世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) インドネシアで一番古い大学で2年をおわって

ガジャマダ大学
久松 美立

 数多くの大学が集まる学問の町、ジョグジャカルタに来て2年になろうとしています。

 配属先のガジャマダ大学日本文学科は中部ジャワ地域の日本語、日本文学研究の中心的役割を担い、今年で20周年を迎えます。4年制学部、3年制学部とその上のエクステンション(2年で4年生学部卒業の資格が取れる)で、300人ほどの学生が日本語を勉強しています。現在、「World Class Research Universityを目指す」という方針の下、機構改革が行われており、2009年度9月学期からは日本文学科は4年制のみとなり、3年制はより実用的な日本語を学ぶプログラムとなり、エクステンションは今後廃止されることになっています。

全国セミナーを成功させた先生たちの写真
全国セミナーを成功させた先生たち

 ここでの日本語教育専門家の仕事は、4年制学部生の日本語授業と、日本語教育にかかわる先生方のお手伝いをすること(シラバスや教材、授業に関する相談にのる、など)、日本語祭り、弁論大会などイベントに協力することです。その一環として、ここ10ヶ月ほど、先生方と初級シラバスの見直しを行っています。授業をする中で教科書どおりでいいのか、インドネシア人の学生にはどこが難しいのか、を見直そうという先生方の発案ですが、実際に始めてみると、今まで先生方が疑問に思っていたことが話し合える場となりました。また、学生の卒論の日本語要約チェックも興味深い仕事です。卒論はインドネシア語で書くのですが、必ず日本語の要約文をつけなければならないので、ネイティブチェックでお手伝いします。指導なさる先生方の御専門が文学、歴史、言語学、文化と幅広いので、卒論も芥川の小説から靖国問題、日本語の曖昧表現、日本企業で働くインドネシア人社員について研究など様々なのですが、中には「忍者」や「ロリータファッションをする人の心理」などというテーマもあって、学生の日本に対する興味の広さを感じます。 

 こうした興味を持つ学生たちは、生き生きした好奇心のかたまりです。この2年間、様々な授業を担当しましたが、現在担当している3年生の読解では、俵万智さんの短歌を扱ったところ、若い人らしい共感や感想、活発な意見がでて、若い人の豊かな感性は国を越えても共感をよぶことを改めて思わされました。

日本語教授法で模擬授業をする学生の写真
「日本語の先生になりたい!」
日本語教授法で模擬授業をする学生

 専門家のもう一つの業務である地域支援は個々の大学への支援、地域教師会への支援、教師個人への支援に分けられます。担当している中部ジャワ地域は5都市に11大学、専門学校も含めると70人ほどの日本語担当教師がいます。2009年2月にはインドネシア日本語教育学会の全国セミナーが中部ジャワのスマランで開催されました。そのため2008年度はスマランの教師会はこの準備に追われました。大変でしたが、地区の大学の枠を越えたネットワークが強化され、その後の教師会活動が積極的になるなど、いい効果が続いています。教師会の勉強会は、スマラン地区は現在は「アクションリサーチについて」と「先生方の授業に基づいた自由発表」の2本立てで行っています。ジョグジャ地区では、先生方が自由にテーマを持ち寄って日本語で話す、という内容です。テーマは日本語教育に限りません。どちらも集まる先生方のニーズ(研究をしたい、日本語力を高めたい)によるものです。

 実はガジャマダ大学への支援は20年目を持って終了となるので、専門家はスマランに異動になり、2009年9月からはスマラン国立大学で学生に対する日本語教員養成プログラムの支援を担当することになります。これは、インドネシアの高校での日本語学習者の増加に合わせて、日本語教員の養成により力を入れていくという国際交流基金の方針によるものです。したがって、専門家の支援内容も日本語より日本語教育関係課目へと大きく変更されます。所属大学は変わりますが、引き続き、この地域の先生方のお役に立てることを願っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ガジャマダ大学は4年制、3年制、エクステンション(3年制卒業生に4年制卒業資格を与える)と幅広い日本語専攻プログラムを持ち、中部ジャワ地域の日本語教育の中心的な存在である。2009年度からはエクステンションは廃止される。日本語教育専門家は4年制学部での日本語教育、カリキュラム、教材作成への助言、学内勉強会等の教師支援を行う。地域活動では、中部ジャワ、ジョグジャカルタ地区の教師勉強会等による教師育成支援、セミナー等の企画支援、担当地域の各大学でのコンサルティング業務、学内教師研修を行う。
ロ.派遣先機関名称 国立ガジャマダ大学
Gadjah Mada University
ハ.所在地 Bulaksumur Yogyakarta, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
文化研究学部 日本文学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1989年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1989年
(ロ)コース種別
専攻 4年制(S1)、3年制(D3)、エクステンション
(ハ)現地教授スタッフ
常勤10名、 非常勤2名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   S1:131名、D3:124名、エクステンション:44名
(2) 学習の主な動機 日本文化への興味、日系企業へ就職希望、日本語教師志望、留学等
(3) 卒業後の主な進路 日系企業、日本語教育機関、一般企業、政府機関などに就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験3級以上~2級未満程度
(5) 日本への留学人数 5~6名

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