世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 広がる日本語教育

東ジャワ州(スラバヤ国立大学)
小栗 潔

1. はじめに

 東ジャワ州の日本語教育というと、これまでスラバヤを中心に語られてきました。それは、東ジャワ州で最初に日本語関連の専攻コースができたのがスラバヤ国立大学で、長らく東ジャワ州の日本語教育の中心と考えられてきたからです。しかし、現在はスラバヤ以外の地域にも高等教育レベルの日本語教育が広がりを見せています。ここではそれらの地域を紹介してみたいと思います。

2. マラン(Malang

授業風景(UNIBRAW)の写真
授業風景(UNIBRAW

 日本語教育が広がりを見せている地域としてマランが挙げられます。マランはスラバヤから南へ車で約2時間の所に位置しています。ここは標高が高く比較的涼しいため、オランダ占領下では有数の避暑地でした。また、現在は古都ジョグジャカルタと並ぶ教育都市で、多数の高等教育機関が存在しています。

 マランでは3つの高等教育機関が日本語関連の専攻コースを設けています。ブラウィジャヤ大学(以下「UNIBRAW」とする)、マラン外国語大学、そしてカンジュルハン大学です。いずれもD3コース(3年制コース)で、まだ日本語教育機関としては後発で歴史も浅いです。しかし、どの機関も将来を見据えて独自の努力を続けているようです。中でも、UNIBRAWはスラバヤのドクター・ストモ大学と並び、日本語関連の試験等で近年インドネシアでもトップクラスの実績を上げています。

 これらの機関の先生方が中心となってマラン地域の教員向け勉強会が定期的に開催されています。参加者は高等教育機関の教員だけにとどまらず、それらの大学を卒業して高校や一般語学教育機関で日本語教育に携わる若い先生方の参加もあります。筆者もそこで講師役を務めています。内容は教授法、文法、教材作成方法等様々ですが、先生方は皆熱心です。

 上記3機関以外にも、マラン工科大学やムルデカ大学など選択科目として日本語教育を行っている高等教育機関もあります。このように、マランの高等教育機関で日本語教育が盛んに行われていることは意外と知られていないようです。

3. ジョンバン(Jombang

ャンパス(UNIPDU)の写真
キャンパス(UNIPDU

 もう一つ、ジョンバンを挙げておきましょう。ジョンバンはスラバヤから西南に車で2時間ほどの所に位置しています。ここにあるダルル・ウルム・プサントレン・ティンギー大学(以下「UNIPDU」とする)で2006年9月から新たに日本語のD3コースが開始されました。

 規模はまだ小さいです(学生11名、教員5名)。しかし、東ジャワ州では、これまで日本語関連の専攻コースを持つ高等教育機関はスラバヤかマランに限られていました。ジョンバンのUNIPDUはその2地域以外では初めてのケースで、日本語教育の地域的な広がりを示す象徴的な出来事と言えるかもしれません。

 UNIPDUでも、小規模ながら先生方が独自に勉強会を開いています。筆者も定期的に訪問し、勉強会に出講したりコースについての相談を受けたりしています。コースもできたばかりで先生方も若手主体なので、苦労も多いようです。しかし、皆で一致協力しながらコースを運営しており、今後が楽しみです。

4. おわりに

 このように東ジャワ州では、スラバヤに日本語教育機関が集中していた時代を経て、現在はマランやジョンバンといった他の地域でも日本語関係の専攻コースを持つ大学が現れるなど、拡散と多極化の方向に向かいつつあるように見えます。

 このように地域の日本語教育が広がりを見せる中、多様な機関をニュートラルな立場から支援し、繋いでいくという日本語教育専門家の役割は今まで以上に重要になって行くことでしょう。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
1981年スラバヤ国立大学(以下、「UNESA」)の前身スラバヤ教育大学に東部ジャワで初めて日本語プログラムが設けられた。1999年の総合大学への改組から9年経過し、中等教育の日本語教員養成という設立時の目標に多少の変化が見られる。しかし、東部ジャワ地域の中等教育機関の日本語教師の多くが本学出身であり、また、相対的に以前より少なくなったものの、高等教育機関の日本語教員にも本学出身者が存在することを考えれば、当地域でUNESAが果たした役割が理解できる。日本語教育専門家の業務は日本語教授、カリキュラムへのアドバイス、教員養成である。また、地域業務として、域内の高等教育機関へのサポートを行う。
ロ.派遣先機関名称 スラバヤ国立大学
National University of Surabaya
ハ.所在地 Lidah Wetan, Surabaya, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
言語芸術学部外国語外国文学科日本語プログラム
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1981年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1981年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤18名(うち邦人0名)、非常勤1名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年110名、2年 80名、3年 73名、4年 72名
(2) 学習の主な動機 「日本文化への興味」、「日系企業への就職」、「日本語教師志望」等
(3) 卒業後の主な進路 一般企業(日系企業を含む)、中等教育の日本語教育機関
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験3級以上2級未満
(5) 日本への留学人数 これまでに多数

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