世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) みんなの夢

ガジャマダ大学
西浦久子

 ジョグジャカルタ特別州・中部ジャワ州では大学をはじめ、高校、語学学校などで日本語は最も人気のある外国語の一つである。当地では日本語が就職やビジネスに結びつく機会は多くないが、学生は意欲的にそれぞれの夢を持って日本語を学習している。また教師も熱心に指導している。日本語教育専門家(以下「専門家」)としての仕事は、日本語教育の質の向上と改善を目指す人々を支援することである。仕事場の一つは派遣されているガジャマダ大学で、もう一つはジョグジャカルタ特別州・中部ジャワ州全体である。

1.国立ガジャマダ大学文化研究学部日本語日本文学科

模擬授業をする4年生の学生たちの写真
模擬授業をする4年生の学生たち

 ガジャマダ大学は芸術と歴史の町として名高いジョグジャカルタにある。この町は学生の人口が土地の人より多いと言われるほど大学の数が多いため「大学の町」や「教育の町」と呼ばれている。

 ガジャマダ大学は1949年に創立されたインドネシアで最も古い国立大学である。18学部を有する総合大学で、中部ジャワ地域の高等教育の中心的役割を担っている。2002年に独立行政法人化された。

 ガジャマダ大学文化研究学部日本語日本文学科は、1989年に中部ジャワ地域に初めて開設されたS1(4年制)コースである。また1999年にはD3(3年制)も開設された。ここには中部ジャワ唯一の学科付属の日本語図書室がある。約6,700冊の書籍、160本のビデオテープやDVD、日本語の新聞などがあり広く利用されている。NHKテレビも視聴することができる。

 基金の専門家は1989年の当学科開設以来継続して派遣されており、専門家の派遣先での主な業務は以下のようなものである。

  • 授業を担当する。
  • 教師に対して授業計画、教材、教授法、日本語などについて指導・コンサルティング、学内勉強会などを行う。学生に対しては卒業論文(要約文)の日本語指導、会話・能力試験対策の補習などを行う。
  • 教材開発・整備を行う。
  • 日本語能力試験、弁論大会地区予選などを教師や学生と共に企画運営する。

2.派遣先大学以外の地域

勉強会で話し合う教師たちの写真
勉強会で話し合う教師たち

 専門家はジョグジャカルタ特別州・中部ジャワ州の地域派遣専門家として活動を行っている。現在22の高等教育機関で日本語が教えられている。地域での業務は以下の通りである。

  • 日本語教育学会中部ジャワ支部(以下「学会支部」)の活動を支援する。教師対象のセミナー-や勉強会などを共に企画運営し、講師を務める。大学間・教師間のネットワーク作りを支援する。
  • 大学の教師に対して教授法の指導、教材の紹介、コンサルティングを行う。
  • 大学の日本語学科の教授内容、コースデザインなどについてアドバイスする。
  • 高等教育機関、日本語教育事情を調査する。

 上記1、2の活動は週3日間はガジャマダ大学で、あとの3日間は主に地域で行う。

専門家の5月のある1週間

月曜日:
ジョグジャカルタ工科大学を訪問。3年生への就職面接(日本語)についてのアドバイスと練習。授業の準備。セミナーの発表者から電話で相談。
火曜日:
1年文法・復習の授業(9:00~9:50)。教師から日本語や授業、教材についての質問や相談。4年日本語教授法の授業(12:45~14:25)は学生の模擬授業。授業準備と宿題のチェック。
水曜日:
1年文法・復習の授業(9:00~9:50)。4年日本語教授法で模擬授業をする学生の教案指導。2年読解授業(11:00~12:40)。授業準備と宿題チェック。
木曜日:
3年会話の授業(9:00~10:40)。日本人へのインタビューについてグループ毎に発表。学内教師向け勉強会(13:00~13:30)。新聞記事「ソフトパワーを磨け」を読んで話し合った。日本語学科会議(13:30~15:00)。
金曜日:
明日のスマラン・サラティガ地区勉強会の準備。授業の整理と期末試験問題作成。
土曜日:
朝6時半に家を出て、9時過ぎにスマラン国立大学に到着。基金の長期研修から帰った2人の教師の発表。他大学のカリキュラム改訂、教材作成についてアドバイス。

3.成果と問題点

 大学のある5地域が離れているので全体でネットワーク形成をすることが難しい。しかし2地域ずつ(スマラン・サラティガ、ジョグジャカルタ・ソロ)合同で行っている教師の勉強会は定着した。プルウォクルト地区は上記の4地域から離れているため別に支援活動を行っている。

  • 学会支部と基金の共催で教授法のセミナーが2005年はスマランで、2006年はジョグジャカルタで実施された。2007年もセミナーを予定している。担当校の教師たちが企画運営している。
  • シラバスや教授内容を整備・改善できる人材がまだ少ない。また、教師の日本語能力向上と教授法のレベルアップが必要である。これからも勉強会・セミナーを継続し、基金の研修への参加を呼びかけより多くの教師が研修の場を持てるようにしたい。
  • 若い教師の多いスマラン地区をもっと訪問したいが片道3時間半かかるので頻繁に訪問できない。
  • 規模の小さい私立大学は最近日本語学科の学生数が減っている。

 何か仕事を終えた時、問題が解決できた時、感謝された時、教師や学生の成長した姿を見た時、それまでの苦労も吹き飛んでしまう。専門家が先に立って導くのではなく教師や学生が自立できるように、また明日へ向かって努力する人々の夢が実現するようこれからも支援したい。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ガジャマダ大学は中部ジャワ地域においてS1(4年制)の日本語専攻プログラムを持つ大学として当地域の日本語教育の中心的な存在である。日本語教育専門家は同日本語講座で学生に対する初~上級レベルの科目を指導、現地若手教師の育成、日本語教授法、カリキュラム・教材作成に対する助言などを行う。また、中部ジャワ地域の日本語教育専門家として、各地域の教師に対する勉強会や研修会の企画と出講、大学・日本語教師へのコンサルティング業務を行う。インドネシア日本語教育学会中部ジャワ支部事務局はスマランのディアン ヌスワントロ大学にあり、勉強会や研修会を専門家と企画運営している。
ロ.派遣先機関名称 国立ガジャマダ大学
Gadjah Mada University
ハ.所在地 Bulaksumur Yogyakarta, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
文化研究学部 日本語日本文学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1989年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1989年
(ロ)コース種別
専攻 S1(4年制)コース、D3(3年制)コース
(ハ)現地教授スタッフ
常勤9名(うち2名留学中) 非常勤2名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   各学年S1約30名、D3約40名
(2) 学習の主な動機 留学、日系企業・日本語教育機関への就職、日本文化への興味、日本研究
(3) 卒業後の主な進路 日系企業、日本語教育機関、一般の企業、政府機関などに就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2~3級程度、1級に合格する者2~3名
(5) 日本への留学人数 5~6名

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