世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) スマトラ地区における日本語教育専門家業務

北スマトラ大学
飯尾幸司

 みなさんこんにちは。2006年6月からインドネシア北スマトラを中心に日本語教育派遣専門家として仕事をさせていただいている飯尾幸司と申します。
 私が北スマトラに赴任してもう一年が経とうとしていますが、その間、仕事のことで悩んだり、デング熱にかかったりしたこともありましたが、現在は現地の先生方と一緒に楽しく仕事をさせていただいております。

 北スマトラでの日本語教育専門家の仕事は、派遣先機関である北スマトラ大学(以下「USU」と略します)支援、北スマトラと西スマトラの高等教育支援、北スマトラの中等教育支援の三本柱からなっています。

3年生最後の授業の写真
3年生最後の授業

 先ずは、USU支援業務についてご報告したいと思います。
USUには、教員間のコミュニケーション不足の問題、カリキュラムの問題、教師の能力に関する問題等がありますが、私は、ここが駄目だから直したほうがいいと一方的に先生方に押し付けるのではなく、先生方がそれらの問題に自分で気付き、自分達でどうにかしようという気持ちになってもらうことを最大の目標にし、これまで活動してきました。
途中様々な方面の方から意見をいただき、色々と悩み、試行錯誤しながら支援を続けてきましたが、現在では、USUの先生方の意識が確実に変わってきていることを日々実感し、そのことに喜びを感じています。
今後も、USUを風通しが良く発展的な意見交換ができる場にするために、タイミングを計って先生方に刺激を与え、問題意識を共有してもらい、それを仲間で解決していこうという雰囲気になるよう、働きかけていきたいと思っています。

 また、私自身の担当授業は2年生と3年生の「会話聴解」と、4年生の「日本語運用」です。
 「会話聴解」の授業では、それぞれ一人の現地教師と私でティームティーチングをしており、事前の教案チェックと授業についての相談、授業参加、事後のフィードバックを行っています。
 「日本語運用」の授業では、前期はグループで自分たちの文化についてまとめて発表するということを行い、後期は、日本人の考え方に関して不思議だと思うことについて、メダン在住日本人に会ってインタビューをするなどといったことを行いました。

 その他USUでは、先生方との学内勉強会、学生に対する日本語ワープロ教室や会話会などを行っています。

一日セミナー初級WSの写真
一日セミナー初級WS

 次に、北スマトラと西スマトラの高等教育支援についてお話します。
私は、北スマトラと西スマトラの高等教育支援=「日本語教育学会スマトラ支部」支援と考え、学会活動を支援することによってスマトラ全体の高等教育を支援していきたいと考えています。
この「日本語教育学会スマトラ支部」は、北スマトラと西スマトラの大学教師、高校教師、民間日本語学校の教師などいろいろな方面の先生によって組織されています。
学会活動としては、年1回の「一日セミナー」と「帰国報告会」、そして北スマトラと西スマトラでそれぞれ年3回ずつ「文法セミナー」を行っています。
「一日セミナー」と日本へ研修に行った教師による「帰国報告会」に関しては、これまでの日本語教育専門家の努力のおかげで企画は学会支部長にほとんど任せることはできますが、「文法セミナー」に関しては、企画、実施ともに専門家が主導権をとらなければ成り立たないというのが現状です。
将来はセミナーについても自分たちで企画実施できるようになればいいと思いますが、先ずは、この「文法セミナー」をより魅力的なものにし、多くの先生に足を運んでもらえるよう現在努力しているところです。

 この他北スマトラには、主に民間日本語学校の教師で組織されている「北スマトラ日本語教師会(PPBJM)」があり、ほぼ毎月勉強会を開催しています。

 最後に、中等教育支援についてですがですが、北スマトラには高校で日本語を教えている教師が約30名おり、その先生方によって「高校教師会(MGMP)」が組織され、こちらでもほぼ毎月勉強会を開催しています。
 この勉強会では、リーダーの育成と若手教師の育成に主眼をおきつつ、ネットワークの強化と全体のレベルアップを目指しています。

 以上、簡単にスマトラでの私の活動をご報告しました。私がこの地を離れる際に、「この人がメダンに来てよかった」「この人に会えてよかったなあ」と多くの方に思ってもらえるよう、これからも自分にできることをこつこつとやっていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
北スマトラ大学日本文学科は日本語教育学会スマトラ支部の事務局を担当し、日本語能力試験の実施機関に指定されている。日本語教育専門家は同大学において日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。また、地域派遣専門家として教師支援を中心とした域内(西スマトラ地区を含む)の日本語教育支援を行う。具体的には域内の日本語教育ネットワーク形成・強化への支援、勉強会・セミナーでの講師役、セミナー開催の企画・実施への協力、高校日本語教師会およびメダン日本語学校教師会への支援などの業務がある。
ロ.派遣先機関名称 北スマトラ大学
North Sumatera University
ハ.所在地 Jl. Universitas No.19, Kampus USU Medan 20155, Sumatera Utara
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
文学部日本文学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2000年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1988年
(ロ)コース種別
日本文学科
(ハ)現地教授スタッフ
常勤11名、非常勤5名(うち在留邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   各学年定員が40名
(2) 学習の主な動機 (1)就職 (2)日本文化 (3)日本語でコミュニケーション
(3) 卒業後の主な進路 実際には日本(語)に関わる職につくものは少ない。
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定3級程度
(5) 日本への留学人数 私費留学で数名

ページトップへ戻る