世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) インドネシアスマトラ地域における派遣専門家の業務

北スマトラ大学
飯尾幸司

 みなさんこんにちは。インドネシアの北スマトラを中心に日本語教育専門家として派遣されている飯尾幸司と申します。
月日が経つのは早いもので、私が北スマトラに派遣されて早2年が経とうとしています。

 この仕事をしていく上で、現地の先生方との良好な人間関係の形成は欠かせません。しかし、良好な人間関係を築くだけでは、今までの仕事のやり方に慣れきり、学科をよくしていこうという気持ちを忘れかけている先生方に、もう一度学科や学生達のことを考えてもらうことはできません。これが多くの日本語教育専門家が抱えているジレンマなのです。
  それでも、先生方に意識改革を促すことをやめなかったおかげで先生方から多くの喜びをもらいました。
  前回は、私の業務内容について細かくご紹介しましたので、今回は、私が北スマトラに来てよかったと感じたことを中心にみなさんにご報告したいと思います。

 北スマトラでの日本語教育専門家の仕事は、派遣先機関である北スマトラ大学(以下「USU」と略します)支援、北スマトラと西スマトラの高等教育支援、北スマトラの中等教育支援の三本柱からなっていますが、その中心はUSU支援活動です。
 USUには、(1)教員間のコミュニケーション不足、(2)教師の能力に関する問題等がありましたが、私は、ここが駄目だから直したほうがいいと一方的に先生方に押し付けるのではなく、先生方がそれらの問題に自分で気付き、自分達でどうにかしようという気持ちになってもらうことを最大の目標にし、これまで活動をしてきました。

北スマトラ大学文化祭の写真
北スマトラ大学文化祭

ハラパン大学合宿の写真
ハラパン大学合宿

 その結果、(1)に関しては大きく改善されたと感じています。
例えば先生方の間から、初級のシラバスを改善したいという声や、初級の教え方に関する勉強会をしたいという声などが上がり、どちらも多くの教師を巻き込んだ形で実現され今も継続しています。
更に、USUで約8年ぶりに日本文化祭が開催されるということもありました。
「文化祭ぐらいでどうして?」と思われるかもしれませんが、当初は、文化祭を開催することの大変さをよく知っているベテランの教師の間から否定的な意見が出たり、会計処理に対する不信感などから総領事館も協力に消極的だったりしました。以前のUSUならその時点で開催を諦めるか、あるいは、何とか開催できたとしても、多くの教師にとっては自分とは関係のない他人事となっていたでしょう。
私も仲介役としていろいろ苦労はありましたが、授業中には見ることがなかった学生達の様々な表情を見ることができ、また、文化祭開催のために一番苦労した若手教師が閉会式の挨拶の際に感極まっているのを見て、文化祭が開催できて本当によかったと心から思いました。
来年以降も、教師も学生もみんなで協力し、みんなが楽しめるいい文化祭が開催できるよう、陰から支えていきたいと思っています。

 (2)についても、これまでに私のカウンターパートだった4名の若手教師についてはそれぞれ成長の跡が伺えます。
中でもある先生は、学生からの信頼を失いかけてしまったこともあったため、教案指導にこれまで以上の時間をかけ、「ここでは何のためにこういったことを行うのか」という問いかけを繰り返し、授業のシュミレーションもたくさん行いました。
その結果、一進一退しながらも少しずつ授業が改善され、その評判を聞きつけてか、ほかの先生から授業見学をしたいという申し入れが数件あったりもしました。
そして何より嬉しかったのが、その先生があるとき言った「最近授業が楽しくなってきました。」という言葉です。
辛抱強く支援を続けてきたことで、その先生にもやる気を持ってもらうことができ、学生にも学校側にも、そして何より先生自身にとっても良い状態に方向付けられたことを、本当に嬉しく思いました。

 以上、簡単にですが、スマトラでの私の活動の一端と私が感じたことをご報告しました。
  私がこの地を離れる際に、「この人がメダンに来てよかった」「この人に会えてよかったなあ」と多くの方に思ってもらえるよう、これからも自分にできることをこつこつとやっていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
北スマトラ大学日本文学科は日本語教育学会北スマトラ支部の事務局を担当し、日本語能力試験の実施機関に指定されている。日本語教育専門家は同大学において日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。また、地域派遣専門家として教師支援を中心とした域内の日本語教育支援を行う。具体的には域内の日本語教育ネットワーク形成・強化への支援、勉強会・セミナーでの講師役、セミナー開催の企画・実施への協力、高校日本語教師会およびメダン日本語学校教師会への支援などの業務がある。
ロ.派遣先機関名称 北スマトラ大学
North Sumatera University
ハ.所在地 Jl. Universitas No.19, Kampus USU Medan 20155, Sumatera Utara
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
文学部日本文学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2000年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1988年
(ロ)コース種別
日本文学科
(ハ)現地教授スタッフ
常勤11名、非常勤7名(うちアシスタント1名、在留邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   各学年定員が40名
(2) 学習の主な動機 (1)就職 (2)日本文化 (3)日本語でコミュニケーション
(3) 卒業後の主な進路 実際には日本(語)に関わる職につくものは少ない。
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定3級程度
(5) 日本への留学人数 私費留学で数名

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