世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) バリの高校日本語教師支援

バリ州地域派遣
増井 優子

 バリは世界的な観光地であり、日本人もよく訪れることから日本語学習熱が高い地域です。現在把握しているだけでも130の高等学校で日本語が教えられており、教師も100名を超えます。しかし大学で専門的に日本語(教育)を学んだ教師は数少なく、インドネシア全体で見ると日本語レベルも教授力も決して高いほうではありません。以前は教師の入れ替わりが非常に激しく、日本語教師会のメンバーもなかなか定着しませんでしたが、ここ数年でようやく以下のような明るい兆しが見え始めました。

  • 独学のみで日本語を教え始めた即席教師に代わり、日本語を専門に勉強してきた若い世代が日本語教師として定着しつつある。
  • 過去に浦和の日本語国際センターやジャカルタ日本文化センターで研修を受けたベテランの教師が、バリ州のインストラクターとしてリーダーシップを取っている。
  • バリ州の2つの大学で4年制の日本語コースが立ち上がり、教職課程も開設される予定であるため、今後はその卒業生を中心に日本語教師が増えていくと思われる。

 このような移行期にあるバリ州のジュニア専門家の業務は以下のようなものがあります。

1.配属校勤務

配属校の生徒達の写真
配属校の生徒達

 2005年度は普通高校2校に勤務しました。1校は教材作成委員のメンバーにもなっているベテランの教師で、現在作成中の教材を試用しながら評価を行い、改訂に役立てました。もう1校は次の世代のリーダー育成をはかるため、日本語力・教授力ともに見込みのある教師に付き、教材の選び方、授業計画の立て方、指導法などについてアドバイスを行いました。

2.教師会支援

 バリ州の高校日本語教師会はこれまで毎月実施されていましたが、今年度は助成金の都合で開催が2ヶ月に1度に減らされることになりました。しかし、その分内容を充実させ、より多くの教師の参加を呼びかけています。各学校で新カリキュラムが本格的に導入されている中、教材作成委員による新教材を扱ったモデル授業や若手教師の模擬授業、またジュニア専門家による演習などを行い、教師間の意見・情報交換がより活発に進められるよう工夫しています。また、教師会主催の日本語スピーチコンテストなどの開催には多くの教師が積極的に関わり、地域内また地域間の教師ネットワークを築く機会となっています。

3.新カリキュラム準拠教材開発プロジェクト

 教育省と国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(以下ジャカルタセンター)共催による教材開発プロジェクトは3年目に入っています。今年度は11年生(高校2年生)用教材の試用版が出来上がり、新カリキュラム導入校で試用すると同時に、12年生(高校3年生)用教材の執筆作業を行いました。教材作成委員や評価委員も編成しなおし、バリ州の教材作成チームとしてプロジェクトに関わっています。

4.普通高校日本語教員研修/地域別小研修

カラガッサム地区小研修の写真
カラガッサム地区小研修

 今年度はバリで全国普通高校日本語教員研修が開催され、バリ州から8名の教師が2週間の研修に参加しました。ジャカルタセンターの専門家や講師とともに、地域派遣のジュニア専門家も講師またアドバイザーとして日本語演習や教授法の授業を担当しました。教員研修にはバリ州教師会から有望な教師を推薦しますが、必ずしもそれがジャカルタの教育省に受理されず、参加枠からもれた教師や遠方で教師会活動になかなか参加できない教師のために、地域で小研修を行なっています。今年度は、最近若手の教師が増えてきたカラガッサム地区で小研修を実施し、10名の教師が参加しました。またこれらの研修ではベテランのリーダー教師がインストラクターを務め、若手の育成に力を注いでくれています。

5.学校訪問

 上の研修や教師会活動に参加した教師のフォローアップのため、学校訪問を行なっています。研修や教師会で扱われた内容が実践できているかどうかを見ると同時に、疑問点や困難に感じていることなどを率直に話し合い、教師をサポートしています。

6.勉強会/通信教育

 バリ州の教師は日本語能力試験4級のレベルが最も多いですが、高校で教えるべき内容をしっかり理解するには3級レベルは必要とされ、それがバリ州の教師の目標となっています。そのため教師からの要望に応じて3級勉強会を行なっています。また、通信教育でも4~3級の項目を扱っており、インドネシア人チューターが参加教師をサポートし、全体の日本語レベルの底上げを図っています。

 ジュニア専門家の派遣が10年目となり、バリ州の日本語教育事情も少しずつ変わってきました。以前、一番問題とされていた4級にも満たない極端に日本語能力の低い教師はずいぶん減り、熱心で素養のある若い教師が増えてきました。そしてその若手を育てるベテラン教師も、教材作成委員や研修のインストラクターを務めることによってリーダーとしての自覚と自信がでてきました。しかしデンパサール地区を中心に少しずつ状況が改善されてはいても、地方や遠隔地ではリーダー教師の交替や不在により、教師会活動もなかなか定着しないという現実もあります。主にジャカルタセンターのプロジェクトや都市での教師会活動に携わりながら、地域派遣としてどのように遠隔地の教師を支援していくか、というのが課題でもあります。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
バリ州では1996年からジュニア専門家の派遣が開始し、今年10年目となる。2005年度は2校の普通高校に配属し、インドネシア人日本語教師への技術指導を行うとともに現在作成中の日本語教材の試用・評価を行う。また地域で開催される教員研修、小研修、教師会などに出講し、それらに参加した教師の学校訪問を通してバリ州の教師をサポートする。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 Summitmas I, Lantai2-3, Jl. Jend Sudirman Kav.61-61, Jakarta
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名

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