世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ジャカルタ日本文化センターの日本語教育支援(2008)

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター
木谷直之 吉田裕子

 国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(以下、センター)には、日本語教育専門家2名とインドネシア人講師2名が勤務し、日本語教育支援業務に携わっています。センターの主な業務は、インドネシアの中等教育支援・ジャカルタを中心とする首都圏特別地区に対する支援・学習者に対する直接支援の3つに分かれています。

中等教育支援:教師研修に焦点を当てて

地域別研修計画の発表(2008年6月TOT Regional研修にて)の写真
地域別研修計画の発表
(2008年6月TOT Regional研修にて)

 センターは教育省の語学教員研修所(P4TK Bahasa:以下、P4TK)と協力して高校の日本語教師研修を行っています。研修期間は2週間、参加者は20名。月曜日から土曜日まで、毎日、朝7時半から夕方5時半まで、日本語演習や教授法関連のさまざまな授業やワークショップがみっちり行われます。研修が終わると成績が発表され、研修合格者には「研修修了証明書(sertifikasi)」が出されます。

 2008年度から教師研修の枠組みが少し変わりました。研修には「基礎研修」「継続研修」「TOT Regional」「TOT Nasional」の4つの段階があります(TOTは、Training of Trainersの略)。それぞれの段階でいい成績をとった修了生が上の段階の研修に進むことができます。「基礎研修」は、一人の教師として「授業の流れ」を意識して「導入」や「基本練習」「応用練習」などがしっかりできるようになることを目標としています。そのために一人一人の教師の模擬授業評価が非常に重要になります。「継続研修」では、自分の授業を客観的にふり返ることと、グループでいろいろな共同作業ができるようになることを目指します。この「継続研修」の修了生の中から将来の地域のインストラクター候補が選ばれるわけですから、この研修では一人の教師としてだけでなく、地域のリーダー候補生として、いろいろな人と共同で活動ができる、問題解決に向けて建設的な議論ができる教師を育成することが重要になります。

 「TOT Regional研修」は、それぞれの地域のインストラクターやリーダー的な教師を育成することを目指します。(1)地域の教師のためにどのような研修を企画・準備すればいいかを考えて、具体的に地域の実情に合わせた研修計画を立てること、(2)研修生の模擬授業をどのような観点からどのように評価すればいいか、その評価基準を作成すること、(3)試験問題を作るときにはどのような点に注意しなければならないかを考えて、実際に試験問題を作成すること、そして、(4)地域の研修で「授業の流れ」や練習方法などを他の教師にどのように説明すればいいかを考えて、実際に模擬研修授業を行うことが研修の中心になります。ほとんどの活動はグループ単位で行われ、異なる考え方や経験、教授背景を持つ教師と議論し、よりよい解決方法をいっしょに探していくというプロセスを体験することも重要な目標となっています。(写真1は、2008年5月26日から6月7日までP4TK Bahasaで行われたTOT Regional研修でバリの先生たちが研修計画を発表している様子です)。

 インドネシアでは近年、各地域の教師会(MGMP)の自立化が求められています。教育省も今後、基礎研修と継続研修は各地域の教師会主催で行うという基本方針を発表しています。また、インドネシア政府は2015年までにすべての高校や大学の教師は正式な教師資格を取得していなければならないという法律を出して、教師の質の向上を目指しています。そして、その正式な教師資格を取得するための条件の一つとして、教師研修に参加していることが挙げられています。教師は今まで以上に研修に参加し、自らの教授能力を高める必要があります。地域で教師研修が企画・準備・実施できるようになると、教師にとっては研修参加機会が多くなり、より多くの教師が研修に参加できるようになります。今後、ますます地域の教師会の自立化と研修実施能力の向上が重要になっていくでしょう。

ジャボデタベック(首都圏特別地域)支援

 センターでは、ジャボデタベックの高等教育、主に大学教員向けに、さまざまな形での支援をおこなっています。中級以上のレベルを教えられる教師の育成を目指し、教師の日本語力向上に取り組んでいます。「中級日本語研修」は04年7月に始まりましたが、地域の実情と要望に応えながら継続して開講しています。複雑化したコース設定をわかりやすくするために、08年7月からは「中級日本語研修」「中上級日本語研修」としました。民間日本語教育機関の教員、高校教員など様々な立場の教師が集い、情報交換もしながら楽しく学習を進めています。

 また、インドネシア日本語教育学会ジャボデタベック支部が開催する土曜勉強会・研究会などにも出講し、教員の日本語力・教授力の向上を計っています。また、専門家がいない他の地域の学会セミナーにも出講しています。

 そのほか、経験が浅い教師のために「初級日本語教授法研修」を開催したり、大学訪問を行うなど、地域に密接した支援を行っています。

学習者に対する直接支援

2007-8年度一般講座中級クラスの写真
2007-8年度一般講座中級クラス

 ジャボデタベックには多くの民間日本語学校や大学等の日本語コースがあり、また日系企業も多いことから、インドネシアの他地域に比べ日本語を勉強する環境に恵まれています。しかし、中級以上の日本語を学べる機関は非常に限られています。センターでは、中・上級者対象の一般日本語講座を開講しています。中級が1クラス、上級が2クラスで学生数は約80名、一回90分の授業が週2回あります。中級はインドネシア人講師が2名で担当し、上級1はインドネシア人と日本人講師、上級2は日本人講師が2名で担当しています。

 学習者は会社員、大学生、主婦、そして高校や民間日本語学校の日本語教師などです。各クラスの授業では、受身的な勉強ではなく、学んだことを積極的に使う場として授業に参加するよう指導しています。「理解・発信・交流」をモットーに、グループ発表を行ったり、クラス間で交流したり、日本人ゲストを招いたりする活動も取り入れています。

 雨季にも負けず、渋滞にも負けず、センターに10ヶ月間通い続けるのは並大抵のことではないと思いますが、日本語を勉強したい一心で必死に通って来る姿には心打たれるものがあります。どのクラスの学習者も互いに仲が良く、切磋琢磨し合いながら楽しく日本語の学習を続けています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
国際交流基金ジャカルタ日本文化センターは、インドネシア各地に派遣されている日本語教育専門家、ジュニア専門家、及びインドネシアの各機関と連携をとりながら、インドネシアの日本語教育支援をおこなっている。中等教育においては、国家教育省と協力し、カリキュラム・シラバスの開発、教材開発、教師研修を実施している。高等教育機関、民間の日本語教育に対しては、教師研修やセミナーを実施する他、定期的に主要大学を訪問し、コンサルティング、勉強会等を行っている。また、一般成人対象に日本語講座の中上級クラスを開設している。 さらに、四半期に一度、ニューズレター『EGAO』の発行も行っている。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 Lantai 2-3, Summitmas I, Jl.Jend.Sudirman Kav. 61-62, Jakarta 12190, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家2名
ホ.アドバイザー派遣開始年 1980年

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