遣専門家として教師支援を中心とした域内(西スマトラ地区を含む)の日本語教育支援を行う。具体的には域内の日本語教育ネットワーク形成・強化への支援、勉強会・セミナーでの講師役、セミナー開催の企画・実施への協力、高校日本語教師会およびメダン日本語学校教師会への支援などの業務がある。
ロ.派遣先機関名称 北スマトラ大学
North Sumatera University
ハ.所在地 Jl. Universitas No.19, Kampus USU Medan 20155, Sumatera Utara
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
文学部日本文学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2000年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1988年
(ロ)コース種別
日本文学科
(ハ)現地教授スタッフ
常勤10名、非常勤7名、ボランティア(在留邦人)1名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   226名
(2) 学習の主な動機 学士の取得、日本文化・日本語へ興味・関心、日系企業への就職希望
(3) 卒業後の主な進路 日本(語)に関わる職につくものは少ない。
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
能力試験3級から2級の間のレベル
(5) 日本への留学人数 過去5名

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