世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 自立にむけて —インドネシア中部ジャワ州・ジョグジャカルタ特別州—

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(中部ジャワ州地域中等教育機関)
岩田 敏和

 私の活動地域は「中部ジャワ州・ジョグジャカルタ特別州における中等教育機関」となっています。わかりやすく言ってしまえば、当該地域の日本語を勉強している中学校、高校全部ということです。中部ジャワ州とジョグジャカルタ特別州の面積は日本の四国に相当すると言われ、現在把握している限りでは、200校ほどの高校があります(中学校は余りありません)。これだけの広範囲を目の前にして一体どんな活動をすれば当該地域の役に立てるのでしょうか?私自身も手探りですが、この1年でやってきた活動を紹介することで、少しでもジュニア専門家海外派遣事業についてご理解頂ければ幸いです。

高校日本語教師会

研修会の風景の写真
研修会の風景

勉強会の写真
宿泊を伴う研修会では、夜も熱心に勉強会が行われる

 当然のことですが、これだけ面積も広く学校数も多いとなれば、一校一校訪問してみてもあまり高い効果は期待できません。そこで重要になってくるのが教師会の存在です。教師会とは各科目の教師が集まり運営される組織ですが、日本語にも中部ジャワ州・ジョグジャカルタ特別州合同日本語教師会と各地域にその支部があります。この1年は合同教師会の組織づくりを第一優先に活動してきました。まずは教師会の幹部の先生方との人間関係づくりから始め、次に私を媒介として、幹部の先生方にチームワークができるように努めました。

 ある程度のネットワークができてくると次はソフト面の強化です。自分たちで現状の問題を把握し(これが一番難しく重要なのですが)、その原因を特定し、次に解決方法を考察して研修会等を企画・運営するのです。これは決して簡単なことではありません。しかし、こういったソフト面の強化ができないとせっかく作ったネットワークも目標を失い自然消滅してしまうのです。

 また、これは私が中心になってやれば良いというものでもありません。あくまでも私は教師会の一員にしか過ぎず、共に頭を悩まし、共に意見の相違や失敗を乗り越えて、少しずつ積み上げていくべきものです。それを繰り返していく中で、チームワークはより強固なものになっていくはずです。

 そんな教師会の活動ですが、今では平均月1回のペースでセミナーから問題集作成に至るまで様々なプログラムが実施されています。そこには新しい試みもたくさんあります。もちろん回数が多ければ良いという問題ではありませんが、この数字はひとえに先生方の日本語教育に対する熱意と努力を表しているように思います。下世話な言い方になってしまいますが、お金がもらえるわけでもないのに、長距離を移動し、忙しい合間を縫って連絡を取り合い、何かを成し遂げようとしている先生方の姿には頭が下がります。今後は各々のプログラムの質を高めることと、将来的にジュニア専門家派遣が終了した後に出てくるであろう様々な問題に対し、それを解決していく「力」を、教師会という「組織」につけることが目標になっていくでしょう。

配属校業務

 配属校とは1年間に2校の高校を選択し、毎週そこに通うことで重点的に教育現場を知ることができます。この配属校業務において、先にお話しした「現状の把握」と「問題点の原因の特定」のトレーニングを行っています。また、それを解決するためのモデル校的役割も果たしています。

 授業が終わると、教師は長い時間をかけてそれを内省し、問題点とその原因を把握し、次の授業に向けて解決策を練ります。それは教師にとって大変つらい作業になります。私のすべきことは、少しでもそのストレスを軽減させることと、袋小路に陥った時に解決の糸口を一緒に探してあげることです。そして、この配属校での「点」の活動が、先に述べた教師会によって「面」の活動に広がるのです。

その他の活動

 その他にも必要に応じて学校訪問、新教材作成、弁論大会等日本に関する様々なイベントへの参加とそのコンサルティング、身近なところでは、ショートメールによる先生方からのあらゆる質問等への相談など、為すべき仕事は少なくないです。ただし、そのほとんどの主役は、私ではなく現地の先生方であり、その先生方の努力なくしてはうまくはいかないものばかりだといつも思います。私の最も重要な仕事は先生方に「場」を提供すること、各々の先生方の素晴らしい能力を可能な限り引き出すこと、そしてモチベーションが落ちないように後ろから盛り立てていくことでしょう。

 今は、目の前の成功よりも、様々な問題を教師会自身で見つけ、対処できる力をつけることを目的にし、共に多くの失敗を経験しながら、現地の担い手による日本語教育の真の自立化に向けて精一杯の側面支援を行うことが必要だと考えています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
担当地域、中部ジャワ州とジョグジャカルタ特別州における中等教育機関(高等学校)において
1.配属校における日本語教育・教授法指導
2.現地教師支援
a)高校日本語教師会活動支援、日本語教授法指導
b)担当地域の高校訪問、授業見学と教授法等の指導
3.高校日本語教師研修(インドネシア教育省主催)へ講師として参加、指導
4.高校用教材作成、支援
5.地域日本語教育事情の把握と情報収集、報告書の作成
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 Lantai 2-3, Summitmas I, Jl.Jend.Sudirman Kav. 61-62, Jakarta 12190, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名
アドバイザー派遣開始年 2001年

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