世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ジャカルタ日本文化センターの日本語教育支援(2006)

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター
古川嘉子、渡辺由美、登里民子

 ジャカルタ日本文化センターには、日本語教育専門家3名とインドネシア人講師2名が勤務し、日本語教育支援業務に携わっています。センターの主な業務は、インドネシアの中等教育支援・ジャカルタを中心とする首都圏地区(ジャボデタベック地区)に対する支援・学習者に対する直接支援に分かれています。

中等教育支援

 インドネシアの日本語学習者の3分の2は高校生です。これは、日本語が高校の第二外国語のひとつになっているためです。センターでは、インドネシアの公教育の枠組みに則って効率的な支援を行うために、インドネシアの教育省や高校教師会と積極的に連携し、次の4つの業務を柱として支援を行っています。

カリキュラム開発への協力

 高校での日本語科目の学習内容は、他科目と同様に、教育省のカリキュラムによって定められます。カリキュラムは10年に1度改訂され、04年から新カリキュラムが導入されています。センターは教育省からの依頼を受け、日本語カリキュラムの改訂作業に協力しています。

シラバス・教材開発プロジェクトの実施

 04年に導入された新カリキュラムに基づいて、センターでは教育省との協同プロジェクトとして、専門高校・普通高校用の日本語教材開発を行っています。05年3月には、専門高校用日本語教材『インドネシアへようこそ』が完成し、各地の専門高校で使われ始めました。普通高校用の教材は、11年生用の教科書が07年に完成する予定です。また12年生用の教科書は、06年からインドネシア各地の高校で試用が行われます。各地に派遣されているジュニア専門家や現場の高校教師との協力の下で、教材開発が進められています。

教師研修

専門高校教師研修の写真
専門高校教師研修

 センターでは、教育省が主催する教師研修に出講して、「日本語教授法」を中心に教師の再教育を行っています。最も基礎的な研修である「基礎研修」では、教育省のカリキュラムに明記されている「コミュニケーションを目標とする授業」の流れを理解し、授業計画を立て、実践することを目指しています。05年度には、バリ・マナド・ジャカルタで、それぞれ2週間の「基礎研修」が開催されました。

 また、06年度から5ヵ年計画で、「インドネシア中等教育日本語教師研修」というプログラムが始まりました。これは、毎年30名の普通高校教師を各地方から選抜して、ジャカルタ日本文化センターで2週間の日本語研修を行い、その中からさらに20名を選抜して、浦和にある日本語国際センターで約8週間の研修を行うというものです。

日本語力向上のための通信教育

 高校の日本語教師として、理想的には初級を教えられる程度の日本語能力があることが望ましいのですが、現実にはそれ以下の教師もいます。センターでは、地方在住の日本語能力の低い教師への支援策として、教育省(通信教育センター)が主催する通信教育講座に教材提供などの面で協力しています。

ジャボデタベック(首都圏)地域支援

 センターでは、ジャボデタベック地区(以下JBK)の高等教育、主に大学教員向けに、さまざまな形での支援をおこなっています。現在この地区の教師の最も大きな悩みは「中級(具体的に3年生以上の授業)で何(教材)を、どのように教えれば良いか」ということです。「中級」といっても広範で、教材も教授法も多様ですが、まずこの地区の教師が自信をもって教鞭をとるために、日本語知識を高めることが必要と考えました。そこで、04年7月から新たに「中級日本語研修」を立ち上げました。日本語能力試験3級程度以上の教師対象であるコース1から、2級を目指すコース4が06年6月までに一通り修了しました。週1回2時間の研修には、20数名の教師が集い、和気藹々と学習に励んでいます。中級文型・表現の習得、長文読解と併せ、教授法(短文作成の方法、読解タスクの進め方など)のヒントも提示しています。

 特定の機関に直接支援するものではない側面支援だからこそ、参加する一人一人の教師にとって、「今日持ち帰ったものが明日から自分の機関ですぐ役立つ」と感じられる研修を提供したいと考えています。

日本語学習者に対する直接支援

インドネシア人講師による一般講座の授業の写真
インドネシア人講師による一般講座の授業

 JBK地域には多くの民間日本語学校や大学等の日本語コースがあり、また日系企業も多いことから、インドネシアの他地域に比べ日本語を勉強する環境に恵まれています。しかし、中級以上の日本語を学べる機関は非常に限られています。ジャカルタ日本文化センターでは、中・上級者対象の一般日本語講座を開講しています。中級1クラス、上級2クラスで学生数は約80名、一回90分の授業が週2回あります。学習者は会社員、大学生、主婦、そして高校や民間日本語学校の日本語教師などです。各クラスの授業では、受身的な「勉強」ではなく、学んだことを積極的に使う場として授業に参加するよう指導しています。「理解・発信・交流」をモットーに、グループ発表やクラスでの意見交換などを積極的に取り入れています。どのクラスでも学習者同士が仲良く、そして熱心に課題に取り組み、グループ内でも日本語で話したり、ときには日本語で冗談が飛び交うような場面も見られるほどです。中級クラスでは、例年ほとんどがさらに上の上級クラスへの進級を希望しています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金ジャカルタ日本文化センターは、インドネシア各地に派遣されている専門家、ジュニア専門家、及びインドネシアの各機関と連携をとりながら、インドネシアの日本語教育支援をおこなっている。中等教育においては、国家教育省と協力し、カリキュラム・シラバスの開発、教材開発、教師研修会を実施している。高等教育、民間の日本語教育に対しては、教師研修やセミナーを実施する他、定期的に主要大学を訪問し、カリキュラム変更や教材分析のサポート他、コンサルティングを行っている。また、中・上級者向け一般日本語講座を運営している。 四半期に一度、ニューズレター『EGAO』を発行している。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 Lantai 2-3, Summitmas I, Jl.Jend.Sudirman Kav. 61-62, Jakarta 12190, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家3名、ジュニア専門家1名

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