世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) スマトラ地区における日本語教育地域支援

北スマトラ大学
松本剛次

 皆さん、こんにちは。インドネシアはスマトラ島の州都メダンにある北スマトラ大学に派遣されております松本剛次と申します。早いもので私が当地に派遣されてきてからもう3年が過ぎ、もうすぐ帰任を迎えようとしています。今回は、主に地域支援という観点から、この3年間を振り返り、簡単にお話させていただきたいと思います。

西スマトラでの勉強会の様子の写真
西スマトラでの勉強会の様子

 私がこの3年間で最も力を入れてきたことはスマトラ地区における教師ネットワークの整備でした。インドネシア日本語教育学会スマトラ支部という一種の教師会はそれまでにも存在していたのですが、セミナーを開催するときに名前が使われるだけのような存在であったものを、学会支部長とも協力し、中身のある、活動のあるものにしてきました。現在では例年1月に行われる年1回の大規模なセミナーに加え、8月には研修報告会(これは日本やジャカルタで研修をしてきた先生たちが、その経験を研修に参加しなかった先生にもシェアーするものです)、北スマトラでは年10回、西スマトラでは年4回の勉強会、といった活動が定着してきました。それ以外にも不定期に会議や懇親会が行われています。このネットワークには大学の先生だけでなく、高校や民間の日本語学校の先生も参加しており、今では、友好的な雰囲気の中、活発に活動が行われています。しかし、こちらの「ネットワーク」という思惑とは反対に、だんだん「組織化」する傾向が強まっており、もういちど「教師個人」を構成単位とした集まりであることを再確認する必要があるのではないかとも思われます。

 教師間ネットワークとしてはスマトラにはこの学会支部とは別に、高校で日本語を教えている先生方の集まりであるMGMPというものも北スマトラと西スマトラにあり、私はそこの支援も担当しております。北スマトラはリーダーとなる教師もこの3年間で育ってきました。そのリーダーの下、若手の教師たちも日々、研鑽を積んでいます。このように先輩教師が後輩教師を指導できるという環境は理想的なものであります。今後もそのようないい関係を続けていってほしいと思います。

 一方西スマトラは北スマトラに比べればそのMGMPはネットワークとしてもまだまだですが、少なくともどこでどのような先生が日本語を教えているのか、ということはつかめてきましたので、それだけでも成果はあったと思います。ただ、課題は量の拡大よりやはり質の向上でしょう。西スマトラにはまだまだ若い高校の先生が多いのですが、それは逆に言えば今後の成長が期待できるということでもあります。是非、がんばってほしいと思います。

 地域支援ということで言えば、このような教師間ネットワークに加え、在留邦人とのつながりも、まだまだ活発とは言えませんが、特に任期の後半、私が力を入れてきたことの一つでした。特に、メダン市の日本人会であるメダン・ジャパン・クラブには、私が理事の一人としてかかわる機会を得たこともあり、いろんなところで協力をしていただきました。学生のためには不定期ですが「日本-スマトラ文化交流会」という活動を開催しています。それから、弁論大会などの行事の際には共催者の一つとして協力してもらっています。

 また、忘れていけないのはメダン総領事館の協力でしょう。日系企業の少ないメダン市では、やはり総領事館を通して日本と触れる機会を得る、というのが現地の教師にしても、学生にしても最も多いものです。私としても、総領事館の協力がなければこの3年間、よい仕事はできなかったであろうと感謝しております。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
北スマトラ大学日本文学科は日本語教育学会スマトラ支部の事務局を担当し、日本語能力試験の実施機関に指定されている。専門家は同大学において日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。また、地域派遣専門家として教師支援を中心とした域内(西スマトラ地区を含む)の日本語教育支援を行う。具体的には域内の日本語教育ネットワーク形成・強化への支援、勉強会・セミナーでの講師役、セミナー開催の企画・実施への協力、高校日本語教師会およびメダン日本語学校教師会への支援などの業務がある。
ロ.派遣先機関名称 北スマトラ大学
North Sumatera University
ハ.所在地 Jl. Universitas No.19, Kampus USU Medan 20155, Sumatera Utara
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
文学部日本文学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2000年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1988年
(ロ)コース種別
日本文学科
(ハ)現地教授スタッフ
常勤10名、非常勤6名、ボランティア(在留邦人)1名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   各学年定員が40名
(2) 学習の主な動機 (1)将来の就職 (2)日本の文化に関する知識の習得 (3)日本語でのコミュニケーション
(3) 卒業後の主な進路 実際には日本(語)に関わる職につくものは少ない。
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
能力試験3級から2級の間のレベル
(5) 日本への留学人数 0名

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