世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) バリ州ジュニア専門家の業務 ~バリ州高校日本語教師会~

 国際交流基金ジャカルタ日本文化センター バリ州中等教育機関派遣
阿阪 真理

1.バリ州の日本語教育事情

 バリ州、つまりバリ島は、言わずと知れた世界的観光地で、観光客のトップを日本人が占めています。いうことは、バリ人が日本人と知り合う機会も多いのではないか、と想像しがちですが、実は、バリ島は東京都の2倍ほどの広さもあり、観光地はほんの一部、それ以外の地域では日本人を見たこともないというバリ人がまだまだたくさんいます。

 それでも、バリ島全体で日本語を教えている高校が約150校もあり、日本語課程のある大学も3校あり、最近は小学校、中学校も増えてきています。高校で日本語を教える教師は約130名おり、そのうち半分以上が非常勤講師で、生活のために複数校を兼任する教師がほとんどです。日本語能力は3~4級レベル。そんな高校教師たちを指導・支援するのがジュニア専門家の役割です。

2.ジュニア専門家の業務

 具体的な業務は、(1)配属校(担当高校)での日本語教育・教授法指導、(2)教師会支援、(3)高校日本語教師研修への出講、(4)教育省指定高校用教材作成、(5)バリ州の日本語教育に関する情報収集などです。この中で特に接点が多く、力を入れた(2)教師会支援についてご報告します。

3.バリ州高校日本語教師会の活性化

バリの高校生と高校教師(1) バティックの制服の写真
バリの高校生と高校教師(1) バティックの制服

バリの高校生と高校教師(2) 正装で卒業式の写真
バリの高校生と高校教師(2) 正装で卒業式

 バリ州では、高校日本語教師が集まる教師会を一ヶ月に一回、州都デンパサールで開催しています。国際交流基金ジャカルタ日本文化センターから発信される情報の提供、教師間の情報交換、日本語・日本語教授法の学習の場となっています。しかし、赴任当初は2ヶ月に一回の開催で、参加者も25名程度、情報連絡事項が行きとどかず、同窓会のような雰囲気で、一人が模擬授業をしている間に他はおしゃべりしているなど、教師会の意義が見えませんでした。

 そこで、開催を月一回に増やし、会長とジュニア専門家の連絡先を記載した年間スケジュールの配布、携帯メールでの連絡、口コミ等で、高校だけでなく大学へも教師会の存在を周知させました。おかげで、新卒教師のほぼ全員、噂を聞きつけた小学校や中学校教師も教師会に参加するようになりました。

 その分、活動内容も充実させました。教師の要望やニーズに応え、新学期前は校長に提出する年間計画書の書き方、新学期開始後は教材の使い方や仮名文字の教え方、日本語能力試験前は試験対策、弁論大会前はスピーチ原稿の書き方、学期末試験前は試験問題の作り方、季節の折に日本文化紹介なども行いました。結果、参加者のモチベーションが高まり、参加者数も倍に増えました。

 バリ州は、デンパサール市と8つの県から成り、教師会も各地域に存在します。しかし、特に遠方地域は会長の高齢化、州教師会への不参加などに伴い、活動が滞っていました。現地教師たちからの希望もあり、会長の世代交代、もしくはサブリーダーとして若手教師を配置して活性化させ、遠方地域の情報も入るようになってきました。

 ジュニア専門家の役割は「教師会支援」ですので、あまり表に立たず、リーダー格の教師が中心に運営し、若手教師を引っ張っていくよう自立化を図っています。2008年度からは、リーダー教師たちが自主的に提案してくれたStudy Circle(あるテーマについて日本語でグループディスカッションする)という新しい試みを始めています。

4.今後の課題

 教師会の参加者は、経験の長いベテラン教師と、教授法を学習したことのない若手教師に大きく分かれます。ここ数年でベテラン教師の中にリーダー格の教師が育ってきてはいますが、若手に慕われ尊敬される素質のある人材はまだ少ないといえます。ベテランと若手の間にいる中堅教師も、インドネシア教育省・国際交流基金共催の基礎研修を受けてすでに数年経過しており、フォローが必要となってきています。

 また、教師会の会場は毎回デンパサールですが、遠方地域の教師が通うのが大変です。遠方地域で開催すると、今度はその地域の教師しか集まりません。開催場所はジュニア専門家が代々抱える頭の痛い問題です。

 今後は、教師会自立化のため、教育省、初等・高等教育機関だけでなく、インドネシア日本語教育学会、在デンパサール総領事館、日本人会などとの連携がますます必要になってくると思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金ジャカルタ日本文化センターの業務方針に基づき、バリ州中等教育機関(高校)において、以下の業務を行う:(1)配属校における日本語教育・教授法指導、(2)教師会活動支援、(3)高校日本語教師研修への出講、(4)教育省指定高校用日本語教材作成、(5)バリ州の日本語教育に関する情報収集。バリ州への派遣は1996年から、報告者で7代目。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 Summitmas I, Lantai2-3, Jl. Jend Sudirman Kav.61-61, Jakarta
ニ.国際交流基金派遣者数

ジュニア専門家:1名

ホ.専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1994年

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