世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 西ジャワ州での日本語教育支援

インドネシア教育大学/西ジャワ州地域
山本 晃彦

バンドン日本語教育事情

 バンドンでの日本語教育の歴史は古く、インドネシア教育大学では既に半世紀近くに渡って、日本語教育を行っています。国際交流基金からの日本語教育専門家(現日本語上級専門家)の派遣は報告者ですでに12代目となりました。

 初代から10代目までは大学での講義、授業を中心に教材の整備、教員の教授力の向上に努めました。10代目の任期半ばから西ジャワ地域高等教育機関全体の日本語教育の底上げを目指すべく、大学派遣から地域派遣へと移行しました。

 第2外国語として日本語を取り入れる高校が急激に増加し始めた90年代後半ごろからです。そこで青年日本語教師(現日本語専門家)が新たに西ジャワ地域に派遣され、中等教育機関での日本語教育の発展を目指しました。そして、3代である程度の成果をあげ、派遣は終了となりました。現在では中等、高等ともに、日本語上級専門家が担当しています。

 また、2009年より、日本語上級専門家は新たに大学院修士課程の支援も担当することになりました。現在、日本語教育を主専攻とする大学院はインドネシア教育大学だけです。ここでは現職の大学教員や高校教諭をはじめ、多くの教員志望者が学んでいます。

 それでは、実際に専門家がどのような業務を行っているか、紹介しましょう。

派遣先機関での業務

 ここでは主に授業とコンサルティングを行っています。学士課程では上級生の会話の授業が中心です。ディベートやスピーチなど、自分の意見をはっきりと伝える練習を行っています。教員志望者が多いので、ただ発表するだけでなく、どのように見せるか、伝えるか、どのような立ち位置が適当かといった、教師としてのテクニックも交えながら進めています。

 修士課程では言語学の基礎や教材の扱い方、また日本で行われている研究論文の紹介などが中心です。学士課程、修士課程ともに現地の先生とチーム・ティーチングを行っています。現地の先生と協働作業を行うことによって、新たな視点が加わり、報告者自身にも非常に勉強になります。

 インドネシアの学生達は非常にパフォーマンス能力が高く、まるでプロの俳優やナレーターのようにすばらしい表現力を備えています。前に出て発表することに物怖じしないところは、日本人も見習うべきだと、常々感心しています。欠点としては、パフォーマンス能力が高いので気付きにくいのですが、話術でカバーしてしまうぶん、内容がおざなりになってしまいがちのようです。ですから、実際に文字を通して発表される研究論文には厚みがないものが数多く見られます。今後、どのように研究能力を高めていくかが大きな課題だと思われます。

インドネシア日本語教育学会

 地域支援活動は主にインドネシア日本語教育学会の西ジャワ支部の支援を行っています。支部の活動では、教師対象の勉強会、機関誌の発行、支部セミナーの3つが柱となっています。

 勉強会では日本語教育勉強会、日本語能力向上勉強会、論文研究会を現地の先生と協力しながら、運営しています。

 また、セミナー発表者や論文投稿者へのアドバイスも重要な業務です。以前は先行研究の切り貼りのような論文がほとんどでしたが、ようやく少しずつ内容の伴った論文が出てきました。

 現在西ジャワ支部には100名前後の会員がいますが、セミナーの発表者や機関誌への投稿者が少なく、どうやって原稿を集めるかに頭を悩ませています。実は、報告者が赴任したときはこの機関誌は長い間、休刊状態でした。何とか復刊し、もうだめかもしれないとあきらめそうになりながら、それでもスタッフの先生方と協力して年に2回の発行を続けることができました。質を落とさず定期的に機関誌を発行する難しさを実感しています。いつ休刊してしまうか未だにはらはら状態ですが、幸い、論文研究会の参加者が今年に入って少しずつ増えてきたことに希望をつなげています。

中等教育支援

習字の写真
習字

 ここでは年に5回の西ジャワ州高校教師会、月に1回のバンドン地域勉強会、年に2回の小研修を行っています。すでに教師会の運営は現地の先生方の手で行われているため、報告者は先生方のスキルアップに専念できます。文化紹介、教授法、文法等のトレーニングが中心です。意欲的な先生が多く、毎回どんな反応が来るか楽しみにしています。

文化祭

高校教師会勉強会 ゆかたの着付けの写真
高校教師会勉強会 ゆかたの着付け

 当地域の文化祭はコンテストが中心です。聴解、漢字、作文、朗読、スピーチ、といった日本語能力に関するコンテストはもちろん、習字コンテスト、まんがコンテスト、コスプレコンテストなども行われます。ここでは審査員を行ったり、審査員を紹介したりすることが主な業務です。ここ数年、現地の先生方と現地在住邦人のネットワーク化を進めてきました。ようやくお互いに直接連絡を取り合える関係が築かれてきました。今後現地の先生方、学生達と日本人の方々の交流がより深まることを期待しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 インドネシア教育大学
Indonesia University of Education
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
当該日本語講座は1965年に創設された。インドネシアの高等教育機関の中では、バ ンドン市近郊にあるパジャジャラン大学 の日本語講座に次ぐ伝統のある大学である。高校の日本語教師養成を当講座の目標に掲げており、西ジャワ州の高校の日本語教師の大半が当講座の出身者である。また、スラバヤ国立大学、マナド国立大学など、高等教育機関にも多くの人材を輩出しており、インドネシアにおける日本語教育の中心的・指導的存在の一つといえる。2001年度には、インドネシア初の日本語教育専攻修士課程が大学院に開設された。
  専門家は学士課程および修士課程での授業のほか、教師対象勉強会、コンサルティング等を行っている。
所在地 Jl.Dr.Setiabudhi No.229 Bandung 40154 Jawa Barat Indonesia
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
言語芸術教育学部日本語教育学科
Jursan Pendidikan Bahasa Jepang
Fakultas Pendidikan Bahasa dan Seni
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   1965年
国際交流基金からの派遣開始年 1979年
コース種別
日本語教育専攻(学部) 日本語教育専攻(修士課程)
現地教授スタッフ
常勤18名 (内留学中 2名)、非常勤1名
学生の履修状況
履修者の内訳  
学生総数  (学部) 約500名
(修士課程) 約45名
学習の主な動機 日本語教師希望、日系企業への就職
卒業後の主な進路 一般企業・日本語教師
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定2級を受験可能な程度
日本への留学人数 2名程度

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