世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ジャカルタ日本文化センターの日本語教育支援(2009)

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター
木谷直之 吉田裕子

 ジャカルタ日本文化センター(以下、センターと略す)には、日本語教育専門家2名とインドネシア人講師2名が勤務し、日本語教育支援業務に携わっています。センターの主な業務は、インドネシアの中等教育支援・ジャカルタを中心とする首都圏特別地区に対する支援・学習者に対する直接支援の3つに分かれています。

中等教育支援:教師研修用教授法教材作成に焦点を当てて

 インドネシアでは、1988年に高校の日本語教師のための研修が始まりましたが、これまで研修用教材としてまとめられたものはありませんでした。そこで、センターは教育省語学教員研修所(P4TK Bahasa:以下P4TKと略す)の日本語主任講師と協同で研修用教材作成を企画しました。教師研修は、大きく日本語演習と教授法演習の2つに分けられますが、この教材は、これまでの教師研修の「教授法演習」で使用されてきた資料を整理・編集して作成しました。内容的には「基礎研修」「継続研修」が中心になっています。

 教科書やカリキュラムがどのように変わっても、教師は「何を教えるか」「どう教えるか」「どう授業を組み立てるか」をしっかり考え、授業を設計しなければなりません。この教材は、「基礎研修」から「継続研修」へ、そして「Training of Trainers研修(以下TOT研修と略す)」へという流れに合わせて、まず、一人の教師としてしっかり授業ができるようになること、次に、自分の教授活動の目標や方法を説明し、他の教師とよりよい教え方をともに考えていけるようになること、そして最終的には、地域のリーダーとして自律的に研修や勉強会などを企画・実施できるようになることを目指して作成しました。内容的には、4章構成になっています。

 第一章では、基礎研修、継続研修、TOT研修、それぞれの研修の目標や内容をまとめました。第二章では、いろいろな教材を自分の眼で分析し、自分のクラスにはどんな教科書が合っているのかを観る眼を養うことを目指しました。第三章では、ある課で教えなければならない項目は何かを調べ、学習者にどのような能力や技能を身につけてほしいか目標を設定して、それからどのような練習や活動をどのように組み合わせて授業を計画するか、その一連のプロセスを一人ひとりの教師がしっかり設計できるように、いろいろな課題を組み入れました。第四章では、「何を測るのか」「どのような能力を測るのか」をしっかり意識してテストやクイズの形式や内容を考えることができるように、いろいろな課題を準備しました。

 この教材は、研修の現場でそのまま使えるように、ワークショップの進め方を忠実になぞって構成しました。研修に参加される先生方にも、研修でインストラクターとして講義やワークショップを担当される先生方にも、地域の教師会(MGMP)で小研修や勉強会を考えたいと思っている先生方にも、教育大学や教育学部で次世代の教師養成に携わっていらっしゃる先生方にも、いろいろな先生に読んでいただきたいと思っています。今、教師研修で何がどのように行われているのかを、インドネシアの高等学校の日本語教育に関わっていらっしゃるできるだけ多くの方に知っていただいて、いろいろな議論の場を広げていくことができるように願っています。

ジャカルタ首都圏支援

文法一日セミナーの写真
文法一日セミナー
(2008年12月)

教授法研修の写真
教授法研修
(2009年2月)

 当センターでは、ジャカルタ首都圏の高等教育、主に大学教員向けに、さまざまな形での支援をおこなっています。大きく分けると、教師の日本語力向上、教授力向上、研究力向上の3つになると思います。日本語力向上のためには教師向け講座である「中上級日本語研修」「中級日本語研修」を実施しています。この研修は教師が自分の日本語力を高める場として大きな役割を果たしています。また、「文法一日セミナー」は地域の大学の教員自らが講師となるべく勉強を重ね、セミナーで参加者にわかりやすく、日本語の文法について発表する場です。私たちはその発表の支援をしています。教授力の向上のためには「教授法研修」を毎年実施しています。また、大学訪問も教授力向上のための訪問を中心とするように切り替えました。そのほか、地域の大学の教員がチームで取り組んでいる中級テキストの例文と文法解説書作りの支援もしています。研究力向上についても、一昨年から始まった「ビジネス日本語プロジェクト」、文法セミナー発表者によるインドネシア日本語学会ジャーナルへの投稿への支援などがあります。

 忘れてならないのがインドネシア日本語教育学会ジャボデタベック(ジャカルタ首都圏)支部の支援です。「一日セミナー」「土曜勉強会」「研究会」などの活動の支援を通しての教師支援を行っています。

学習者に対する直接支援

 ジャカルタ首都圏では中級以上の日本語を学べる機関が限られていることから、上級者対象の一般日本語講座を2クラス開講しています。上級1はインドネシア人と日本人講師、上級2は日本人講師が担当し、日本語教師、日系企業で働く社会人、日本語を学ぶ学生、主婦など様々な学習者がいっしょに日本語の勉強をしています。「理解・発信・交流」をモットーに、受身的な学習ではなく、学んだことを積極的に使う場として授業に参加するように指導しています。グループ発表を行ったり、クラス間で交流したり、日本人ゲストを招いたりする活動も取り入れています。渋滞の中、大雨の中遠くから通ってくる受講生のために役に立つ授業をしようと心がけています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
国際交流基金ジャカルタ日本文化センターは、インドネシア各地に派遣されている日本語教育専門家、ジュニア専門家、及びインドネシアの各機関と連携をとりながら、インドネシアの日本語教育支援をおこなっている。中等教育においては、国家教育省と協力し、カリキュラム・シラバスの開発、教材開発、教師研修を実施している。高等教育機関、民間の日本語教育に対しては、教師研修やセミナーを実施する他、定期的に主要大学を訪問し、コンサルティング、勉強会等を行っている。また、一般成人対象に日本語講座の中上級クラスを開設している。 さらに、四半期に一度、ニューズレター『EGAO』の発行も行っている。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 Lantai 2-3, Summitmas I, Jl.Jend.Sudirman Kav. 61-62, Jakarta 12190, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:2名
アドバイザー派遣開始年 1980年

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