世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 西ジャワ州ジュニア専門家の業務(2006)

西ジャワ州地域派遣
小原亜紀子

 インドネシアと言えば「熱帯の島国」ですが、ここ西ジャワ州バンドゥンは山に囲まれた高原地帯で、インドネシアにあってエアコン不要の暮らしができ、滞在している日本人から最もよく聞かれる言葉は「過ごしやすい」というものです。最近は首都ジャカルタとの間に高速道路が開通し、車で2時間程度で行き来できるようになりました。そのおかげで週末には、涼を求めるジャカルタからの観光客で市内の渋滞がひどくなってしまいましたが、それでも緑豊かな美しい街です。

 そんなバンドゥンを中心とする西ジャワ州におけるジュニア専門家の業務についてお話ししたいと思います。

西ジャワ州の概要

 現在西ジャワ州には、日本語教育を実施している高校がおよそ130校程度あり、それに携わる現地日本語教師は150名ほどいます。インドネシアの高校では、正課の語学クラスにおける第二外国語としての日本語、正課以外の選択科目としての日本語、そして、課外活動での日本語クラスがありますが、西ジャワ州では選択科目の日本語クラスが増加する傾向にあるようです。

ジュニア専門家の業務

西ジャワ州日本語文化祭の写真
西ジャワ州日本語文化祭

 ジュニア専門家の業務は多岐に渡りますが、(1)配属校勤務、(2)地域の高校日本語教師会支援、(3)高校用日本語教材の作成、(4)日本語クラスを開講している学校の訪問について、簡単に説明します。

(1)配属校勤務

 1年に2校程度、1週間に1回通う高校(配属校)が決められ、その学校で日本語クラスを担当する先生と交替で授業実施と授業観察を行います。配属校訪問は、インドネシア人教師に対する教授法についてのサポートと、あまりネイティブと接する機会のない高校生の学習意欲の向上を目的としています。

 お互いの授業を観察し、その後意見交換を行うことで、授業内容を振り返り、次回の課題を見出していくのですが、日本語のネイティブとノンネイティブでは、授業方法や視点が大きく異なる場合もあります。日本語とインドネシア語を交えたディスカッションですし、戸惑いもありますが、互いの理解が深まっていくことが実感できます。

(2)地域の高校日本語教師会支援

 高校で教える教師の教師会があり、それをMGMPと呼んでいます。年に4‐5回程度開催され、情報交換や日本語の授業や日本語についての学習の場となっています。この会に参加し、日本語の授業や日本文化の紹介を行っています。

 このMGMPによる地域での研修や勉強会、日本語文化祭などにも参加しています。文化祭ではスピーチや書道、日本語試験などの競技会があります。教室ではあまり目立たない学生が書道などの得意分野で入賞して喜ぶ姿を見るのは嬉しいものです。

(3)高校用日本語教材の作成

 2003年度からインドネシア国家教育省中等教育局と基金のジャカルタ日本文化センターが協力して、普通高校2004年カリキュラムに準拠した日本語教材を作成するプロジェクトが始まりました。正課の語学クラスの11年生(高校2年生)と12年生(高校3年生)のための教材作成を目標とし、各地域で教材作成委員会が編成され、原稿作成を行いました。ジュニア専門家は担当地域の委員会でアドバイザー的な役割を担っています。

 11年生用教材は昨年試用版が作成され、この1年間で試用した結果を踏まえて改良を重ねる予定です。12年生用教材については、7月の新学期から試用開始の予定です。

(4)日本語クラスを開講している学校の訪問

 配属校での授業、教師会、教材作成委員会などがない日は、日本語クラスを開講している学校を訪問します。授業方法の観察と、高校生が日本語ネイティブに接する機会を作ることが目的です。

 山の中の学校を訪問することもあります。日本人と接する機会がほとんどないような環境にあっても、日本のマンガやアニメ、Jポップがインドネシアでは人気があり、高校生の日本や日本文化に対する関心は高いです。学生から「浜崎あゆみの歌を歌ってください」などとリクエストがあるとさすがに困りますが、「よく勉強してくれているなあ」と感心することもあります。

今後の課題

 なかなか日本語のブラッシュアップの機会がない先生方から「日本語の勉強会を」という声があり、今年に入ってからバンドゥン市内で勉強会を実施しています。今後はバンドゥン市外でも勉強会を開き、この活動を通して地域のネットワークを作り、各地域で中心となって活躍する先生を育成することができたらと思っています。

 のんびりとしたお国柄で、なかなか思うように事が進まないこともあります。でも、その環境の中でできることを、現地の先生方と協力してやっていきたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ジャカルタ日本文化センターを派遣先(帰属)として、インドネシア各地域の中等教育機関を対象とした配属校勤務、日本語教師会(MGMP)への参加、学校訪問、その他関連行事のサポートを行う。現地日本語教師に対する教授法に関する技術移転、日本語能力の向上に主眼を置き、日本語学習者(高校生)に日本語ネイティブとの接触の機会を与えることも目的としている。2003年度から教材作成プログラムを遂行中であり、試用実施及び評価会議を開催している。現在6地域へ6名派遣。西ジャワ州への派遣は1997年から。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 Summitmas I, Lantai2-3, Jl. Jend Sudirman Kav.61-61, Jakarta
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名

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