世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 目標達成から新たなスタートへ

ジャカルタ日本文化センター(東ジャワ州派遣)
栗原明美

 インドネシアジャワ島の一番東にある東ジャワ州はどのくらいの広さだと思いますか。地図でみるとそれほど広く感じられないのですが、実は、九州より広いのです。実際に、地方都市で勉強会や学校訪問を行う時に、車で片道2、3時間かけて行くというのは日常になっています。

 その広大な東ジャワ州には、日本語を教えている高校が198校あり、教師が184名います。日本語や教え方を勉強したいと希望している先生は多いのですが、東ジャワ州に派遣されているジュニア専門家は1名だけですから、距離の面からも時間の面からも、一人一人に支援を行うことは不可能です。また、インドネシアではまだまだインターネットが普及していませんので、インターネットを利用した支援も現実的ではありません。そういった状況の中で、より多くの先生方への支援をするために、リーダー育成をし、リーダー格のインドネシア人教師が後進を育てるという形を作ることを目標にしてきました。また、広大な地域を細かくカバーし、先生方が情報の共有や学びあいができるように、サブリーダーを中心とした各地方のネットワーク作りも目標です。

 今回は、これらの目標に関する活動の中から、東ジャワ州の日本語教育の現場をご紹介したいと思います。

小研修

小研修の様子の写真
小研修の様子

 小研修とは、リーダー格のインドネシア人の先生とジュニア専門家が州内で行う2日間程度の研修です。今回、東ジャワ州では、新人教師向けに「授業の流れ」と「教案の書き方」についての小研修を行いました。これは、参加者である新人の先生たちにとっては、教案を書いて、一回の授業がスムーズにできるようになるということが目標ですが、もう一つ、リーダーにとっては、自分たちで小研修の運営や講義ができるようになるという目標があります。そのために、ジュニア専門家はリーダーの先生方のサポートやアドバイスを行うという形で参加します。事前のミーティングでは運営方法や講義の内容について活発に意見が出され、講義や運営もほとんどリーダーの先生方で行われました。今回の小研修では、参加者の熱心さと優秀さにも驚きましたが、リーダーの活躍をとても頼もしく思いました。小研修の随所にこれまでの経験の蓄積が見られ、今までの支援の成果が出てきていることを実感しました。

高校文化祭

学校紹介コーナー(文化祭)の写真
学校紹介コーナー(文化祭)

 高校文化祭は東ジャワ州全体の行事として年に一度行われています。内容は、弁論大会、朗読大会、ディクテーション大会、書道大会、ポスター大会です。また、在スラバヤ総領事館や大学などの協力で茶道や日本の遊びの紹介なども行われ、高校生たちが日本語や日本文化に触れるよい機会となっています。今回は、新たに学校紹介コーナーも設けられ、東ジャワ州の各高校でどのように日本語を勉強しているかを共有していこうとする試みがありましたので、州内の生徒や先生方が他校の様子を知るよい機会にもなりました。

 この文化祭でもリーダーやサブリーダーの活躍が見られました。事前の準備や運営などの裏方の仕事を、それぞれ違う学校に勤務する先生方が普段の仕事をこなしながら行うのは大変なことですが、若手の先生からベテランの先生まで協力して準備を行い、無事に成功を収めることができました。これも普段からよいネットワーク作りをしてきた成果だと思います。

これから

 東ジャワ州にジュニア専門家が派遣されて10年が経過しました。その間、リーダー育成、ネットワーク作りを目標に活動を行い、その目標はほぼ達成することができました。そのため、2007年6月をもってジュニア専門家の派遣終了が決まりました。目標を達成しての派遣終了を迎えることができ、非常に嬉しく思っています。

 しかし、その一方、今後東ジャワ州では日本語を学習する高校生がますます増え続けることが予想されます。カリキュラムの変更により、語学を専攻する生徒だけでなく、それ以外の生徒も3年間日本語を勉強することができるようになったからです。今後はより広い層の高校生が日本語を学ぶことになるのです。

 このような状況ですから、これまでの目標は達成しましたが、今後もよい日本語教育環境を維持し、発展するために支援を続けていかなければならないと思います。多くの高校生に日本語を学んでもらう以上、日本語を勉強していやだった、つまらなかったとだけは思ってもらいたくありません。日本語を勉強して楽しかったと思ってもらえるよう支援を続ける必要があるのではないでしょうか。今後は、ジュニア専門家は東ジャワ州にはいませんが、それに代わって日本語教育専門家やジャカルタ日本文化センターが支援を行っていくことになります。今、東ジャワ州の高校における日本語教育支援は新たな段階に入りました。この新たなスタートにどう対応するべきか、これから考えていきたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
東ジャワ州におけるジュニア専門家の派遣開始年は1996年である。2007年3月現在、東ジャワ州の高校では、198校で日本語が学ばれ(うち普通高校147校)、184名の教師が日本語を教えている。ジュニア専門家は、東ジャワ州全域を担当し、配属校勤務、高校日本語教師会・地域勉強会への協力、教材作成等の業務を通じて、インドネシア人日本語教師の日本語教授力及び日本語力向上を支援する。また、配属校勤務や学校訪問を通じて、生徒の日本語学習に関する動機付けを行なう。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 SummitmasⅠ, Lantai 2-3, Jl.Jend. Sudirman Kav. 61-62, Jakarta
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名

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