世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 芸術と大学の町、ジョグジャで

ガジャマダ大学
久松 美立

 ジャワ芸術文化の中心地、大学都市のジョグジャカルタに来て10か月になります。派遣先機関のガジャマダ大学、日本語日本文学科は1989年に開講され、以来中部ジャワ地域の日本文学、日本語教育の中心的役割を担ってきました。4年制学部、3年制学部とその上のエクステンション(1、2年で4年制学部卒業と同等資格が取れる)の3つの日本語専攻科で、計300名ほどの学生が日本語を勉強しています。学生たちの目的は日本企業に就職する、日本語の先生になる、留学したいなど様々ですが、アニメーターになりたい、漫画の翻訳家になりたいという学生も何人もいます。日本語を勉強したいと思ったきっかけが日本の漫画やアニメ、ポップスという学生は多く、教師より学生のほうがはるかに現在の日本のポップカルチャーに詳しいですし、木陰で夢中になって読んでいるのは「ナルト」だったり女子学生の携帯待ち受け画面がジャニーズだったりと、学生たちにとって日本はとても身近な国のようです。

日本語祭りを無事終えてニッコリのUGM学生会役員たちの写真
日本語祭りを無事終えてニッコリのUGM学生会役員たち

 ここでの日本語教育専門家の仕事は、4年制学部学生への日本語授業と、カリキュラム、シラバス、教材についてのアドバイス、先生方からの日本語についての疑問に答える、日本語祭りなどの日本語関係イベントへの協力などです。1,000名中30名という厳しい競争を経て入学してきた学生たちはやる気十分で、授業をする側には有難いことですが、問題点もあります。一つは、大多数の学生たちの日本語力が4年卒業時で日本語能力試験2級に届かないこと、また、4年で卒業する学生が数人で5年生以上も多いことです。卒業できないのは卒論が終わらないためなので、専門家の出来ることはないのですが、日本語力の方はお手伝いできるだろうと、今年から授業とは別に2級対策講座を始めました。

 また、先生方とは、日本語教授法授業の共同担当や、授業案の検討、学内勉強会などを通じて、協力して授業技術や内容を考える活動をしています。先生方の自立化への意識は高く、今学期終了後から、初級教科書の大幅な見直し、カリキュラム、シラバスの改訂も学科全体で共同して行う予定です。

 専門家のもう一つの業務である地域支援は、個々の大学への支援、地域教師会への支援、教師個人への日本語支援に分けられます。担当している中部ジャワ地域はジョグジャカルタ、ソロ、スマラン、サラティガ、プルウォクルトの5都市に計11大学、日本の専門学校に当たる高等教育機関が9校あり、70名ほどの日本語担当教師がいます。

 大学支援は、個々の大学を訪問し、カリキュラム、シラバス、教材などに関するアドバイス、学内小研修、授業見学をして先生方といっしょに授業を考えることなどを行っています。

教師・学生の絵本翻訳勉強会の成果を村の人々に「読み聞かせ」披露している写真
教師・学生の絵本翻訳勉強会の成果を村の人々に「読み聞かせ」披露

 地域教師会に対しては、教授法、日本語についての勉強会、会話会、日本語能力試験対策勉強会などの活動を通じて、学校の枠を超えた教師ネットワーク作りを目指しています。今年は北部都市のスマランでインドネシア日本語教育学会の全国セミナーが開催されるので、開催地教師間の協力がことに必要です。また今年は翻訳勉強会が加わりました。これは、京都大学のジョグジャカルタ地震被災地区支援の一環として京都の小学校の父兄から送られた絵本を、ジョグジャカルタ地域の教師会とガジャマダ大学の学生が翻訳協力をすることになったもので、参加者たちは日本の優れた絵本を、とても楽しんで訳しています。

 地域支援での問題点は、5都市が離れているので、遠いところは訪問できる回数が少なく、支援状況に偏りがでてしまうこと、勉強会の参加者が一定しないこと、本来現地の先生たちが中心となるべき勉強会が専門家主導になっていることなどがあげられます。先生たち中心の共同研究を企画していますが自主的にとはいきません。学校訪問を多くする、ニュースレターで活動を宣伝する、などが目下の方策です。最近、勉強会に少しずつ新しい参加者が増えてきました。

 悩みはありますが、数ある言語の中から日本語を学ぼうとしてくれている学生たちや、学習者としての経験を生かしながら、自らも学びつつ学生を指導している先生方といっしょに、この地で働くことを楽しんでいます。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ガジャマダ大学は4年制、3年制、エクステンション(3年制卒業生に4年制卒業資格を与える)と幅広い日本語専攻プログラムを持ち、中部ジャワ地域の日本語教育の中心的な存在である。専門家はS1学部での日本語教育、カリキュラム、教材作成への助言、学内勉強会等の教師支援を行う。地域活動では、中部ジャワ、ジョグジャカルタ地区の教師勉強会等による教師育成支援、セミナー等の企画支援、担当地域の各大学でのコンサルティング業務、学内教師研修を行う。
ロ.派遣先機関名称 国立ガジャマダ大学
Gadjah Mada University
ハ.所在地 Bulaksumur Yogyakarta, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
文化研究学部 日本語日本文学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1989年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1989年
(ロ)コース種別
専専攻 4年制(S1)、3年制(D3)、エクステンション
(ハ)現地教授スタッフ
専攻 4年制(S1)、3年制(D3)、エクステンション
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   S1:144名、D3:144名、エクステンション:46名
(2) 学習の主な動機 日本文化への興味、日系企業へ就職希望、日本語教師志望、留学等
(3) 卒業後の主な進路 日系企業、日本語教育機関、一般企業、政府機関などに就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2~3級程度、1級合格者2~3名
(5) 日本への留学人数 5~6名

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