世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) バリ州ジュニア専門家の業務

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(バリ州中等教育機関)
吉岡 ちさと

 「バリ」と聞くと、どんなことを思い浮かべますか。ビーチリゾート、神々の住む島、スパ、サーフィン・・・などでしょうか。バリは観光地として有名ですから、よく知っている方も多いかと思いますが、「バリ?名前は聞いたことはあるけど・・・」という人も案外多いのではないかと思います。まず、「バリ」について簡単にご紹介したいと思います。

 バリはインドネシアのジャワ島の東にある小さな島です。ただ地図で見ると小さく見えるものの、実は東京都の2 倍もの大きさがあります。インドネシアは約9割がイスラム教徒といわれる中、バリは島民の約9割がヒンズー教で、バリ人同士の会話ではバリ語がよく使われます。ですから、インドネシア語が少しわかるようになっても、バリ人同士の会話にはついていけないということも多々あります。

 それでは、次にそんなバリの日本語教育事情とジュニア専門家の業務についてお話したいと思います。

バリ州の日本語教育事情

 バリには、主に普通高校・専門高校という高校があります。普通高校というのは、日本でいう一般的な高校のことで、専門高校は商業・工業・農業など専門に特化した高校のことです。そして、ここバリでは約半数以上である160 校近くの高校(普通/専門高校)で日本語が教えられています。生徒たちは日本語がカリキュラムの中に入っているから勉強しているという生徒もいますが、アニメが好きだから、将来ガイドになりたいから、という理由で日本語を勉強している生徒もいます。また、高校で日本語を教える教師は約150人おり、そのほとんどはインドネシア人日本語教師です。以前は専門が日本語以外(生物や地理など)のインドネシア人教師が半数以上でしたが、最近では大学で日本語を勉強した先生が増えてきています。

ジュニア専門家の業務

 ジュニア専門家の業務にはいろいろありますが、ここでは、(1)配属校勤務、(2)高校日本語教師会支援、 (3)学校訪問について、簡単に説明します。

(1)配属校業務

配属校の生徒たちの写真
配属校の生徒たち

 インドネシア人日本語教師の教授力・日本語力向上を目的として、1年間継続して指導にあたるインドネシア人日本語教師がいる高校のことを配属校と呼びます。配属校は2校あり、それぞれの高校には毎週1回行き、毎週交代で授業をして授業を観察し合ったり、授業前後にディスカションをしたりします。

 今回担当した配属校教師の先生は2人とも若いながらも基本的なことはできている先生でしたが、教え方が変わると、生徒たちの反応や授業への姿勢も少しずつ変わっていくのが見られるようになりました。そのような変化が見られた時には、やはりこちらも嬉しくなります。

(2)教師会支援

教師会での書道体験の写真
教師会での書道体験

 インドネシアの学校の先生たちの間には、いろいろな科目の「教師会」というものがあります。そして、もちろん日本語にも「日本語教師会」というものがあります。この教師会、特にバリ州日本語教師会というものは、主に高校で日本語を教えている先生たちが、毎月1 回集まって、教授法や日本語を学ぼうという集まりです。月1回の集まりに、遠くから3時間もかけて来てくれる熱心な先生たちもいます。当日は先生たちが「○○の教え方」や年間授業計画の書き方といった発表をしたり、私が日本の文化について紹介したりしています。今年度は、大学の講師を呼んでのセミナーや、親睦を深めるための遠出などの計画も出ています。

(3)学校訪問

 学校訪問は文字通り学校を訪問することですが、現地教師の指導や情報収集が主な目的となっています。若い先生、遠い地域の先生、地域のリーダー教師など、いろいろな先生たちの学校を訪問します。学校訪問をした時には、配属校での指導と同様のことをします。時折、先生と私と半分ずつ教えたり、簡単に日本文化の紹介をしたりもします。生徒にとっては、習っている日本語を使って日本人と話したり、日本について聞いたりすることができるいい機会になり、日本語学習のモチベーション向上にもつながります。

今後の課題

 バリは、ジュニア専門家が派遣されるようになってから、すでに十数年が経っているので、ネットワークや基本的な組織運営の土壌はできあがっています。しかし、これから必要になってくるのは、今後を担う若手教師、リーダー候補・サブリーダー候補の育成ではないかと思います。そして、そのためには教師会だけではなく、小研修なども自分たちの力だけで企画・運営していけるようにならなければならないでしょう。

 また最近では日本人会の方々と協力して、活動をしたりすることがありましたが、今後も日本人会の方々と連携して、文化祭などといった活動を行っていけるようになればと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
担当地域であるバリ州では、普通高校・専門高校併せて、約160校の高校で日本語が教えられており、日本語教師も約150名いる(2009年5月現在)。日本語教育ジュニア専門家の業務は、(1)配属校における日本語教育・教授法指導、(2)教師会活動支援、(3)高校日本語教師研修への出講、(4)教育省指定選択必修科目用日本語教材作成、(5)バリ州の日本語教育に関する情報収集となっており、インドネシア全体では現在5地域へ5名が派遣されている。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
ハ.所在地 Lantai 2-3, Summitmas I, Jl.Jend.Sudirman Kav. 61-62,
Jakarta 12190, Indonesia
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名
アドバイザー派遣開始年 1996年

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